散々女の子に騙されてきたので、女性不信になりました。

かにくい

第1話 信じるとは代償である

 いつもこうだ。


 いつもこうして裏切られている。


 今まで積み重ねてきた信用とか、恋愛感情とか、約束とか、信頼関係とか、その他諸々をこうして裏切られてきた。


 どうしてなんだろう、なんて考えてみるも結城の中で答えが出ることは無い。


 結城はただ、普通の男の子みたいに、学生として恋愛してその女の子と仲良く付き合って、それから先の事も考えてたり、それ以上の事を考えたりして。


 結城は何度も裏切られてきたけれど、それでも今度こそはとそう思って信じてみたけれど結果はいつもこうだった。


「綾香、いつあいつと別れるの?罰ゲームで付き合ったじゃん」


 放課後の教室。


 結城の彼女である皐月綾香は、友達と遊ぶからと言っていた。


 そのため、結城は今日は一人で帰ろうとそう思っていたが忘れ物をしてしまったため教室に戻ると、中では綾香とその友達が話していた。


 綾香がいるから入ろうかななんて呑気なことを考えていたが、先ほどの話が聞こえてきたため、ドアの後ろに隠れた。


「それは..」

「まさか、あんな冴えない男とずっと付き合ってるつもり?だって綾香、嫌そうにしてたじゃん」


 結城の中で綾香の友達が言葉を吐き出すほどに、何かに罅が入る。


 ぐちゃぐちゃになっていたものを何とか必死にくっつけて保っていたその何かが崩れそうになる。


「さっさと別れちゃいなよ。もう罰ゲーム期間も終わったことだしさ」


 バキバキとうっすらと割れていたものが音を立てて崩れる。


「そう、だね」


 綾香がそう諦めてそんなことを言った時、結城はそこから静かに動いて教室から離れ、そのまま学校を出て、帰路に就いた。


 結城の中で明確に何かが変わった。


 音を崩れていた何かが、封じ込められていた何かが崩れたのだ。


「あぁー、もうなんか。どうでもいいや。全員、しらね。誰だよ、あいつら。もうなんか、全員死んでくれないかな」


 結城の言葉遣いが荒くなった。


 女の子に対してあいつら、とか死んでくれないかな、なんて荒い言葉を使う人間ではなかった。


 ほんの少し前までは。


「でも、なんだろう。すっきりした感じもする。今まで律儀にお父さんの言葉を守っていたけれど。もういいよな。だって、こんだけ優しくして、愛そうとしてもこうなるんだから」


 父が生前、結城にはなった言葉を律儀に守っていた結城だったが度重なる裏切りによって心がぐしゃぐしゃになった。


 枷が解き放たれたようだった。


「かえって、ゲームでもしよ。あー、でも母さんと恵がだるいな。あいつら、僕を裏切ったくせして今さら信頼取り戻そう、なんてバカみたいなことしてるし。なんであいつらなんかに優しくしてたんだ」


 ぼそっと呟いた結城は、これからどうするかを考える。


 家にいると、見たくもない顔を見なきゃいけない。


 でも、今日寝るところもないし、ご飯もないし。


 そんなことを考えている結城だったが、一つ思い浮かんだ顔があった。


「あ、そうだ。マスターの所でも行こうかな」


 そう言って、結城がバイトしているカフェへと歩き始めた。


 

 


 

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