ノールラント王国戦記

トロオドン

前史

 1845年12月、後に「12月革命」と呼ばれる革命がパヘヴァナ共和国で起こった。アルキメ戦争での敗戦と、それによる賠償金の支払いによって財政は低迷し、困窮した農奴が立ち上がった。地方から中央へ革命は広がると、都市部の労働者たちの手によって革命は軟弱な共和制の打倒へと向かった。敗戦のショックなどもあり対応が遅れたパヘヴァナ共和国は多数の国家に分裂することとなった。

 その中にあって最も力を持つこととなった国が、後にノールラント王国と呼ばれることとなる国であった。かつて1500年代にこの地を治めていたパレデス家を国王として推戴し、王国として復活。最大面積を誇るヘルカ島を中心とした島嶼とうしょ国家であったこのノールラント王国は、分裂した国々と比べていち早く産業革命を果たしたこともあり、かつてのパヘヴァナ王国の領土を武力によって併合。不毛の地と言われた北方島嶼群をいち早く近代化することに成功し、良質な石炭の産出もあって大きく国力を伸ばすことができたのであった。

 ノールラント王国国王、フィリブス1世の治世においてこの国は大きな進歩を遂げ、華々しい時代を築くことができたのである。その理由は徹頭徹尾一貫した上意下達組織の形成と、国王の権力による集中的な開発による産業の発展にあった。それまで産業の発展が遅れていた点も、フィリブス1世の手によって大幅に改善し、国力は大きく増大した。

 1900年代に入るとパヘヴァナ共和国の全盛期に等しい領土を手に入れることに成功、ノールラント王国は栄華を極め、連戦連勝無敗の国家としてナショナリズムの旋風が吹き荒れていた。


 一方ヴェルダーラント帝国はフィルマース島を中心としたこちらも島嶼国家であり、その歴史は1600年代にまで遡る。周辺地域との交易に適した好立地だったこともあり当初から力は強く、世界で最初に動力の近代化、産業革命に成功したのもヴェルダーラント帝国であった。

 圧倒的な国力を武器に発展したヴェルダーラント帝国は周辺地域や南方に植民地を抱える巨大帝国へと発展、覇権国家として君臨することとなった。


 南北に海を挟んで向かい合う両国は畢竟ひっきょう対立を回避できない関係にあり、1900年以降何度か外交的な対立を招くこととなり、その結果として1910年には第一次ノ・ヴ紛争として小規模な武力による対立を引き起こした。それでも国境線を書き換えるまでには至らず、そこから20年間、両国は書類上での平和を謳歌していた。ただ、確かに戦争の火種は残っており、それがのちに大きな争いを招くことになるとはまだ当時の人々は知らなかったのである。

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