『好きです! おっぱい揉ませてくださいっ!』と告白した俺がクーデレ姫の『アレ』を掴むまでの話。
空依明希
第1話 『お』大きな夢が詰まってる
「好きですっ! おっぱい揉ませてくださいっ!!」
熱を込めた告白が、放課後の空き教室を凍らせた。
あれ? 俺は今おっぱいって言った?
確かにね。うん、確かに目の前で硬直している美少女――有川
学校で一番の美少女と呼ばれる彼女。
身長は150センチ台半ばの細身で、長い髪のクールな美人だ。
推定Fと言われる胸の前では、多くの男のIQが3まで下がる。
彼女の斜め後ろの席になると成績が下がるというのは、有名な話だ。
「……尾上くん、だったわよね」
「はい、尾上
声が裏返った。初めての告白。青春の爽やかな1ページ。
それなのに、有川さんのぷるっぷるした唇から出た声は、冷凍庫に入れたジュースよりも冷たく硬かった。
「勇ましい名前ね。……ご先祖様に謝った方が良いんじゃない?」
「ご先祖様はみんなおっぱい星人らしいので大丈夫です!」
やばい、眉間に皺が寄っちゃったよ。先に謝るべきだった。
「あの、ごめんなさい。完全に言い間違えました。やり直させてください」
「どう間違えてもそうはならないでしょう。……普段から思ってない限りは」
「ぐう……」
完全論破。悔しくてぐうの音だけ出してみたけど、全然伝わってない。
軽蔑の視線と塩対応に身が縮む思いです。所詮俺はなめくじレベルの男だよ。
「……今のは全部水に流して、やり直しませんか」
「今のを流せる社会なら、SNSは炎上なんてしないわよ」
論破のプロかよ。有川さん普段からネットでレスバとかしてそう。
せっかく美少女の時間を独り占めできているのに、どんどん不機嫌になっていく。
どうしたら機嫌がとれる……?
女子は奢りと可愛いものと甘い物とSNS映えが好きと聞く。それなら――
「まずはお互いを知ることからだと思いませんか。これから猫カフェの映え映えなパフェでも一緒にどうでしょう? 奢りますよ?」
「最初の一言であなたの人となりは十分理解できたわ。変態」
「思春期に振り回されてるだけなのに……」
呆れ顔でため息をつくと、有川さんは机の上のバッグを乱暴に掴んで歩き出す。
「もう行くわ。……二度と話しかけないでね。さよなら」
人を殺せそうなキツイ視線を投げて、サラサラの髪を勢いよく振って廊下に消えていく。
残されたのは、呆然と立ち尽くす俺と、甘いシャンプーの香り。
「……あれ、これやばくね?」
明日どんな顔で学校に行けばいいんだ?
***
翌朝の桜戸津高校2年A組。俺が教室に入った瞬間、またも空気が凍った。
女子の冷たい視線と、男子の生暖かい視線。
居心地が悪い。どこからか「おっぱい尾上だ」なんて聞こえてくる。
「……ちょっといい?」
家に帰ってソシャゲの高速周回でもしようかと思案し始めとき、後ろから声をかえられた。
振り返ると気まずそうな有川さん。
「公開処刑のお誘いですか? ちょうど今、死にたくなってたんです」
「無駄に元気そうで良かったわ。ちょっとこっち来て」
返事を待たずに、腕を掴まれ廊下に引きずり出される。
「ちょ……お金なら持ってません!」
「さっきから私のイメージどうなってるのよ。悪いようにはしないから黙ってきなさい」
「有川さんと腕を組んで歩けてるだけで幸せだから、悪くなりようがないです!」
「ほんとに元気ね。安心したら腹立ってきたわ……」
黙って有川さんの手の感触に集中しよう。
廊下で多くの視線を浴びながら、到着したのは昨日の空き教室。
バタンと音を立てて閉じる扉。よかった。厳つい先輩が拳をパキポキ鳴らしながら待ってたりはしないみたいだ。
俺の腕を離すと少し迷うように視線を揺らしたあと、有川さんは俺を睨むように見た。
「昨日のこと、どう思ってるの?」
「……本気で間違えたんです。めちゃくちゃ後悔してます。ごめんなさい」
ここは誠心誠意頭を下げる。
昨夜はベッドの上でずっと反省会をしていた。ソシャゲで推しキャラの胸が揺れる度に、後悔の涙が零れたほどだ。
「そう。謝れて偉いわね。許してあげる」
有川さんはふっと口元をほころばす。
こんな俺に笑いかけるなんて、飴と鞭か?
もっと好きになるだろ。どうしてくれんだ。
「それでね、実はお願いが有るの」
「お願い? 話しかけないでってお願いなら、血の涙を流しながら受ける覚悟だったけど」
「オーバーね……。それはもういいわ」
それ以外に浮かばないんだけど? まさかここから逆転の「私も尾上くんが好きでした」なんて出てくるわけもないし。
有川さんは1拍の間を置いて、目線をそらしながら呟く。
恥じらうように胸の前でモジモジと指を弄る仕草が子供っぽくて、愛らしい。
昨日の絶対零度に態度とは全然違う。
「実は――」
ふたりだけの教室に、ポツリと言葉がこぼれた。
理解するのに、少しだけ時間がかかった。
――
あとがき
ラブコメっぽいなにか、全4話の短編です!
全国のおっぱい大好きな男の人と、そんな変態男子をなじりたい一部の女の人はぜひフォロー&☆☆☆をお願いします!
まだ書き終えてないので、とってもとっても励みになります。ありがとうございます!
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