第7回 ススキの頭

くらかみ様「あのさ、さっき運営ちゃんから聞きたてほやほやあつあつな話があるんだけど、話しても良い?良い?やった〜!じゃあおかわりって事で話すね。…運営ちゃんの職場には内職さんがよく出入りするみたいでね、みんな子供がいるお母さんが多いんだって。だから職場に来る時に子供と一緒に社内に入ってくるのがほとんどなんだって。赤ちゃんから中学生くらいまでのかなり幅広い世代の子供が出入りするのが普通になってるみたい。けどこの時期になると全くと言っても良いほど子供同伴じゃなくなるのを涼しくなる度にそうだったそうだったと思い出すみたい。まあでも自分の仕事に関係する事じゃないし、内職さんに直接聞くほど仲良しでもないって事で今の今まで不思議だな、インフルとか季節の変わり目だから体調崩しやすいからいないだけかなとか思ってたんだけど、それがちゃんとした理由があったんだって。


運営ちゃんがいつものように外の倉庫で作業してた時、偶々近くで立ち話してた内職さん達がいて、あー夏が終わって外で話せるようになって嬉しいんやろな〜と思っていたら、

「Aさんの子供、熱出たって。ススキの頭を見たみたい」

「ええ?誰も教えてなかったの?」

こんな言葉が耳に入って、なに?どういうこと?って思わず作業の手を止めてこっそり耳を澄ましてみたんだって。

「見たってことは聞いてなかったかも知れないねえ」

「まあ注意されても信じない場合もあるしね…でも周りがみんな車に乗せたままにしてるのを不思議に思わないんかな?」

「でも入ったばかりなら…」

「まあ、そうかもね…でも不思議ね、子供が立ってるとか」

「ね〜、ここら辺に住んでたらあのススキ野原の下は沼地だから子供が立てる訳ないってわかるんだけどね」

「そもそもススキは背が高いし、頭ひとつ抜ける訳ないのにねえ」

「不思議ねえ」

なんて言って談笑していたんだって。

運営ちゃん、それ聞いた瞬間に閃いちゃったみたいで、なんでもこの時期になると子供を見なくなるだけじゃくて、会社のすぐ隣にある脇道を全く手入れしなくなるんだって。脇道は砂利を引いてるだけだから放置してるともう草がぼうぼうに生えて、あっという間に雑木林みたいになっちゃうから業者呼んで定期的に手入れしてるんだけど、何故かこの時期になると雪が降るまで放置してるんだって。お金ないのかな?とか思ってたけど、内職さん達の話を聞いて、


あ〜…子供の視点からススキ野原が見えないようにわざと手入れしてないんだ〜…


って納得しちゃったみたい。

運営ちゃんさあ、毎日ススキ野原を眺めながら通勤してたから、すごいびっくりした!って笑ってたって話」

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