裏切られて覚醒したスキルは死神の加護でした〜拾った愛娘と共に最強に至るまで、俺は何度だって蘇る
雀チュンチュン
第1話 レベル1の熟練冒険者
人は生きていく中で限界を越える瞬間を何度か経験する。
例え平凡な人生を歩んだとしても、その瞬間は時として現れる。
キッカケはそれぞれだ。日々の努力が、強敵との戦いが、あるいは突然のひらめきが人を成長させる。
限界を越えた先にレベルが上がる。
これはこの世界では至って普通の常識だ。
──────
大小様々な生き物の気配で溢れる森の中、気配を消して大木が作る影に潜伏する。
──Cランクのアンデッドが二体。
向こうはこちらに気付いていない。先手を取ってまず一体を仕留めるか……。
俺は静かに剣先の標準を頭に合わせる。
鋭く光る刀身に寸分のズレも許されない。
角度が狂えば、俺の力では一撃で頭部を貫通させることはできないからだ。
Cランクのモンスター相手でも油断は禁物である。
俺は息を殺して背後から刺突でアンデッドの頭を貫く。
動き出しからは一瞬で決めるのがコツだ。
「グギャア!!」
緑色の血液が腐敗した匂いを撒いて飛び散った。何が起きたか認識する間もなく絶命したことだろう。
続けてもう一体……怒り狂ったアンデッドは腕を大きく振り被る。
予測通りの動きだった。
その攻撃を身を捩ってかわし、横薙ぎで腕を切り落とす。そうすれば標的の攻撃手段は噛み付くことのみだ。
みすみすと首を丸出しにした特攻。
その首を落とすのは難しいことじゃない。
俺は二体のアンデッドの討伐に成功した。
「これで今日の飯代は稼げたな」
ホッと息を吐く。やっと緊張感が抜けてリラックス出来た。
命をかけてモンスターと戦い、稼げるお金は飯と酒代、それからいくばくかの貯金で全てなくなる。
毎日毎日その繰り返し。
それが俺、アルク・レインの日常だった。
使い古された安物の剣を鞘にしまう。
その時、音をたてて剣が根元から折れた。
「まじか……」
長く使い込んだ相棒だ。
買った時の値段を考えれば十分以上の活躍をしてくれたが、それでも新しい剣を買わなければいけないのは痛い出費だった。
どうやら、しばらく酒は我慢しなければならないらしい。
「ついてないな」
──俺は登録するギルドに戻ると、早速アンデッド討伐成功の報酬を受け取る。
「はい。確かに承りました。こちら報酬の120ギルになります!」
対応してくれたのは最近よく見かける新人の娘だった。ギルドの役員嬢はどこも綺麗で可愛い女の子が多いが、青髪が特徴的なこの娘はそれに加えて愛嬌があり、多くの冒険者からガチ恋されるくらいには人気らしい。
まぁ、俺には関係のない話だが。
「おい、髭面ベビー。鼻の下伸ばしてんじゃねぇぞ!」
「ぎゃははっ!おっさん、今日も生きててよかったな!レベル1の癖に運だけは立派だぜ!」
どこからともなく馬鹿にした笑いがとんでくる。それに対して別に怒りは湧かない。
嘲笑する声も笑いも、もはや慣れたものだった。
髭面ベビーとは俺のあだ名だ。
その由来はレベルが1なのは赤子くらいであることに対して、ヒゲを生やす俺のレベルがまだ1であることに起因する。
──そう、俺はレベルが一度も上がることがないまま今年で三十八歳になる。
世界では高レベル者が敬い尊敬されて、華々しい活躍をしている。
別に英雄でなくとも、一般的な成人男性であればレベルは最低でも二桁には到達するのが常識であるが、俺のレベルは生まれてより1のまま。
毎日血豆が出来る程に剣を振るっているし、モンスターや薬草の知識だって勉強している。
休むことなく冒険者として命懸けで戦っているのに、レベルは上がらない。
それでもCランク冒険者として稼ぐことはできているのは、その培った経験と知識故だろう。
だがそろそろ人生も折り返し地点だ。
一体俺の人生とは何だったのかと、そんな思考に陥る回数は日に日に増えていた。
「剣、買わないとな……」
またネガティブな思考になりかけたのを意図的に辞めて、俺は報酬金を持って鍛冶屋に向かおうとする
剣がなければ金を稼ぐことはできない。
金が稼げなければ死ぬだけだ。
「ちょっと待ってください。レインさん」
だがギルドを後にしようとした俺に、珍しくちゃんと名前で話しかけてくる者がいた。
振り返ると三名の冒険者が立っている。
「突然すみません。俺達はCランク冒険者の白兎ってパーティーでやってます。実は、レインさんにお願いがあって声をかけさせて頂きました」
荒くればかりのギルドにしては、やけに物腰低く話しかけてくる男。
それが逆に俺の警戒心を高めさせた。
「俺に願い?悪いが金なら貸せないぞ」
人が初対面の相手へ下手に出る時は、大抵の場合続けて碌でもない願い事があるものだ。
申し訳ないが他人を助ける余裕は俺にはない。
明日の自分を考えるだけで精一杯である。
「違いますよ。実は俺達とパーティーを組んでほしいんです」
それは予想外の提案だった。
「パーティーって……俺と?」
この俺とわざわざパーティーを組みたいなんて言い出す奴は初めてである。
レベル1のおっさんとパーティーを組むなんて、客観的に考えてメリットがないのは承知している。
「はい、実は明日ダンジョンに潜ろうとしてるんですけど、見ての通り前衛が一人しかいなくて……」
そう話す青年の後ろに立つのは、おどおどとした魔法使いらしき女と、馬面の僧侶らしき男だ。
「事情は分かったが、どうして俺なんだ?」
「レインさんはレベル1で冒険者をやってますよね。それはつまりレベル1なのにモンスターと戦えてるってことです。基礎能力を補う相当な知識や技術がなければ不可能ですよ。だから俺はレインさんのこと尊敬してます」
「それで俺にパーティーに入ってほしいってことか?」
「そうですね。どうでしょうか?分け前は四等分ってことで……」
俺は考える。
確かに金を稼ぐならダンジョン程優れた場所はない。今まではソロだったから行けなかったが、パーティーを組むなら行く価値は十分にある。
ちょうど剣が折れて、まとまった金が必要なタイミングでもあった。
「分かった。パーティーを組もう」
悩んだ末に俺は白兎のパーティーに加わることを決めた。金を稼ぎたいというのもあるが……本音では単純にうれしかったのだ。
これまでレベル1であることを散々馬鹿にされてきた。
そんな俺を必要としてパーティーに誘ってくれるのに、悪い気分はしなかった。
──翌日、なけなしの貯金を崩し、奮発して以前より良い剣を買った俺と、白兎のメンバーはダンジョンの入り口まできていた。
ほぼ初対面なので互いに軽く自己紹介を行う。
「あらためて俺はリーダーで剣士のカインです。それでこっちの魔法使いの女の子がビビ」
ビビと呼ばれた女はしずしずと頭を下げた。目を隠す前髪と細い体から気が弱そうな印象を受ける。
「俺は僧侶のウマジだ」
馬面の男は武骨に頷く。
短髪に刈られた髪が僧侶ってよりは武闘家っぽかった。
「レインだ。一応剣士をやっている。今日は宜しく頼む」
一応の自己紹介を終えて、俺達はダンジョンの中に入っていく。
今回潜るダンジョンはマグナ大迷宮。
この地域で一番の大規模ダンジョンであり、最深部まで行こうとすると危険度はSに指定されている。
当然俺達は途中までしか潜らないが、それでも危険であることには変わらない。
ダンジョンの中は湿った空気とカビ臭さで充満していた。
俺達は編成の確認をし合う。
前衛を俺とカインが、後衛からの火力係をビビが、そして傷がついたらウマジが治す。
初めて組んだパーティーはぎこちないながらも着実にダンジョンを攻略していった。
そして全部で十二階層あるダンジョンの三階層まで辿り着く。
目標は四階層までだったので、あと少しだ。
──と思った矢先。ダンジョンの曲がり角から赤い角を生やし大きな体躯をしたモンスターが現れた。
「オーガだ!気を付けろ!速さはそこまでだが、力が強いぞ!」
俺はそう警告する。Bランクモンスターだが、パーティーを組んだ今の俺達なら冷静に戦えば十分に勝てる筈だ。
「奴の弱点は視力が低いことだ、俺とカインで側面から挟んで攻撃しよう!ビビは中級魔法の準備をたのむ!ウマジは支援を!」
「了解!」「……はいっ!」
オーガの攻撃は単調だ。
レベル1の俺は速さですらもオーガに劣っているが、予測と誘導で何とか躱しつつ、ヘイトを稼ぐ。
奴を仕留めるのはビビの中級魔法だ、彼女の準備が整うまで時間を稼げばいい。
「炎の御霊よ、聖炎なるその熱を持って焼き貫ぬけ──
ビビの放った炎の槍がオーガの体を貫く。
「グオオオオォォォオオ!!」
悶えるオーガにカインが飛び立つ。
「双撃!」
オーガの太い首を2回斬ることで落としきった。見事だ。
「ふぅー何とか倒せました。なんだかレインさんがリーダーみたいですね」
カインは苦笑する。
「悪い、でしゃばりすぎたか?」
リーダーは彼だ。つい咄嗟に指示を出してしまったが、余計なマネをしたかと反省する。
「いや、的確な指示でしたよ。助かりました」
カインに気分を害した素振りはなかった。
そこら辺はあまり気にする性格ではないらしい。
俺達は順調にダンジョン攻略を進めていった。
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