第45話 人間を辞める

 予想では最後はハンフの門派だろうな。

 あの、女性が近づくのが見えた。

 転移スキルでも持っているのか。

 でないと手紙を置いていった件とかが判らない。


「あなたが、お嬢様の想われ人に相応しいか確かめさせてもらいます。ハンフ門派の序列7位、サザンクア・カメリアです」


 ハンフの分家かな。


「待てよ。フェアフェーレンはハンフ門主の娘なのか?」

「はい、庶子ですが」


 そうか。


「よし、勝って、フェアフェーレンの下に行こう」

「では」


 クラクラときた。

 腹がよじれるほど痛い。

 かなり体調が悪い。


 なんだこれは。

 ハンフは医者の門派だよな。


 となると、もしかして細菌攻撃か。


「【翻訳】」


――――――――――――――――――――――――

翻訳スキル

┌──────────┐ ┌──────────┐

│日本語      ▼│→│英語       ▼│

└──────────┘ └──────────┘


 身体の中のウイルスを殺す。


🎤


 Kills viruses in the body

――――――――――――――――――――――――


「【文字置換】」


 文字置換での呪文はこんな感じ。

 急げ。


――――――――――――――――――――――――

文字置換スキル


┌────────────────────┐

│侍魔法言語変換            ▼│

└────────────────────┘


 【Kills viruses in the body】


📕


 【軍馬じゃ!(驚) 与える、一騎当千を期待しておる!(驚) 斬れ! 忠義の邪魔になる雑念を切るのじゃ! 卑怯な…… ならば、こちらも乱取りよ…… いかんのう? 逃げの一手じゃなかろうか? 愉快!(笑) そうか、敵方が下克上で相打ちか!(笑) [幕]火薬じゃ! 火薬が戦の勝敗を左右するぞ! 殿との! 書状じゃ、使者を遣わせよ! 家中かちゅう! 謀反の兆しか、一族根切りじゃ! 誰じゃ? 笑ったのは返答せい? おのれ…… 裏切るのか…… く…… なんのこれしき…… 愉快!(笑) 死なんぞ、死んでおらん!(笑) [幕]酒。(笑) 拙者は酒に呑まれれたぞ。(笑) 乱世。そうよのう、楽しむ時は楽しむのじゃ。[幕]むっ…… これは敵わぬ…… やるのう。ここからじゃ。む? これは難しき問題ぞ? [幕]そっ、そちは? もしや間者? 安穏じゃ! その方もそう思うか! 茶の湯。(笑) はせ参じるといたそう。(笑) なんと、乱戦!! 大言壮語も大概にせい!! 】

――――――――――――――――――――――――


 無詠唱。

 不調がすっかりなくなった。


 サザンクアの次の呪文が完成。

 俺は怠くなった。

 違和感に手を見るとシワシワ。

 脱水症状でもここまでにはならない。


「【文字置換】」


 人工細胞の登録して置いた英文を呼び出す。


――――――――――――――――――――――――

文字置換スキル


┌────────────────────┐

│侍魔法言語変換            ▼│

└────────────────────┘


 【make artificial cells】


📕


 【温泉。(笑) なんとも心地よき湯じゃ。(笑) ふむっ。愉快じゃ。憤怒じゃ。このような問題は捨ておけ。む? これは難しき問題ぞ? [幕]ザシュ(斬撃)♪ みなの者、根切りじゃ(無音)♪ もらった! 馬から降りて勝負じゃ! くっ。(苦鳴)♪ わしも悔しい(嗚咽)♪ 火が!! なにっ、敵の城が燃えておるじゃと!! 敵将!!(驚) 先陣切るとはやるのう!!(驚) 殿との! むせぶでない、嬉しいなら、さらに励め! くっ、無念だ…… お主、何とかしろ…… 火が!! ふっ、再起を図るしかないか!! そりゃ!! 掛かれ、勝利目前ぞ!! 卑怯な…… 起請文を破ったのか…… [幕]かっ、ぬかった…… まだ再起を期すことは可能ぞ…… む? わしもここまでか? 卑怯な…… こちらも策を使うまでよ…… いかんのう? 逃げの一手じゃなかろうか? 掛かれ!! 遅れるでないぞ!! 】

――――――――――――――――――――――――


 無詠唱。

 体の細胞が全て、魔法の人工細胞に置き換わった。

 手を見るともとのすべすべな手。

 だが、俺はもはや人間ではない。

 魔法生物と言っても良いだろう。


「合格です。老化の魔法に打ち勝ったのはあなたが初めてです。これでも私は、ハンフ門派で一番の手練れです」


 治療の門派だからな。

 治療の腕が物を言うのだろうな。


「フェアフェーレンの現状を話せ」

「お嬢様はあなたを助けるために、何度も魔法契約を受け入れました。最初は門主の許しがなければ、家から出ないこと。次は結婚を承諾すること。最後は大人しく、結婚式を終えること」


「フェアフェーレンはそんな犠牲を払ってたたのか」

「手紙を届けたり、一族に魔法を掛けて貰ったり、家宝をあなたに渡したりです」


「家宝をよく渡したな」

「あれは地獄行きのチケットですから。あの試練に成功した者はおりません。腕輪はまだいくつもあります。初代様に会えましたか?」


「ああ、会ったよ。フェアフェーレンを頼むと言われた」

「私の試練は余計でしたね」


 さあ、フェアフェーレンを迎えに行こう。

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