第5話 由紀子の驚き

「は? ちょっと待って、美咲、それ本気で言ってる?」


美容院のカウンター越しに、大学時代からの親友・松田由紀子はハサミを持ったまま、美咲を凝視した。


「本気よ」


美咲は何事もないようにカフェオレを飲んでいる。その落ち着き払った態度に、由紀子はますます困惑した。


「いやいや、あんたね……この歳になって男と二人暮らしって、普通は恋人か再婚しかないでしょ?」


「そう思うのは勝手だけど、うちは違うの。ただの友達よ」


「ただの友達って……世間がそう思うかしら?」


由紀子は眉をひそめた。美咲は、そんな世間の目なんて気にしていないようだ。


「別にいいのよ。私がどう思うかのほうが大事でしょ?」


「……まあ、それはそうだけど」


由紀子はため息をつきながら、鏡越しに美咲を見た。彼女は昔から自由奔放だったが、今回の決断はさすがに驚いた。


「それに、健二といると楽なのよ」


「楽?」


「うん。変な気を使わなくていいし、会話もしやすいし……。昔からの親友って、こういう感じなのかもしれないわね」


由紀子は少し考え込んだ。確かに美咲の言うことも理解できる気がする。


「でも、あんた、もう少し自分の気持ち、ちゃんと考えなさいよ?」


「え?」


「それ、本当に『友達』だけの気持ち?」


美咲は答えなかった。ただ、カフェオレのカップをじっと見つめていた。

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