第3話 「強くなる理由」

第三話 「強くなる理由」


遊馬が大量の枝を持ってくる。


ライターで薪に火をつけると、オレンジの温かい炎が俺達の目の前に現れた。


「待ってろ。今ラーメンを作る。」


遊馬がそういうと鍋が沸騰する音が聞こえる。


遊馬はまな板を用意し、白菜や人参など、食材を切った。


細かく刻まれた食材を鍋の中に入れ、麺と粉末スープも入れた。


しばらくして、麺が茹で上がり、ラーメンが完成した。


「できたぞ。召し上がれ。」


俺のどんぶりにラーメンが注がれた。

豚骨のおいしそうな香りがする。色とりどりの野菜やしなやかな麺…見た目も完璧で、おいしそうな香りと見た目が食欲をそそる。


俺達は席に座り、ラーメンを机の上に置いた。


「いただきます。」


焚き火を囲みながら、ラーメンをすする。


「…!?」


味噌の濃厚なコク、野菜の甘み、そして少し焦げた風味が、口の中いっぱいに広がる。

旨味が喉を滑った瞬間、モノクロだった世界に、ふっと色が差した気がした。


(……なんだ、この感じ……懐かしい)


——ふと、幼い記憶が蘇る。


***


「お母さん、ただいまー!」


幼い譲介が家に帰るとすでに真由美はご飯を作ってくれていた。


「おかえり、譲介。ごはんできてるわよ。」


「わーい!ラーメンだ!」


母が作る、いつものラーメン。

温かくて、優しくて、大好きだった味。


***


譲介(……そうだ。この味、母さんのラーメンに似てる)


なぜだろう。

母さんのような優しさを、遊馬のラーメンから感じた。


そして——それだけじゃなかった。


譲介には父親がいなかった。物心ついた時には、もういなかった。

だから、母のラーメンしか知らない。

施設で食べたどんな料理も、味がしなかった。

世界がモノクロだったからだ。


でも——


このラーメンは違う。


「……なんで、味がするんだろうな……」


心が、何かに触れた気がした。


——まるで、この一杯が俺の白黒の世界に、色を塗ってくれたようだった。


「そんなに美味かったか?」


不意に遊馬さんの声がし、譲介が意識は現実へと戻される。


「あ、はい!めちゃくちゃ美味しいです!」


「それはよかった。おかわりもあるからな。」


「はい!」


——なぜか俺は、初対面の遊馬さんに“父性”を感じていた。


「いえ……いいんです。ちょっと変な話かもしれませんが……」


俺は語り始めた。


——父は、物心つく前からいなかったこと。


——母は10歳の時に、黒ずくめの男たちに連れ去られたこと。


——施設で出されたどんな食事も、味がしなかったこと。


——でも、このラーメンには、母の味がしたこと。


そして——


「だから初対面なのに、遊馬さんのラーメンに……“父親”の味を感じてしまったんです。あの世界に一つだけの味を……ありがとうございました。」


俺がそう言うと、遊馬さんは——少しだけ、微笑んだ。


「そういえば、船に家族がいるかもしれない。確認しなくていいのか?」


「…俺には親はいないんです。」


「あっ…それはすまん。余計なことを聞いてしまった。すまない。」






…………………………










しばらく無言の間が空いた。だが、それは気まずい沈黙ではなく、火のはぜる音すら心地よく思える静けさだった。


そのとき、遊馬がふと火を見つめながら、呟いた。


「……十歳の時だった。アコンシャスが家に現れて、両親が……殺された」


「えっ!?」


その言葉につい譲介は驚いて、声が裏返った。この人も俺と同じ境遇という事実が俺の頭へ衝撃として走ったからだ。

___________________________________________


遊馬が10歳の頃、両親と家にいたところアコンシャスに襲われた。


「キャー!」


「け、慧悟ぉぉ!」


母の悲鳴、父の怒鳴り声、すべてを察し、死を覚悟した慧悟だった。


「次は俺の番だ」そう思い、体を震わせたが、突如、アコンシャスの首が落ちる。


「よく生きたな。偉いぞ。」


そういいながら遊馬を助けたのはSRトップ・田蔵信蔵


「ワシがもっと早く到着してればこんなことにはなってなかった。すまない…。」


そういう田蔵の顔はどこか悲しそうだった。


SRの保護施設にて田蔵さんから話を聞かされる。


「慧悟…その父と母は…病院に搬送されたが…助からなかった…」


「そ、そんな…」


「だからお前には2つの選択肢がある。一つワシと暮らすか、2つ施設に行くか。どっちじゃ?」


遊馬は迷いなく答える。


「俺、おじさんと一緒がいい!」


そして遊馬は田蔵に育てられることとなったのだ。


それから彼は稽古に励み、強くなった。


10代でSR武闘派になり、田蔵への恩返しに徹した。


そんなある日、遊馬の人生を変える出会いが訪れる。


「慧悟。人手が足りなくてな。SRの保護施設についてきてくれ。」


「はい。もちろんです。」


ある日、遊馬はSRの保護施設へと向かった。


その時、一人の少女と出会う。


「彼女は早乙女百合香(さおとめゆりか)。SRで最近保護させてもらったぞい。病弱で看病が必要なんじゃ。ワシがしてやりたいところじゃが、仕事が多くて難しい。そこで慧悟。頼めるか?」


すると慧悟は元気よく返事をする。


「はい!」


田蔵は安心した顔で去っていった。


それから二人の時間は増えた。


「慧悟さん。私には親がいない。親も病弱で、若くして亡くなってしまった。だから初めてなんです。こんなに丁寧に面倒をみてもらえるのは。」


「…俺も。俺も親がいない。10歳の時アコンシャスに殺された。それで田蔵さんに保護されたんだ。同じだな。」


「…はい!」


百合香がいつも言っていた願い。それは花火を観ることだ。


「慧悟さん、花火って…本物を見たことがないんです。」


「なら、一緒に見よう。絶対に叶えてやる。」


「は、はい!」


俺は何故かそれに対し、使命感を感じていた。


そして懸命に看病を続けていたある日…


「あ、歩ける!外に出れる!」


「よくやったな…嬉しいぞ…」


百合香は俺の懸命な措置により、歩けるようになったのだ。


そしてその夜、すぐに花火を見に行った。


「綺麗だな。」

 「綺麗ですね…」


バコーン!


最後の花火が上がり、儚く散った…


そのとき百合香がこういった。


「あっ、あの…」


「どうした?」


「その…慧悟さん伝えなきゃいけないことが…」


「うむ」


「慧悟さんの真っ直ぐ看病に向き合う姿。本当に素敵でした。私の憧れでした。私たちもこの花火のように綺麗な関係になりたい。その…私とお付き合いしてください!」


「ああ…是非」


こうして俺は生涯大事にすると決意した恋人ができた。


譲介はゆっくりとつぶやく。


「そうだったんですね。」


慧悟は真っ直ぐな瞳で言う。


「百合香を守る、田蔵さんへの恩返しは俺にとっての全てだ。だから俺は今日もその刃を振るう。」


しばらくの沈黙の間、慧悟の顔が赤くなる。


「なんだがちょっと恥ずかしいな。こんな話誰かにするの初めてだ。」


譲介は黙って笑った。


…だがその時、一般人の悲鳴が響き渡る。


「!?」


二人は駆け出した。


「早すぎる!船にしがみついていたのか!」


二人は変身しようとした。…その時!


「これはやるしないで!」


「行くぜぇ〜!」


謎の男二人が嵐のように現れる。


そして一人の男は紫色の刀でアコンシャスを斬り、もう一人の男は金属バッドでアコンシャスを叩きのめしたのだ。


「な、なんだ…誰…!?」


「何者だ…?」


そして彼らの正体は…


次回 「謎の男達とドラゴン討伐」

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