第15話 現実は

俺はつぐみさんの病室へ。


 愛夏はくっついてきた。ほんの少し離れていただけなのに、もう恋人同士の感覚なんだろう。それはそれで嬉しいが。


 それでも、愛夏には病室に入らず待っていて貰うことに。何があるか解らない。


 俺は慎重に病室へ。目覚めたばかりの、不安で仕方ないつぐみさんはどうなんだろう。何て言えばいいのか俺も不安。


覚悟を決めて、


✳コンコン✳


【はーい、どうぞ】


つぐみさんの声だ。


 愛夏は頷いた。恐らく俺が入って大丈夫ってことだろう。


【つぐみさん、体調は?】


外を見ている…ぼーとしているみたいだ。


【大丈夫です】


やはり不安なんだろうな。


ゆっくりとつぐみさんに近づいて、


【覚えていますか?俺は夢の中で会った健太…ドワッ!!何?】


つぐみさんは抱きついてきた!!


【へへっ!!つーかまえた!❤会いたかったーーーーー!!】


つぐみさんのとんでもない行動に俺は、


【な、な、なんですか?いきなり?】


【だってさー、暇だったんだもん。うーん、なんか塩素の匂い…何で?】


【プールに戻ってきたから、ダイブする時もプールからだったから、ちょっと落ち着きませんか?】


【嫌だ!!もう少し…クンクン…いい匂い】


【おかしいでしょ?そんなに匂いを】


【健太君…ありがとうね。覚えているよ、私の大好きな健太君のこと】


【な、何がどうしてこうなったの?夢の中でで知り合ったばかりですよ】


【んー、そうだっけ?嫌なの…それじゃ仕方ないけど…寂しい…】


【嫌とかじゃなくて、ちょ、ちょっと!!】


つぐみさんは、嬉しそうに甘えてきて、


【じゃ、こうしても良いよね?】


 抱きついてきて、それはそれで気持ちが落ち着くのなら良いけど…


何か視線…何だろう?


穂乃果さん!!気がつかなかったよ。


穂乃果さんは、


【やっぱりそうなりましたか…】


つぐみさんは、


【あっ!!ほのちゃんー、来てくれたの?】


つぐみさんの、やっぱりって?


やっぱりってことは、これ予測していたの?


穂乃果さんは、


【健太君、ちょっといいかな?外で】


 つぐみさんは、キョトンとしているが俺達は外に。


穂乃果さんは、


【つぐみんが健太君のこと気にしてるのは解っていたの。それでね、先に健太君に病室に。びっくりしたかも知れないけど、あの性格、行動力は元々、つぐみんそのものなの。でね、健太君には愛夏ちゃんいるでしょ?つぐみんが落ち着いたら説明するのでもう少しだけ相手しててくれる?】


俺はつぐみさんのこと考えると、


【解りました。上手く相手して落ち着くまでの間は、それにしてもあんな性格だったとは意外ですね。俺の夢の中では全然違って…】


穂乃果さんは、


【んー、つぐみんが健太君に興味持つのも解る気がするけどねー、なかなか魅力あると思うよ。なんか可愛いし、小動物みたい】


小動物ってのは、褒め言葉ではないな。


穂乃果さんは、


【今日のところは私に任せて。健太君、つぐみんのこと本当にありがとう。ダイブは疲れると思うから今日は愛夏ちゃんとこれ使って…あっ!!これじゃない!!こっち!!ごめんね、じゃね】


 穂乃果さんが間違えて出した物は、ご想像にお任せいたしますーーーーー!!!!!


 穂乃果さんが遊園地のプレミアムチケットをくれた。これは限られた人しか入れない特別な物だ。愛夏喜ぶぞー!!


ロビーで愛夏に、


【愛夏、これ知ってる?】


愛夏は、


【何?、えーと、これは!!何で!?】


穂乃果さんがくれたことを説明すると、


愛夏は、


【行こう!!何をおいても最優先】


 愛夏の目の色が変わった。本当に変わってる。よほど嬉しいんだろう。おい、階段!!慌てずに!!


と言ってるにも関わらず、


愛夏が踏み外しそうになって、


俺は咄嗟に、


【危ない!!つかまって】


そして、俺だけが転げ落ちるはめに…


案の定、意識を失った。










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