第50話

 今朝も、お昼も何事もなく一日を過ごすことができた結城は、心の底から安堵していた。


 今日の朝は、恭介の家でいつもよりもゆったりと朝食を食べて、夢と一緒に登校することが出来た。

 

 恭介は、結城が自分の家から学校へと向かっていくときに


「いってきます」


 とそう言った結城のことを見て心の底から喜んでいた。


 そんな恭介を夢と結城が温かく見守るほどにゆったりとした穏やかな時間が流れていた。


 それは、学校に着いても変わらずに何もない穏やかな一日であった。


 昼休みもいつもの場所へで食べていたが、新条沙耶が姿を見せることもなく夢と一緒に作ったお弁当を食べながら昨日の事をぼぉっと思い出しては、少し心が温かくなる。


 そんな一日を終えて、結城は下校していた。


 夢と待ち合わせをしている場所へと歩いていく。


 きっと、いつものように待っているだろうと結城は思っていたのだが、なんにも無かった今日に限って夢が先に来ていなかった。


 大学が忙しいのだろうとそう思って、結城は夢を待つことにした。


 だけれど、待てども待てどもくる気配が微塵も感じられない。


 段々と不気味に感じてきた結城は悩みに悩んだ結果、一度恭介が待っている喫茶店へと行くことにした。


 夢との連絡先を交換しておいたため、すれ違いが起きないように念のため、夢へと連絡を入れておく。


『もう先に帰っていますか?』


 とそう連絡を送ってみるも送ったばかりだからか、それとも何かあったのか、不安に感じているからか、全く持って返事が返ってくる気配がない。


 もしかしたら、先に帰ってしまっているのかもしれない。


 喫茶店が、何かのイベントが近くでやっていてそれで忙しくて夢が先に喫茶店へと帰っているのかもしれない。


 きっと、そうだ。


 そんなある可能性が低い選択肢にしがみつくほどに結城の視野は狭まって何も考えられなくなっていた。


 もしそうだとするのなら、夢は連絡をしているだろうし、そもそも帰らなくても恭介に連絡をすればよいだけの話である。


 喫茶店へと向かう足は徐々に速くなっていき、途中からは駆け足になって、最後は全速力になっていた。


 喫茶店が見えて、少しだけ気持ちが落ち着き、息を整えてから扉を開ける。


 きっと、夢はここに先に帰っているだろうとそう思って。


 ゆっくりと、恐る恐る扉を開けた先で、夢は…


「結城君、おかえり。どうしたんだい?そんなに焦って」


 いなかった。


 どこを探しても、いない。


 そんな結城の様子と、一緒にいるはずの夢がいないことに気付いた恭介は結城に問いかける。


「夢は、どうしたんだい?」



 






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