第2話

◇ ◇ ◇ ◇





≪そうですね、反省すべき点はいくつかあったと思うので。そこはこれからの練習で、重ねて改善していきます。ありがとうございました。≫


興奮気味なリポーターの声に淡々と答える自分の声が、滑稽に聴こえる。



「あ、ここの俺かっこい~とか思っちゃってる?勝ったのに反省しちゃってる近江珀(オオミハク)ってさすが…的な。」


「思うか馬鹿」


夕方と夜の狭間にあるニュース、スポーツコーナーで前日に行われた試合のダイジェスト、終了後のインタビューまでを真剣に見ていた相手が愉しそうに振り返ってきた。うってかわって。


ひらひらとかざす銀色のアルミ缶から中味が零れそうなそれに眉間を寄せるも、器用な相手は決して粗相をしない。



これは、昔からのことだけれど。




「硬派で男前な若手Jリーガーって謳われんのも大変だな」


「別に。プロ野球界の貴公子として崇められてる近江彗(オオミスイ)より気楽。変なキャッチフレーズなんかないし」


「…言うねえお兄ちゃん?」


それぞれにある自室以外は兼用のリビングで、ソファーに腰かけ優雅に笑う相手に舌を鳴らす。


微塵も気にする様子がない姿に呆れたところで、2つの通知音が響いた。


同じタイミングで、お互いのスマホから。




「…3時間後に集合、だってよ」


「…ぼちぼち、行く?」


「ん。あ、てかお前、アレ出来上がってんの?」


「とっくに。先に運んでるよ。設置はまだだけどね。」



粗い口調で、光の消えた双眸で、小さな画面を見つめる弟のホーム画面に映っているのは、紫と白で染まった不思議な花なんだろう。




「…オダマキ。」


キッチンとテレビの中間にあるダイニングテーブル、脚の長い椅子で胡座をつくり呟けば、離れた距離にいる弟の肩が、微かに揺れた。

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