49話
【2015年 7月24日(金) 午前6時30分】
光星小学校に高島は到着した。正門を通る際に、指で呪印を作り、正門に結界を張る。さらにそのまま歩き、裏の門にも同じ結界を張る。
職員室に向かい自分のデスクに座ると、再び呪印を作り、小声で「呪来降魔」と唱え続ける。職員室内には人はほどんどおらず、高島の行動は誰も見聞きしていない。
【午前6時55分】
4年2組の教室に向かい、出入り口や窓に“嘘”を掛ける。この呪いによって、教室内を外から見た時の視界や聞こえてくる音が、高島の意のままに操れるようになった。
【午前7時10分】
多くの教員達が出勤してくる。高島は職員室で授業の準備を始める。普段から出勤が早い高島に、周りは何の違和感も感じない。
【午前8時】
多くの児童達が通学してくる。門を通ると同時に高島の結界を通る事になり、暗示がかかりやすい状態へと陥る。当人達はそれには気が付かない。
【午前8時20分】
各教室で朝の会が始まる。高島も4年2組で朝の会を執り行い、児童達にいつも通りの言葉を掛ける。欠席者がいない事も確認する。
【午前8時30分】
全学年全クラス、1時間目の授業が始まる。
【午前9時】
高島の家で朝食を取った紺野は、白装束に着替え、高島幸一郎夫妻が焼死した庭へと出る。光星小学校全体に巨大な結界と呪界を起こす為の舞を始める。
【午前10時】
授業中の高島は、校内に結界と呪界が徐々に降りてきた事を確認する。一方、紺野は呪言と共に舞を続ける。
【午前10時45分】
校庭を見ると、以前よりこの土地に降ろされていた“呪い”達が現れ始めた事を高島が確認。紺野の舞が順調な事を悟る。
【午前11時】
紺野、休憩。その後、また舞を始める。
【午前11時55分】
光星小学校に結界が張られ、呪界も開く。学内に呪いが立ち込め、高島の呪術がより発揮されやすい場と化す。呪いの影響で、体調不良を訴える児童が何人か現れるが、当然呪いのせいだと思う者はいない。
【午後12時15分】
給食の時間になり、高島は児童達と昼食を撮る。高島の元に、紺野から舞完了のメッセージが届く。
【午後13時】
始業のチャイムが鳴り、生徒達は皆着席を始める。それと同時に高島が教室へと入って来た。
「はーい、みんな座ってー。国語ですよー。」
事前に授業の準備をしている児童もいれば、慌てて教科書を取り出す児童もいた。
「給食の後だから眠くなっちゃう人もいるかもしれません。でも、先生の話をちゃんと聞いて下さいね。」
高島のアドレナリンが上がる。いよいよその時が来た。
「従呪。」
パンッ。
高島が手を叩くと、児童達は白目になり、姿勢を正して高島の方を見た。紺野が張った結界と、正門に張られた結界により、高島の暗示と言う名の呪いは、簡単に児童達に降りた。
「素晴らしい。」
思わず高島は微笑んだ。
「いいですか。皆さんはこれから、全員で僕の家に行きます。場所は今から教えますね。」
そう言うと、高島は1人ずつ児童の頭を触り、念を送り始めた。1人、また1人と高島は児童達に目的地の“座標”を送り込んでいく。
「はい、場所が分かった人は手を挙げて下さい。」
全員が一斉に右手を挙げた。
「はい、手を降ろしていいですよ。皆さん、よく聞いて下さいね。」
高島が教壇に手を置く。
「皆さんはチャイムが鳴ったら、今教えたその場所に歩いて向かって下さい。2列に並んで、列を乱す事無く、素早く動いて下さい。私語は禁止です。皆さんの姿は、周りの皆からは見えません。それでも注意して、移動して下さい。家に着いたら、家の人の言う事を絶対に聞くこと。分かった人は、今度は両手を挙げて下さい。」
全員が両手を挙げた。
「はい、結構です。」
高島は手で印を結び、呪言を唱え始めた。紺野が降ろし結界を、拡大し始める。結界は広がり、街へと伸び始めた。
【午後13時30分】
校内にいる全員に、“呪い”が付いた。全員が高島の呪術の影響をより受ける事になり、結界の効果も重なって、これまで以上に何も“見えなく”なった。
【午後13時40分】
呪術と結界の影響により、校内の監視カメラの録画が停止した。
【午後13時45分】
5時間目終業のチャイムが鳴り、4年2組の児童全員が立ち上がった。
「さあ、行きなさい。場所は教えたからね。」
高島がそう言うと、児童達は列を組んで行進を始めた。休み時間になり、廊下には多くの児童達がいるにも関わらず、誰も彼らの事を認知しない。無意識に、行進する彼らを避けるように行動した。
高島もそれに合わせ、職員室に戻る。他の生徒達に見えるように廊下を歩き、再び4年2組の教室に戻った。
【午後13時48分】
4年2組の生徒達は門を抜け、外に出た。
高島は教室の外で「あれ、みんなは?」と声を出した。その瞬間、周りにいた他の児童達の暗示が緩む。
「あれ、ほんとだー。」
「どこいったのー。」
という声が上がる。その児童達に向かって、
「他の教室を探してくるね。」
と伝言を残す。
【午後13時51分】
駆け足で他の教室を調べる“フリ”をした高島は、教室に戻り、4年2組の児童達が見当たらないと報告。何人かの教員が校内を探しに行く。
児童達はその頃、街の中を行進していた。広がった高島と紺野の結界により、人々の目は児童達の事か“見えなく”なり、監視カメラ等の記録機器も、同じ様に彼らの姿を記録出来なくなっていた。
【午後13時55分】
6時間目の始業ベルが鳴る。本格的に4年2組の生徒達の捜索が始まる。
インターホンが鳴った。紺野はモニターを確認し、急いで外に出た。
家の外には4年2組の児童28名が立ち並んでいた。
「信じられない⋯。さあ、入って。」
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