星に願いを

よしだ

第1話 星屑の約束

空美天貴(そらみ てんき)の首元には、ひときわ小さく輝くネックレスがあった。

透き通るように光るその粒は、祖母から託された星屑だ。


「これはね、ただの願いを叶える石じゃないんだよ。

 本当に必要な願いしか、星は聞き入れてくれない。

 もし受け入れたとき、光は消えて力を失うんだ。

 でもそれまでは、ずっと君を見守っている」


祖母自身も、何度か星屑を握りしめて願ったことがあるという。

けれど一度も輝きは消えなかった。

――つまり、その願いは“本当に必要”ではなかったのだ。


天貴にとって祖母は、数えきれないほどの物語を語ってくれる大好きな存在だった。

だからこそ、このネックレスは単なる形見ではなく、信じるための約束そのものだった。


幼馴染の虹川栞(にじかわ しおり)は、星屑を見ては目を細める。

「ほんとにきれいだね」

彼女の笑顔に、天貴は胸の奥に秘めた願いを喉まで押し上げそうになる。

――本当に願いたいのは、きっと君のことだ。


けれど彼は知っている。

星は軽い気持ちを受け入れない。

その光が消えるのは、“守るべき願い”が託されたときだけなのだ。

夜空を仰ぐたび、ネックレスは星と同じ色で瞬いていた。

まだ一度も輝きを失っていないその石は、

未来のどこかで彼らを試すように、静かに待ち続けている。

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