私たちが全力でぶつかっても勝てないのに、ぽっと出の連中が勝てるわけないじゃない

――定例会議。

円卓に幹部が集まり、私は椅子にふんぞり返って脚を組む。


「クルツ、兵器の改良はどうなっているのかしら」


わざと偉そうに問いかける。まあ、答えは知ってる。だって私が直接監修してるんだもの。聞くのは“情報共有”というやつよ。ボスの務めってやつ。


クルツは端末を操作しながら淡々と答えた。


「めぼしい進歩はありません。時間がかかりそうです」


「ふむ、そう……まあ知っていたけどね」

(うん、知ってた。私が一番よく知ってる!)


私は軽く頷き、次の議題を切り出す。


「じゃあ、新ARMS――あのポンコツの改良はどうなってる?」


そう、こっちが本命。私が知りたいのはむしろこの情報。だって、こっちは完全にクルツに丸投げしてるから。

クルツが小さくため息をついて言った。


「こちらも芳しくありませんね。中を覗いてみて思ったんですけど……ボスのフィーリングで作られた部分が多すぎて、何が問題だったかすら特定が難しいです」


ぐっ……!

でも私はすかさず胸を張る。


「まあ、天才の発想は普通の人にはわからないわね!」


自画自賛で空気をねじ曲げる。これぞ私の得意技。

だがゼーベインが、腕を組んでぼそっと呟いた。


「それでピンチになってる天才ってなんだよ」


「うっ……」


な、なによ!? 言い返せないじゃない!!!


……ま、まあ、これも次のモデルで見返せばいいのよ。

私は天才、煉久紫アーカーシャ。笑われようと、最後に勝つのは私だから!!




――会議の最後。

「他に何か報告する人いる?」と私が聞くと、ヴェルトが手を挙げた。


「ボスは改良にかかりきりで知らないと思うのですが、近頃我々ではない“別の侵略者”が魔法少女と戦っているみたいです」


「……なにそれ、気になるわね」


私は思わず椅子から身を乗り出す。別の侵略者? ECS以外にそんなやつが?


ヴェルトは淡々と続けた。


「詳しいことはわかっていません。というのも、連中もまだ威力偵察程度の戦力しか出していないみたいなので。ただ、ネットでは“我々ECSなのか、別勢力なのか”で意見が割れているようですね。我々は常に侵攻の際に電波ジャックを行っていますが、それがない以上、別勢力だという意見が大きいようです」


「なるほどねぇ」


私は腕を組んでニヤリと笑った。


「勘違いされてないなら結構よ。むしろいいことじゃない。いままでは“侵略者がいる”って印象を保つために、定期的に侵攻をしてあげていたけど……その役を別勢力がやってくれるなら、その分私は改良に全力を注げるわ」


机の上に肘を置いて、グラスを傾ける。ぶどうジュースの甘さが喉に落ちていく。

ああ、最高。別の侵略者さん、もっと頑張って魔法少女を翻弄してくれてもいいのよ?

しかしヴェルトが、少し真剣な顔で口を開いた。


「……その間に、魔法少女が負けてしまうなんてことは」


私は即座に鼻で笑った。


「そんなわけないでしょう。あの魔法少女よ? 私たちが全力でぶつかっても勝てないのに、ぽっと出の連中が勝てるわけないじゃない」


その言葉に、ヴェルトは珍しく口元を緩めて笑った。


「……それもそうですね」


会議室に小さな笑いが広がる。

――ふふん。やっぱり最後に場をまとめるのはこの私。

悪のカリスマにして天才、煉久紫アーカーシャ様の仕事だもの!

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