第6話.朝起きたら

***


 外から帰るとるいの部屋から泣き声が聞こえた。中に入るとるいは部屋の隅っこで泣いている。


「るい、何かあったのか?なんで泣いてる?」


「グスッ・・おにいちゃん・・・わたし・・」


「だれかに何かされたのか?」


「ううん違う、私が・・私がしちゃったの。それで・・・どうしよう、お父さんとお義母かあさんに嫌われちゃった。・・・・・これからはきっと1人ぼっちだ」


「1人ぼっちなんてことないだろ、俺がいるし。それにるいが何をしちゃったのか知らないけどさ、何かしちゃったなら謝ろう。一緒に行ってあげるからさ。お母さん達なら許してくれるさ」


「・・・本当に?もし謝っても許してくれなかったら?」


「その時は許してくれるように俺も一緒に謝るよ」


「どうして、そこまでしてくれるの?」


「何言ってるんだ?おれはるいのお兄ちゃんなんだから当たり前だろっ。ほら一緒に行くぞ」


「うん、お兄ちゃん、ありがとう」


「おうっ」



***



 なんだかんだ懐かしい夢を見た気がする。


 朝日がカーテンの隙間から入る。10月下旬に入ろうとしてる朝、昼間はまだ暖かいが流石に朝は肌寒い。正直、布団から出るのが億劫だ。枕元にある時計を見ると5時50分を指している。朝食やら弁当を作らなきゃでそろそろ起きないと。


 そういえば布団が掛かってる。ああ、瑠依が掛けてくれたんだな。あとで感謝しなきゃだな。しかし昨夜は色々あったな。・・・いろいろ・・言ったな。


 眠気に襲われ限界寸前で薄れゆく意識の中で自分が言ったことを思い出す。


「どうしよう。少し恥ずかしくなってきた」


 あの時言った事を考えているとずっと脳内再生されそうなので起きて身支度しようと思い布団をどかす。すると自分から見て左側にいる奴に気付く。


「・・・なんでここにいる?」


「すーぅーすーぅー」


 気持ち良さそうな顔で寝ている瑠依から返事が帰ってくるとは思ってないがそれでも聞いてしまう。


「むにゃむにゃ・・・・へへっ」


 見るにパジャマに着替えているので部屋に戻って着替えたあとにまた来たのだろう。言った通りに首輪を外してくれてるし、俺のベッドそんなに広くないのに上手いこと寝てるなと思う。


 俺は瑠依を起こさないようにベッドから降りると着替えを持って部屋から出る。起こす時間にはまだ早いしこのまま寝かしといていいだろう。


 そういえば、結局どうして瑠依があんな事をしたのか分からずじまいだったな。いや、言ってたか。


『君に僕を、僕だけをもっっっっっっと見て欲しいから。そしてもっっっっっっと僕を意識して欲しかったからだよ。』


 言葉の意味のまま受け取っていいのか。瑠衣のことは家族として十分見てるつもりなんだけどなあ。まあその辺の事はまた分かるだろう。


 なんとなくだけどそんな気がする。


 なんて事を考えながらリビングのある1階に降りる。





 諸々が終わりソファに座って休んでいるとタンタンタンッと階段を降りる音を響かせながら瑠依が起きてくる。寝起きだから顔がまだトロンとしている。


「おはようー。なんか、良い匂いがする。もしかして、ご飯作ってくれたの?」


 眠たそう顔を浮かべながら聞いてくる。いつもはゆっくりなのに無理して起きてきてくれたのだろうか。


「おはよう。昨日作ってもらったしな。朝だし大したもんは作ってないけど」


「ううん、ありがとぅ。・・ふぁぁ」


「ベッドの空いた狭いスペースだったからあんまり寝れなかったんじゃないか?あとで起こしてあげるからもう少し寝て来ていいぞ」


「ほんと?助かるぅ」


 そう言いソファまで来る。そして、"ちょっと詰めて"とジェスチャーで伝えてくるのでその通りにする。


「いや、ベッドで寝てこいよ」


「良いの良いの〜。ここが1番休まるから。それじゃあまたあとで」


「いや、話を・・・ってもう寝てる」


 流れるように俺の足に太ももに頭を乗っけるとすぐに2度目の眠りについてしまう。


 起きた時の事といい色々と思うところはあるが気持ち良さそうに寝ている瑠依を見るとまあ良いかと思ってしまう。果たして良いのかな?・・・まあいいか。

 


 

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