3,公爵家現当主であり長男の証言

【現公爵の長男の証言 】


 同い年の可憐な少女を母と呼べと言われた時は父がおかしくなったのかと思ったよ。




 しかしやってきた母上は少女ながら博識で、大人っぽく落ち着いていてね。到底、同年には思えなかったさ。




 子をなすのが遅かった父が早々に逝き、公爵家は存続さえ危ぶまれたが、彼女は王家に直談判して乗り切った。


 彼女が公爵代理に年齢制限がない事を主張し、後妻として公爵代理となることで公爵家は存続した。だから今こうして私は貴族としてまだ領地を治めていられるんだ、感謝しかないよ。




 本題だが、ミレイユを女として意識したのは彼女が嫁いできてしばらくたった秋の頃だった。




 廊下の隅で彼女が私に小さな声で助けを求めた。


 突然、初潮を迎えてしまって、ね。




 あんなに普段は頼もしく落ち着いているのに、痛みに顔を歪めて弱弱しく泣いていた。あの人にも年相応の弱さがあるのだと知ったとき、胸の高鳴りが抑えられなかった。


 すぐさま上着をかけてやり、抱え上げてメイド長の所に連れて行ったよ。その時の軽さで余計にミレイユを愛おしく思った。




 そもそもだが、あんなに美しく成長し、血のつながりのない自分を懸命に守ってくれるような健気な女性がこの世に他にいると思えるか?




 答えは否だ。それが私が数多くの縁談を断っている理由だ。


 『母上』と呼びながら、機を伺っているのは、私だけではないだろうがな。


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