第24話 穂乃果と先生と俺

 何とも切ない帰り道だ。もう、つぐみとは会えない。自分で決めたことだが。


 ここにはたくさんの恋人たち、家族が楽しそうにいる。


 愛夏に会えることを選んだ俺。間違ってはいない。すぐにでも会いたいのは変わらない。


 少し傾いた陽射し、心地よい風が吹き抜ける。何か後悔していないか?


 戸惑う気持ちが少しずつ強くなってくる。ぶれない気持ちと対等になってくる。


【つぐみとの会話、あれで良かったのかな?今になってもっと話さないとならないこと…もう遅いかな】


※ポンポン※


つぐみ!?肩を軽く叩かれて振り向くと、


【健太君、何落ち込んでるの?】


穂乃果さん!!それに、ダイブの時の先生。


【穂乃果さん、俺のこと知ってるの?】


穂乃果さんと、先生は見合わせてキョトン。


穂乃果さんは、


【やっぱり、つぐみんに…つぐみに何か言われたんでしょ?】


俺は、


【さっき観覧車で、穂乃果さんはこの現実では俺のことを知らないと。それに先生、つぐみは演技でしたよ、もう完全に目覚めて】


穂乃果さんは、


【そんな関係に?キャー!!】


先生は話の途中で、


【穂乃果煩い!!健太君それ、俺は知っていたよ、何もかも。全ては君のためにだろう。でも、君が不安定な状態であったことには変わりないがね】


穂乃果さんは、


【そこのお店で話さない?今の健太君の様子ちょっと心配だし】


先生は、


【穂乃果、つまらないことで時間使うなよ。健太君、どうかな?お腹も空いたし穂乃果の案に乗ってくれないか?】


俺達は近くの洋食屋さんに。


※【いらっしゃいませ、ご注文はお決まりでしょうか?】※


先生と穂乃果さんは、


【俺は本日のランチのハンバーグ定食とアイクコーヒー】


【私も。飲み物はアイスティーで、健太君は?先生のおごりだから遠慮なく】


【確かに奢るが、穂乃果が遠慮なくってのはおかしいだろ?俺が出すんだろ?】


【先生!!そんなこと言える立場?私の協力無しでは何も出来ないのに】


【いや…それを言われると。健太君、好きなものを。このプレミアムステーキ以外で】


俺は、


【ナポリタンとアイクコーヒーで】



俺はつぐみから聞いた話を。


穂乃果さんは、


【そう、そんなことを。半分は本音で半分は思いやりの嘘かな。つぐみんに言われたことは。健太君の思った通りの選択をしてほしいって、あの子なりの優しさだね】


先生は、


【つぐみも夢と現実で悩まされて辛いことも多く経験していたからね。健太君も眠ることが怖くなって来ていただろう?目を覚ますと夢なのか現実なのか】


俺は、


【つぐみは穂乃果さんはこの俺のことを知らないと、何故嘘を?】


穂乃果さんは、


【私と会って健太君の気持ちがブレないようにじゃないかな。ほら、私って健太君の気持ちを理解できる数少ない…あっ、ごめん】


先生は、


【穂乃果、脱線するな!!健太君も不安定な状態だろう。どちらかを断ち切ればこの不安定な状態を抜け出せるが、つぐみも同じ】


俺は、


【愛夏…夢で理想像を作り上げてしまったのかな?穂乃果さんも先生もダイブして愛夏と会ってますよね?】


穂乃果さんは、


【うん…健太君の夢も混ざっていたからね。素敵な娘だったのは解るけど。でも夢って時間と共に忘れていくでしょ?全て覚えてないよね?愛夏ちゃんのことも少しずつ消えかけて行くように】


先生も、


【少なくとも健太君がダイブ中は愛夏って女性は俺の前には居なかったよ。実に興味深いのは健太君が愛夏ちゃんを具現化出来るってことだ】


穂乃果さんは、先生に、


【先生!!愛夏は居ますよ!!!】


先生は、


【そ、そうだな。ごめんごめん。素敵な女性だもんな。俺なんかこの歳でドキドキなんてしてさ、それで】


俺は話を遮るように、


【先生、穂乃果さん、無理しないでください。何となく俺も予想できています】


愛夏は夢の中の理想像…



だとすると…



俺は、


【先生、迷惑おかけします。俺、やっぱり愛夏に会いたい…】


先生は、


【じゃさ、こう言うのは…】


※ハンバーグ定食、お待たせいたしました※


【あっ、穂乃果、先に】


【先生、じゃ、いただきまーす】


先生は、


【それでだ、提案…】


※ハンバーグ定食もう一人のお客様は?※


【俺です。熱々だ!!】


先生は、


【それでだ、俺の…】


穂乃果さんは、


【先生、冷めちゃうよ】


【おっ、そうだな。じゃ先に】


※ナポリタンお待たせいたしました※


【はい、ありがとうございます】


これは、食べ終わってから話そう…


先生も穂乃果も凄いガツガツと。


穂乃果は、


【はい、健太君。半分あげる】


俺は、


【いいですよ、そんなにお腹空いてないし】


先生は、


【健太君、食べてあげてよ。穂乃果ダイエットしないと。ちょっと太り始めてさ】


穂乃果さんは、


【先生!!それ問題発言!!!】


先生は、


【そうだった。ごめん、聞き流してくれ】


 あのー、俺の話は後で聞いてくれるんだよね?


 ハンバーグ、上手いな!!俺もこれにすれば良かったな。ランチでお得だったし、ナポリタンも美味いけど。















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