赤眼ハンター、獣狼少女の義理に付き合わされる
れっさー耽々
プロローグ
「なんでお前がそんなところにいるんだ!?」
異様な空気漂う奴隷市。
檻の中にいたのは、森で一度助けた獣狼族の少女、イルヴァだった。毛並みは煤け、体には無数の鞭の跡。イルヴァは檻の隙間から必死に手を伸ばす。青色の瞳が俺の赤い瞳をまっすぐに射抜いてきた。
「ノア……助けて!」
あの日、助けたはずの少女が、なぜこんなことに……。
*
……この街には古い伝承がある。
山に棲む巨獣、赤い瞳の怪物たちは世界のヒエラルキーの頂点に君臨し、人間は巨獣の恐怖から隠れて暮らしてきた。
ある日、大蛇が現れ、麓に住む人間に取引を持ち掛けた。
『一年に一度、若い女を捧げよ。さすればこの地に安寧を与えよう』
人々は恐怖に従い、その代償を払い続けた。--これが今も残る”献身の儀”の始まりだ。そんな伝承の伝わる街で、ひとりの狩人が生きていた。
赤い瞳の青年、ノア。
巨獣と同じ色の瞳を持つせいで、俺は生まれた時から災いの子と呼ばれてきた。
村人は俺に巨獣の血が流れているんじゃないかと恐れ、忌み嫌った。そして、親にさえ捨てられた。
だが、人のいい爺さんに拾われて、狩りの知恵などを教えてもらい、何とか今まで生きながらえてきた。今は狩りで稼いで、腹いっぱい飯を食えればいい。今日を生き延びるだけで十分だ。
――だが、獣狼の少女 イルヴァとの出会いが、その生き方を大きく変えていく。
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