最終話 奇跡

(軽自動車の走行音)ブゥゥゥゥゥ


莉奈りなの母

「大仏様を過ぎて、、、右側に、あった、警察署!」


(軽自動車のウィンカーの音)カッチ、カッチ、カッチ


(エンジンが止まる音)ブルン


(軽自動車のドアの作動音)バッ、バン


莉奈りなの母

「入り口は?どっち、、、」


莉奈りな

(少し遠くからの声)「おかあさん!!」


莉奈りなの母

莉奈りな!!」


莉奈りな

「あかあさん!!!!」

【飛びついたよ、おかあさんに。】


莉奈りなの母

「もう、もう、びっくりさせないでね。」


莉奈りな

「ごめんね、ごめんなさい、おかあさん!」


莉奈りなの母

「もう、謝らなくていいの、よくやった。よくやったよ。」

「誇らしいよ。」

「でも、自分の命を一番に考えてね。

他は二番でいいからね。」


莉奈りな

「、、、スマホ壊しちゃったの、ごめんね。」


莉奈りなの母

「そんなことはいいの。あなたが元気でお家に帰れれば、それでいいの。」

「おばあさんも、元気で帰れたのかな?」


莉奈りな

「うん、お家の人が迎えにきて、改めてお礼させてください、って。」


莉奈りなの母

「そっか。」

「一緒に来たお友達は?」


莉奈りな

「みんなお家の人が迎えにきて、先に帰ったけど、、、。」

【おかあさんに、武佐士むさしくんを指さしたよ。】

武佐士むさしくんは、あたしがひとりにならないように、

待っててくれたの。」


莉奈りなの母

「こんにちは。学級委員さんよね。」


武佐士むさし

「ども、こんにちは、、、じゃあ、俺も帰るね。」


莉奈りなの母

「あ、今日はどうもありがとう。うちの娘がお世話になりました。」

「お迎えは?」


武佐士むさし

「うちは、両親とも忙しいみたいで、自力で帰れ、って。」


莉奈りなの母

「うちの車で送ろうか。、、でも自転車が2台は積めないか。」


武佐士むさし

「大丈夫です。いつもの練習コースで帰ります。

足手纏あしでまといがいないので。」


莉奈りな

「それは、誰のことですかぁぁぁ!」


(武佐士むさしのスマホの通知音)ピローン


武佐士むさし

孝太郎こうたろう、無事に帰宅した、って。」


莉奈りな

「ねぇ、あたしの分もみんなに伝えて。

迎えが来て無事に帰りました、って。」


武佐士むさし

「いいよ。」


莉奈りな

かすみちゃんには、後で家電いえでんしよ。」


武佐士むさし

「それがいいね。」


莉奈りな

「じゃあ、また中学で。」


武佐士むさし

「うん、中学で。」


(自転車が走り去る音)カチッ、カン、シュ、シャ、シャ、シャ





ナレーション

「男の子を見送る女の子は、なんだか泣いているようです。」


莉奈りな

「おかあさん、これおかあさんに。

おかあさんの好きな抹茶のういろうだよ。」


(軽自動車のエンジン始動音)キュルキュルキュ、ブゥン


莉奈りな

「ねぇ、ねぇ、ねぇ、おかあさん、奇跡だったんだよ!」

「もう、絶対ダメかと思ったの。

下り電車は、止まれなくて踏み切りを通過しちゃったの。

これ、転生フラグ?とか思っちゃったよ。

でも、みんながいたのは上りの線路だったのよ!」

「それでね、それでね、大人が大勢集まってきて、

鉄道会社の人も大勢駆けつけて、

警察の人も来てネ、、、。」

孝太郎こうたろうくんがネ、

ヒトにしかできない仕事があるじゃん、って言ったんだよ。」

「それでネ、それでネ、萌音もねちゃんがね、

みんなとお別れは嫌だ、って泣いちゃったの。」

「でもね、またいつでも遊ぼうよ、って、

かすみちゃんと雷人らいとくんが言ったの。」


「あたしも、マンガ描くよ。みんなが幸せになるお話を。」






ナレーション

「子供達に、大仏様のご加護がありますように。」



「人類に、未知なる力のご加護が有らんことを。」






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