第6話 「覚悟」
第六話 「覚悟」
全員が臨戦体勢に入り、アトラを睨む。
重苦しい空気の中、アトラの低い声が響く
「私だけだと思うな…」
アトラの隣に巨大な影が現れた。
「ギャイーン!!」
そのアコンシャスはティラノサウルスのような巨大な異型…その鋭い爪と歯…そしてなんとも大きな巨体。その場に緊張が走った。
「恐竜のアコンシャス!」
慧悟がそういうと、スーパーレックスは唸りを上げる。
「ギャィーン!」
やつの厄災のような攻撃が慧悟と問馬を襲う!
「やるしかねぇぜ!『競馬経費』!」
「『遊馬慧悟』だ!行くぞ!」
となればこのアトラという男は…譲介と剣が相手取るしかない…!
譲介の双眼がアトラを見据える。
190cmほどの大男…オーラも段違い。見るからに強い。
(こんなやつを相手にするのか…)
譲介は一瞬怯んでしまった。
だがやるしかない。譲介は確かに誓ったからだ。
「命を背負う覚悟はあるのか?」
田蔵に問われたあの一言が譲介の胸にまだ深くつきささっている。
あの日憧れた槍の男、真由美、田蔵…彼らに恥じないようにしなければならない。そう思うと譲介の心は決意に満たされた。
「いきましょう!剣さん!」
譲介がそう叫ぶと
「応!」
と剣は頷く。
するとアトラは奇妙な構えを見せる。
「来い…」
譲介がアトラへ槍で斬りかかる!
しかし…!
「お前達の行動は全て予測されている…」
アトラはそれを完璧に躱し、槍を掴んでみせた!
そのままアトラ譲介を槍ごと宙へ浮かせる!
「ガハッ!」
つながるような背負投げが譲介の背中を殴打させる。
「トドメだ」
アトラが譲介を踏みつけようとする!
「させないで!」
だが剣の斬撃がやつへ飛ぶ!
しかし…それさえも
「読める…」
未来予知かと錯覚するほど完璧に躱す。
譲介も立ち上がりながら槍を放つが、それさえかわされる。
「さっきから完璧に外されますね…」
譲介は息を切らしながら、剣に問いかける。
「どないこっちゃ…これは…?」
剣も意味がわからず、立ち尽くしていた。
「何をしても無駄なのだ。私の前で何をしようが、私は最善の選択をする。」
アトラがそういうと二人は何かを確信した。
「剣さん…」
「ああ…間違いない。『予知能力』かなんかやな。」
全ての攻撃を完璧に外す上にカウンターを入れる。間違いなく予知能力のたぐいだろう。
「フン。よく気づいたな。だが気づいたところで勝てまい。」
アトラは笑いながらそう告げる。
勝つ方法…あるとすれば数敵有利を利用することだ。
「剣さん…」
「応…」
譲介達はわかっていた。連係でアトラを抑え込もうとする。
次の瞬間、譲介達の落雷のような踏み込み…
譲介は正面から突き、剣は左から横薙ぎで攻撃を加える。
だがアトラは譲介の突きを避け、剣の横薙ぎをナイフで受ける。
さらに繋がるようにアトラの蹴りが剣の腹を撃ち抜く。
「次は貴様だ!」
アトラが冷徹にそう告げると、譲介は悟る。
(普通に攻撃してもかわされる!)
譲介は攻撃をせず、アトラの攻撃をかわす。
しかし…それすらも無意味だった。
「そちらに避けるのは読んでいるぞ」
そういいながらアトラは完璧に攻撃を加える。
「うおー!」
剣も刀を振り回すが…
「振りが大きい!」
すべて見切られ、アトラに大きく胸をさかれる。
連係が上手くいかず、気づけば譲介達だけが削られていた。
「どうする…譲介…?」
剣は息を切らし、汗をにじませながら、譲介に問う。
「毒も炎も当たらなければ意味がないです…」
譲介がいうのは厳しい現実だった。
その時、アトラの口角が上がる。
「その通りだ。どんなに強力な攻撃とて、当たらなければ無に帰す。私の能力はAIを使い貴様らの骨格、筋肉の動き、今までの攻撃の仕方、能力等…様々な要素から最適な行動を導き出す。何をしようと私に攻撃を加えるのは無駄なのだよ。」
だがやつの『無駄』という言葉が譲介達の心に火をつける。
「『無駄』だと…無駄じゃない!」
「無駄ちゃうで。ワイらの攻撃…通らせてやるで!」
そういうとアトラは高らかに笑う。
「ハッハッハッ!ならば攻撃を当ててみせろぉ!」
その時、剣の足元には魔法陣が…
「召喚!」
魔法陣から大量のサソリが出てくる。
「こんなもの…」
だが所詮はただのサソリ…アトラの銃により簡単にたいおうされる。
「今や!合体!」
が、サソリが合体
一際大きいサソリがやつを襲うが
「これも読める」
それもかわされさらにカウンターを入れらた。
「変身!」
「チワワン!」
譲介もチワワンを使い、陣列フォームへとフォームチェンジし、反撃を試みる。
回避に強い、スピード特化のチワワンの連撃を飛ばした!
「スピード特化か。だが読める。」
それでもアトラは譲介の連撃を全てかわした!
「変身!」
「ミラーックス!」
譲介がまたもフォームチェンジ、ミラーックスの鏡が光を反射する。
さらにその隙を見て剣が飛び出した!
「遅い!」
だがやはりアトラに見切られる。
「なんやて!?」
あまりの劣勢…このままの連携では負けるのは明確だった。
「剣さん…毒と炎のコンビネーションで連携技を放ちましょう。」
「それしか方法は無さそうやな…。行けそうか?」
「やるしかありません…!」
アトラはそれを嘲笑う。
「無駄だ。全てこのAIで読める!」
だが譲介は分かっていた。
(さっきは連携が上手くいかなかったが、やはり心を一つにするしかない…!)
実際に前はできていた。
ドラゴナイトとのたたかい…圧倒的な強さを前に一度は絶望したが、四人の連携が強敵を撃ち落とした。
「力をかしてくれ…!ドラゴナイトッ…!」
譲介の片手にドラゴナイトのカード…それはまさに決意の証だった。
そのままカードをベルトに装填する。
「Set!DragonNight!」
「変…身…っ!」
譲介がそう叫ぶと紅の炎とドラゴンの翼が譲介を包みこむ。
「Burn it with dragon fire and tear it apart with sharp claws!」
譲介の体がドラゴンのゴツゴツとした皮膚で覆われ、鋭い爪と牙も生える。
この能力を使って、コンビネーションをとる。
「俺は証明する『命を背負う覚悟』を!」
「ワイも手伝わせてもらうで譲介!」
「貴様らに何ができるというのだ!」
譲介は腰にあった大剣を抜く!
「絶対にできる。俺は命を背負ってみせる!」
その頃、慧悟達もたたかっていた。
スーパーレックスが凄まじい突進を慧悟達にする。
だが慧悟は冷静だった。
(スピードを落とす!)
斬撃により風を巻き起こす。
それは僅かにやつの突進スピードを落とした。
そしてスーパーレックスの爪の攻撃が飛ぶ。
慧悟はそれを外す。
そしてもう片方の手の攻撃が問馬へ飛んだ。
「シャッ!」
問馬さんはそれを凄まじいパワーで弾き返す。
が、それにより、二人は剥がされた。
その隙をスーパーレックスがつく!
スーパーレックスが慧悟達へ近づいてきた!
慧悟はサイドにスーパーレックスの頭突きを回避する!
「フン…」
だがスーパーレックスは凄まじい柔軟性を見せ、直前で頭を横に振るう!
「!?」
(バカな!あそこから!)
そして慧悟は奴の頭突きをもろに食らってしまう…
慧悟は激しく吹き飛んだ!
「敬老ォ!!」
問馬がそう叫ぶと慧悟の頭蓋骨からは割れる音がなる。
(頭がやられたか…)
慧悟は激しく電柱にぶつかり、頭蓋骨が割れてしまった。
こうなれば問馬、一人。
「キャイ~ン!」
スーパーレックスの前蹴りが飛ぶ
これはもはや躱すしかない。
だが躱しても次の攻撃がつながる
スーパーレックスの前腕が隆起し、パンチが飛ぶ!
「ぐはっ!」
それは問馬を捉え、激しく地面を転がる
(俺も骨が折れたぜぇ…)
問馬の肋が4本いった…
「問馬…やつの攻撃は一度でも当たれば重傷を負うレベル…厄介だ。」
「一発で骨がボキボキだぜ…」
「勝つには連携が必要…力を貸せ!」
「応!『系統』!」
「『慧悟』だ!」
「俺が風でやつの攻撃を緩和する。その隙をついて決定打を出せ。お前のパワーは規格外…いけるはず…まかせるぞ。」
「応!」
そして慧悟が前に出る!
「恐竜…俺が相手だ!」
「キャィィィーン!」
スーパーレックスもそれに応えるように攻撃を飛ばしてくる!
先程よりも速度が増した!
(集中しろ…!)
慧悟の風が繰り出される!
風により僅かにやつの攻撃の速度が緩和される!
そしてついにその時が現れる!
スーパーレックスの前腕の攻撃が慧悟へ襲いかかる!
(これしかない!少しリスクを負うが…)
「問馬!任せるぞ!」
そしてスーパーレックスの前腕の攻撃を慧悟が刀で押さえつけた!
だがやつのパワーは規格外、そんな簡単にガードはできない!
だがそこにいるのは規格外の男・問馬!
「任せろ!」
問馬はスーパーレックスの前腕にしがみつく!
それを振り落とそうとやつの腕が暴れた!
「おぉ!」
だが問馬のパワーの前ではそれは無に帰す。
「来たぜ!」
それを利用してやつの眼前に迫る…!
問馬がやつの腕から飛び出し、顔へ向かった!
そしてバッドのフルスイングがやつの顔面を捉える…!
「オラァ!」
スーパーレックス「キェーン!」
それは完全な決定打だったのだ!
「助かったぞ問馬!」
その隙に慧悟は飛び出す!
そしてやつの足の健を切り裂く!
「チャリャァ!」
「キャィィィーン!」
スーパーレックスが雄叫びをあげながら、倒れる!
「決めるぜ!」
「ああ!」
慧悟と問馬は合図を送り合う!
そのときまさか慧悟が刀を投げる!
「問馬!」
そしてここで問馬が金属バットで刀をスイング!
「行くぜ!」
問馬のフルスイングが遊馬さんの刀を捉える!
そしてやつを斬り裂いた!
「キェーン!」
そして慧悟がささった刀を回収する
「ハァーッ!」
そしてやつを激しく切り裂く!
「決めるぜ!」
そして問馬の下からの突き上げが決まった!
「ギャィーン!」
彼らの連携がついにスーパーレックスを討伐した!
そして譲介達もアトラと戦闘していた…
(フォームチェンジしても予測で超えられる!)
俺のドラゴナイトフォームの大剣がやつへ振り下ろされる!
「読める!」
剣が間髪入れず刀を入れる!
「カウンターいれる暇もないで!」
俺は口から火を噴く!
「それも読める!」
アトラがそれを回避する!
だが…
「ほう…」
(マントが燃えたか…)
アトラのマントが微かに燃えていた。
(完璧に予測したはずなのに…何故…?)
剣の斬撃が飛ぶ!
それもまた…
アトラ(おかしい!何故!?)
アトラの胸を微かに捉えていた…!
「馬鹿な…予測しているのに…まさか…」
そのときやつは気づいたのだ…
(コイツ等には…感情がある。「人を助けたい」「誰かのために力を振るいたい」そんな…そんな感情…想いが…故に!)
「『感情』という非論理的なものに対して、私の予測がエラーをおこしているのか!?」
その時、譲介の魂の叫びがこだまする!
「俺は証明する!この『覚悟』を!誰がみても認めてもらえるように!」
譲介は思いっきり左右のレバーを引いた!
「ドラゴナイト!業火、覚醒——ッ!」
俺の身体を紅蓮の炎が包み込む!
形態はドラゴナイト・ブレイズモード——!
「今だ、剣さん!」
「応!毒牙、猛襲!」
剣の身体から紫色の瘴気が溢れ出す——毒の術式が最大濃度で展開されていく!
「行きます…!連携技!」
【《災牙・紅蓮刃陣(さいが・ぐれんじんじん)》!!】
——紅と紫が交錯する!
譲介がドラゴナイトの高熱で空間を湾曲させ、旋回しながら高速で突撃!
剣がその軌道に毒の刃を巻きつけ、炎と毒が混ざり合い一つの巨大な螺旋に変わる!
「その程度——読める!」
アトラが構える!
「……!?」
だが、その瞬間。
毒と炎が交差した熱気により、センサーの精度が一瞬鈍る!
AIが誤作動を起こしたのだ!
「っ…この熱量、視界と感覚が…!」
千載一遇の好機に譲介と剣は獲物を構える!
「今しかない…!」
「ブチ抜けぇぇぇぇ!!」
——ドォォォン!!!
技が直撃ッ!!
アトラの腹部に螺旋状の炎と毒が炸裂する!
「ぐ、はぁぁああっ!!」
爆煙が辺りを包む。
(やったか……!?)
……静寂。
——やがて、煙の中から倒れたアトラの姿が見えた。
「決まったな。」
「ああ…これが…“俺たちの”連携技!」
——《災牙・紅蓮刃陣》!
毒と炎、剣と槍——
二人の意志が織り成した、渾身の一撃だった。
「完敗だ…天城譲介…私の『予測』が…お前の『決意』に追いつかなかっ…た…!」
そういうとアトラはカードになった。
「スーパーレックスか…」
「アトラよろしくな。」
俺達はそれぞれアコンシャスをカード化した。
剣さんがボロボロの俺の肩を持ってくれた。
「お前の覚悟中々やで。感激してもたわ。」
「ありがとうございます…」
「やったな!『経過』!」
「『慧悟』だ。だが問馬悪くなかったぞ。」
「応!『馬コンビ』としてよろしくな!」
「馬コンビか…」
確かにどちらも苗字に『馬』が入っているが…
そしてそこに田蔵さんが駆け寄る。
「見とったぞ譲介」
「はい…」
「コイツの覚悟なかなかやったで、認めてやってもええんちゃいます?」
剣のその言葉を聞いた田蔵は頷いた。
そして田蔵は俺に肩を貸しながらこういった。
(コヤツ……本当に、背負ったんじゃな。「人を、守るということを…」)
「大丈夫か?」
田蔵の問いかけに譲介は
「……大丈夫です」
と静かに答える。
「そうか。でも一つだけ言っとく。お前の覚悟、ちゃんと見えたぞい。立派だったな。」
田蔵の言葉に譲介は驚いた顔をした。
………だが気づけば笑いながらうなずいていた。
夕焼けを前に譲介は決意した。
「今度は…俺が守る番だ!」
次回 「温泉殺人事件」
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