第5話 常世国の実態
北斗はまさか小学校の頃の悪ガキ西村太陽君が、命を落として常世の国に居ようなど夢にも思わなかった。もっとも常世国に相応しくない凶暴な悪ガキだったが、意外や意外カブトムシは大切に育てていたらしく、亡くなったカブト虫の墓を作ってやっていたので常世の国に渡れたらしい。
彼女を殺害したのだが、どうも……バカだったせいで勤め先が見つからず、ルックスだけは良かったので仕方なくホスト勤めを始めたのだが、バカが災いして2股掛けられてしまった。
出会いはホスト時代に彼女と知り合ったのだが、バカにもほどがあり小学校低学年で習う漢字の上と下、木と本、右と石を間違えるバカっぷりで、彼女に呆れられて捨てられてしまった。
ホストクラブの店長にも「ボロが出るからしゃべるな。横に座ってニコニコしていればいい。話す言葉はシャンパンコールの掛け声と、にっこり笑って『お金払って😁』だけでいい」と口が酸っぱくなるほど言われていたのだが、それでも…ボロが出てしまった。
🍷シャンパンコール🍷
グイ!グイ! グイグイよし来い!
グイ!グイ!グイグイよし来い!」
はい!
飲ーんで飲んで飲んで!
飲ーんで飲んで飲んで!
飲ーんで飲んで飲んで!
飲んで?
全く太陽君にはどうしようもない……
(虫には優しかったかもしれないが、俺には散々だった。駄菓子屋のお菓子を盗みに行くよう指示を出され「嫌だ!」と言うと殴る蹴るされたし、親から成績が悪すぎると罵られ俺に八つ当たりして、野良猫の首切って来いと指示を出されたこともあった。あんなんでよく常世の国に来れたものだ。あいつは確かに口が上手く強者には徹底的に媚びを売り、ゴマすりだった。その反面弱者には徹底的に追い込む一面があったので、常世国の王様もコロッと騙されたのだろう)
そして…現在子供の頃のガキ大将太陽と唯一の友達となって仲良くしているが、決して気が合うからではない。誰もいないから仕方なしに仲良くしているだけだ。
それでも…俺もこの国に召集されてしまった以上、こいつしか知った奴はいないのでいろんなことを知っておく必要があるので、仲良くするしかない。
そう言えば、常世の国は永久不変、不老不死、若返りなどと結びつけられた理想郷として、目を付けられるようになってからは、いろんな種族が侵略してくるようになった。
「なあ……この国にはどんな種族が生活しているんだい?」
「この国は、永久不変、不老不死、若返りなどと結びつけられた理想郷として考えられていた。死後の世界の行く永遠の世界、常世の国とは海上遥か彼方にある理想郷と言われているのだが、この理想郷を乗っ取ろうと考えたつわものどもが侵略して来たのさ。本来は美しい緑と花々を飛び交うカラフルで美しい蝶々が舞う国だったのだが、とうとう太刀打ちできなくなって、あらゆる虫たちをこの国に招集したのだ。そして…虫も殺せない優しい人間も招集したのだが、この理想郷を侵略しようと多くの生物が乗り込んできた。こうしてとうとう王様と女王様が魔力を手に入れようと、この国の魔法使いのお婆さんのところに特訓に行き、魔術を覚えたのだ」
「例えばどんな有り難くない生物が侵略して来たんだよ?」
「典型的な宇宙人が宇宙船に乗ってやって来て、常世の国の蝶々を絶滅の危機に追い込んだこともあったが、炎の壁で味方を守り、突如出現した火のカーテンで宇宙人を取り囲み、迫りくる烈火の勢いに宇宙人は命を失い、もう攻めて来なくなったんだ。あのずんぐりした芋虫の女王様が強いんだよ。魔法使いのお婆さんのところに特訓に行き、魔術を覚えたからだけど、その力は凄いらしいよ。他には巨大化したネズミや気味の悪い宇宙生命体もいたが、女王様が追い払われた」
「あんなぶよぶよなのに女王様強いんだね?」
「そうなんだよ。王様が計画して女王様が実行に移すって感じだね」
👧👧👧
ところで幽霊たちは常世国で居住許可を貰えたのだろうか?
実は…この国には特定の神様や物語に登場する神様が住んでおいでになる。
あの日話し合いがもたれて王様が言った。
「私は蝶の神様だが、この国にはもっとお偉い神様がおいでじゃ。スクナビコナ(少彦名命)と言うお偉い神様と浦島太郎がおいでじゃ。そこで許可を貰ってきてくれ!」
スクナビコナ(少彦名命):スクナビコナは、全国を巡りながら、主君の命令で国造りを助けたとされる神様で、知恵と技術を活かして国造り・国堅めを行い、特に医薬、酒造、温泉、まじない(禁厭)などを司り、人々を病気から救った「文化英雄」の神様としても知られている。最終的には常世の国に行ったとされている。小さな身体の神様でその小さな体から、一寸法師のモデルになったとも言われている。
✿おとぎ話
一寸法師は、子供のいない老夫婦が神に祈って授かった身長一寸(約3cm)の小さな男の子。京へ出て鬼を退治し、打ち出の小槌で大きくなって幸せになる日本のおとぎ話。
浦島太郎(浦島子):有名な浦島太郎も、竜宮城として知られる常世の国へ行ったと伝えられている。
✿おとぎ話
浦島太郎という漁師が年老いたおっかさんと二人で暮らしていた。
ある日、浜辺で子ども達が一匹の子ガメをつつきまわしているのを見たので、助けて海へ逃がしてやった。数年後太郎が海で釣りをしていると、大きな亀がやって来て、昔助けてくれたお礼にと海の中の竜宮へと連れて行かれた。竜宮では美しい乙姫さまに歓迎され、魚たちの踊りや、素敵なご馳走でもてなされ、楽しい毎日を過ごした。
しかし何日か経つと太郎は村に残してきたおっかさんのことが気になって、だんだん元気がなくなってきた。それを察した乙姫さまは「村に帰って、もし困ったことがあったら、この玉手箱を開けなさい。」と言って、太郎を送り出した。
太郎が亀の背に乗って村に帰ると、自分の家はおろか村の様子がすっかり変わっていて、太郎の知っている人が一人もいなくなっていた。太郎が竜宮で過ごしているうちに、地上では何十年も経っていたのだった。困った太郎は、乙姫さまに貰った玉手箱のことを思い出した。
蓋を開けると、中から白い煙がもくもくと出て、たちまち太郎は白いひげのお爺さんになってしまった。
🌊🪸🪼🌊🪸🪼🌊🪸🪼🌊🪸🪼🌊🪸🪼🌊🪸🪼🌊🪸🪼🌊🪸🪼🌊🪸🪼
お偉い神様に居住許可を貰おうと動き出した幽霊たち。
「おいおい!みんなで一緒にスクナビコナ神様の御殿に御目通りを頂きに行こう」
「どこにおいでじゃ?」
「立派な御殿においでらしい」
「高台の神社だと聞いている」
幽霊はゆらゆら空を飛びながら立派な神社に着いた。鳥居の門番が居たのでスクナビコナ神様に御目通りを頂こうと話した。すると門番が言った。
「お前らみたいな青白い見すぼらしい人間、きっと許可が出ないと思うよ。スクナビコナ神様は、まーるい物が大好きだ。分るか、まーるい物🪙💰💴それと……若い女」
「ええええええぇぇええええええっ!罰当たりな仮にも神様とも有ろうお方が、そのようなふらちな……」
「幾ら神様でも空気を食って生きている訳ではない。常世の国は永久不変、不老不死、若返りなどと結びつけられた理想郷と捉えられているが、それは宣伝のたまものなのだ。宣伝費用も莫大に膨れ上がっている」
「今までここに来て理想郷と言われるほどの良い思いもしていないのに……それって只のぼったくりじゃないですか?」
「ガタガタ文句言うんだったら帰ってください😩💢💢💢」
「まあ一度スクナビコナ神様に御目通りをお願いします!😰」
「ついてきたまえ」
立派な御殿の本殿の前に通された幽霊一同。
「スクナビコナ様、この国に居住したいと申しております一同をお連れしました」
「入れ!」
幽霊一同が本殿に通されたが、おとぎ話の勇者 、賢者で知られる一寸法師とは程遠い、美しい女性をはべらせたスクナビコナ様の姿があった。女性たちは団扇(うちわ)を揺らつかせ天女様のような格好でスクナビコナ様に酒のお酌をしていた。
この国は本当に永久不変、不老不死、若返りなどと結びつけられた理想郷なのだろうか?スクナビコナ様のこの体たらくぶりに啞然とする幽霊たちだった。
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