ぐっど・てすためんと!〜反抗期JK、異世界で聖女になる〜
緒方 悠
第1話 プロローグ
いったいアタシたちの誰が間違えたっていうの……?
床に敷き詰められた無機質な大理石。その質感を顔面で味わっていたアタシの脳裏には、クソ面白くもない、ありきたりな疑問と後悔が浮かび上がっていた。
アタシの人生、逃げたり投げ出したりはまぁまぁあったけど、今回ばかりはマジでヤバめのどん詰まり。精も魂も尽き果てて、無様に床に転がる今のアタシは、まるでホストに捨てられた憐れな女のようだった。
「誰が間違えた、ね……」
頭に浮かんだ疑問を口にして、アタシは軽く苦笑する。
犯人探しなんてするまでもない。そんなのとっくに気づいてる。
間違っていたのはアタシ……他でもないアタシの選択が全ての原因なの。
その事実を今更ながら思い知らされて、アタシは乾いた笑いを虚空へ放った。
口うるさい親もいない、面倒な宿題やテストも存在しないこの異世界を、家出とか自分探しの旅とか、なんかそんな軽いノリのまま満喫したかった。
でも、いつの間にか頭のおかしい連中たちに目を付けられて、付き纏われて、気づいた時にはもう手遅れ。
今にして思えば、『もっと大人になりなさい』っていう母の小言に、素直に従っておけば良かった。
上は理不尽な権力者から下は酒場のチンピラまで。日本でも異世界でもムカつく奴らはゴミのように湧いてて、生き辛さはうんざりするほど何も変わらなかった。
くだらない事にいちいち苛立って、どうでもいい事にブチギレて、挙句のはてに死にそうになってる。
どう、ウケる話でしょ?
「…………」
コツコツと足音が近づいてくる。
殺気にも似た気配が、女の姿を捉えるまでもなくひしひしと伝わってきた。
まるで死刑宣告。今のアタシにできるのは、迫り来るアバズレ女のとどめを待つことだけ。
結局のところ、こんなふざけた異世界に来たこと自体が間違いだった。
それも掛け値無しの大間違い。
だって、人類の救済も悪の根絶も平和の実現も、何一つアタシがやりたいって言い出した訳じゃないんだから、そもそも平凡な女子高生でしかないアタシは、この異世界で愚かな異世界人として振る舞う以外にどうしようもなかった。
「ま、それももうどうでもいいわ……もう、どうでも……」
最後に、異世界に来といてこんな投げやりなアタシを、ワガママだとか自己中だって非難したくなった人達に少しだけ想像してもらいたい。女子高生が異世界に行くということが何を意味するのかを。
今が人生の絶頂期! っていう十六歳の女子高生にとって、高校での青春の代わりに異世界で冒険するハメになるなんて、笑うのも気の毒なとんでもない不幸だって、そう思うでしょ?
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