【短編集】1分で満足できるSS
石山 京
サドル
朝起きたら、サドルが盗まれていた。そんなに高価のものを使っているわけではないのだが、そういう問題ではないのかもしれない。とりあえず携帯を取り出し、警察に連絡する。
事故ですか事件ですかと、電話口から問いかけられる。警察に連絡すると本当にこう言われるのかと、そんな場合ではないのに感動した。事故か、事件か。一言では言えない気がして少し口籠る。
もしもし、と電話の向こうの警官が急かしてきた。この世は事故と事件で溢れている。こんな程度の出来事に割いてあげられる時間は少ないのだろう。サドルが盗まれて、と言うと、納得したような声が返ってきた。ではお近くの交番の警官を向かわせますのでと伝えられたが、今度は俺が納得できない。交番の警官では対応できないのではと言うと、そんなことはないと苛立ちを露わにする。まさか事件が起きすぎて交番の警官だけで人の命を扱うようになったのかと、俺は驚愕した。だが、少し経って納得する。大切なことを言っていなかった。
「馬のサドルが盗まれて、盗んだ人が馬に蹴られて倒れているんです」
馬屋はすぐに、サイレンの音に包まれた。
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