第5話 戦場

「お前ら! 起きろ! 戦場に向かう!」

 まったく、気持ちよく寝てたのに兵が入りやがった。

 まあ、戦場では絶対に逃げ出してやるがな。


「わかりました」

「わかった」

「わかったよ」


「ふん、お前ら戦闘奴隷は特別に転移陣を使用させてもらえる。国民でもないのに、転移陣を使用させてもらえることに感謝しな」

 感謝ねぇ。感謝も何も逃げ出す可能性を低くするための転移陣だろ、感謝すべきとこなんて一つもないよ


「「「―――ありがとうございます」」」

 ぷっ、俺含めて全員棒読みすぎるだろ、まあ口には出さないけど


「ふん、奴隷だからその程度しかできないのか」

「その通りですが何か問題でも?」

「は?看守たる私には向かうとは!きっさま――!」

 おい、フェアラー何事にも限度ってあるだろうがよ! 叩かれるぞ!


「あ、看守。そこ僕の幻影ですよ」

「は? ッ――――! 貴様! くそ! 戦闘奴隷でなければ殺しいてたぞ! 貴様を戦闘奴隷に選んだものに感謝しな! クソがっ!」


 クックック、これはけっさくだな、捨てゼリフを吐いていなくなったよ、フェアラーへの前言撤回、限度はなくていいよ

 にしても想像以上に看守は馬鹿だな、上司が可哀想になってくるよ、剣があったらこのまま斬ってるかもな、復讐するいいきかいだしな。


「最高だな! お前」

「俺もそう思うぜ」

「ふっふっふ、でしょー、だって僕は珍しい幻影魔法の使い手だからね」

「そうだな」

「すごいと思うぜ」


 〜〜〜


「お前達! 今度こそ行くぞ!」

「「「へーい」」」

 あれから2時間もたってやっと迎えが来たよ、ま、話題に尽きることはなかったな

 

 

「ここが転移陣だ」

 これがか、青い輝く魔法陣だな。まあ1度くらいしか魔法陣なんて見たことないから確かじゃないけど


「これの上に乗ればあちら側につく。で、乗ったか_」

「「「乗りましたよ」」」

「よし、それで大丈夫だ、転移陣起動! それではせいぜい我が国の為に命を散らしてくるんだな!」


 俺たちの体は青い光に包まれた








 光が収まってきたな


 ――おっ、ついたっぽいな

「よく来たな戦闘奴隷、お前達にはこれから最前線に行ってもらい、ある作戦を実行してこい! 作戦についてはこいつから話す」


「どうも、今回の作戦で指揮官を務めるライン大佐だ。作戦の概要はこうだ、まず魔法を使い全力で相手の陣に入り、その勢いで滅ぼす! これが作戦だ! 異論は許さん!」

 は? これが作戦だって言うのか? 素人にもおかしいってことがわかるぞ


「流石におかしいじゃないですか! それでは俺たちはどうやっても生き残ることができませんよ!」


「何の問題があるのだ? 戦闘奴隷とはそういうものだ、これまで戦地には10人ほど送られて来たが、全員死んでいる、無論これも作戦に組み込まれている。この作戦の真の目的は別に――」


「それ以上は言うな!」

「すいませんね。下級長官」

「きっさま! 私の家の地位があまり高くないからと!」


「だって私の家は伯爵、あなたは騎士爵でしょう? 格が違うんですよ、格が」

「まあ、いい、どっちにせよ奴隷は使い捨てだ、戦力を図るのにもいいしな」

 ま、上も色々あるみたいだけど、どっちにせよ俺たちの敵で、俺たちを軽く見ていることには変わりないな。


「ああ、それと出発は明日だ、それでは帰ってよろしい」

「「「わかりました」」」

 俺たちは逃げられる、と言う期待から喜びの混ざった声で答えた

「……せいぜい、死ぬ前の夜を楽しむといいさ」


「何か言いましたか?」

「いや、何も」

「そうですか」


 〜〜〜

 次の日の朝

「脱出の計画は昨日の夜で練り終わった、あとは実行するだけだ」

「そうだな、本当は昨日の夜逃げられれば良かったが、あまりにも警備が厳重すぎるからな……」


「まあ、それは言っていてもしょうがないだろ」

「そうだな」


「そうだよ、ゴメス」

「幻影魔法にも限度があるんだろ?」


「そうなんだよね、僕1人だったら逃げ出せるんだけど、その後見つかって捕まっちゃうしね」

 まあ、しょうがないか

「とりあえず、そろそろ上が来るはずだから」

「確かに近づいて来たな、魔力で感じられる」

「魔力感知だな」


「そうだ、俺は放出魔法より魔力感知とか、身体強化が得意なんだ、まあ体が熱くなるからあまり好きではないが。好き嫌いを言っていられるようなところじゃないからな」

「その通りだね」


「お前ら! 作戦決行日だ!」


 そう吠えながら長官がドカドカと歩いてきた、

「知ってます」


「それならいい」

 あ、いいんだ。てっきり怒られるのかと思ってた


「へーい」

 フェアラー、おまえ長官に喧嘩売ってるのか?


「だらけて……いやいい、どうせ貴様らは死ぬのだから、壊れる所有物にも情けをかけるのが立派な帝国民だからな」

 どの口が言ってんだか


「向きはどっちの方ですか?」

「あっちだ」

 そう言って、太陽の登ってきた方を指さした


「わかりました」

「ではいってこい、逃げてもすぐわかるからな」

「「「はい!!!」」」


 〜〜〜

「周りには……」

「誰もいないから大丈夫だ」


「わかった、じゃあ今回の作戦を再確認しよう」

「ああ、まずは敵陣まで行って、敵陣から最大限逸れる」


「で、ちゃんと行っているようにカモフラージュするために。僕が幻影魔法を使ってさも突進しているように見せる」

「そしてその間に俺たちは逃げると」


「意外とどうにかなりそうだな」

「そうだな」

「そういえば逃げる先は?」


「昔同じ牢にいた人から聞いたんだが、ここから少しいった先に、自由と平和の国、アント共和国があるらしい、そこでは難民や元奴隷も受け入れてくれるらしい」

「「本当か!!」」


「ああ、貴族もいることにはいるが、あまり平民と身分が変わらないらしい」

「最高じゃないか!」


「だろ! そこ目指して頑張ろうぜ!」

「「ああ!!」」

 この先に待ち構えているのは喜びが絶望か。俺はこの時喜びが待っていると勝手に思い込んでいた

――――――


 

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