第21話 オタク、悩みに聞き耳を立てる



 結局おかわりも食べきって、三人は二キロのワイバーンステーキを胃に収めた。

 ぼくは一枚で充分だった。


 あとは部屋でベッドに寝っ転がって、至福のダラダラタイムだ。

 みんな装備を脱いで、もう今日は誰も動こうという気を感じさせない。


「ふぃー、お腹いっぱい! 夢みたいな時間だったし!」


「ちょーうまぁ……! しかもまだお肉余ってるよぉ」


 エイジャさんとリーシャさんは下着姿になって、ベッドに寝転がっている。

 クルスさんも上着を脱いでおっぱいを見せた姿で、料理の余韻に浸っていた。


「ありがとうね、オタクくん! こんなに簡単にワイバーンが狩れるなんて……! しかも、手持ちが見たことない金額になってるよ!」


「強化もありますけど、皆さんの実力あってのことですよ。ぼくだけじゃ火力が足りなくて、ワイバーンの鱗なんて突破できませんから」


 ぼくの答えにも、クルスさんは座ったままニコニコ顔でゆらゆらと揺れている。

 一緒に白いおっぱいもぷるぷる揺れている。


 と、顔を赤らめて恥じらいながら、クルスさんは口元に指を当てた。


「こ、このお礼はどうしたら良い……? 揉む? それとも、ボクが舐める?」


 食欲が満たされて、別の欲求が出てきたらしい。

 本人もそれを恥じ入って、照れながらぼくをチラチラ見ている。


 ご褒美は嬉しいんですけど。

 今はお腹いっぱいなので動けません。


「パーティメンバーじゃないですか、気にしないでくださいよ。それより、お腹いっぱいで苦しいので、ぼくは少し、横になって休ませてもらいますね」


「うん、わかった。あーしが裸で、オタクくんの顔の上に乗れば良いんだね?」


 なんでそうなる?

 エイジャさんは下着を上下とも脱いで、褐色の丸いものを二つ揺らしながら、ぼくのベッドに移ってきた。


「ほらほら、オタクくんは動かなくって良いからさ。好きっしょ? あーしの、こ・こ」


 ぐりぐりと濡れた場所を押しつけてくるエイジャさん。

 頭を太ももで挟まれてロックされているので、逃げようもない。


「エイジャさん、エイジャさん。息が苦しいです。……わぷ」


「んなこと言ってぇー。オタクくん、怒ってないじゃん。冷静なフリしても、気に入ってるの丸わかりだぞぉ?」


 ずん、と腰を下ろして顔の上に座るエイジャさん。

 いよいよ息が苦しい。


「あー。じゃ、ウチはオタクくんのショーツ脱がしちゃおっかなー。寝たまんまでいーよ」


「じゃ、じゃあ、ボクはオタクくんの『手』を借りるね」


 二人もそわそわと、ぼくのベッドに移ってくる。


「あはぁー、『男』の情けなぁい声、可愛い。さいっこぉ」


「らから、オタクくんは美少女らってば。んぷ」


 日の沈みきらないうちから、ぼくは三人のオモチャにされ続けた。

 扱いが酷い。



**********



 回復魔法を極めておいて良かった。命を拾った。

 三人は完全に賢者タイムになって、ガールズトークにいそしんでいる。


「だからさぁー。オタクくんを『夫』ってことにしたら、あーしらの世間体も守れるじゃん? 重婚自体はだいじょぶなんだからさぁ」


「やだー。そしたら、オタクくんに男の格好させなきゃじゃーん。それは解釈違いだよー」


「ボクも、オタクくんは今のスカートの方が似合ってると思うな。ほら、一緒に暮らすんならさ、可愛い方が良くない? せっかく可愛いんだから」


 勝手なことを言われている。

 確かに、このまま三人と一緒にいるのはイヤではないけど。


 百合の間に挟まる『男』は前世だと重罪のはずなんだけど、

 三人がぼくを『男の娘』扱いしてるときは、どうしたら良いんだろう?


 これは普通の男女恋愛? それとも同性愛?

 三人は同性が好きなわけだし、ぼくも心はちゃんと男だからなぁ。


 この関係って、どうなるんだろ?

 なんて言えば良いんだ?


「だーからぁ、オタクくんなら、あーしも怖くないワケよ。他にいなくね、こんな子?」


「わかりみ。――でも、他にいないって同意はすっけど。ウチとしてはやっぱ、女の子じゃなきゃダメだからさ。オタクくんは見た目がまんま美少女だから、ギリ許せるんで」


「どうだろ。ボクとしては、ボクを『女の子』扱いしてくれることに、ときめくんだよね。ほら、女の子はたくさん寄ってくるけど、みんなボクを『男』だと思って来るしさ」


 三人それぞれ、性に関する悩みがあるようだ。

 ぼくは寝たフリをして、ベッドにうつ伏せたまま聞き耳を立てていた。


「あーしもオタクくんは、世の中のヤローみたいな『男!』って感じはしないわけよ。優しいし、大人しいしさ? でもさ、実際あーしらに興奮してんのは、男だからじゃん?」


「どーだろー。フツーの『男』はさー。いくらなんでも、今日のエイジャみたいな真似したら、怒ると思うわけよ。それを喜んでるってことはさ? 男、とはなんか違わね?」


「うーん。リーシャがそう思いたいのはわかるし、実際にボクもオタクくんは普通の『男』とは違うと思うよ? 前世の話もあるけどさ。なんかこう、中性的? っていうか」


 男でも女でもない、不思議な魅力。

 クルスさんの感想に、エイジャさんとリーシャさんは「それだ!」と声を揃えた。


「良くね? オタクくんの性別は『オタクくん』ってことでさ。男か女か、どっちかこだわる必要なくね?」


「さんせー。それならウチも納得できっかなー。ウチ、男は無理だけど、性別が『オタクくん』なら仕方ないよね。恋しちゃっても良いんじゃん?」


「まぁ……それが、一番納得できるかなぁ。『男か!?』って聞かれたら線が細いし、『女か!?』って聞かれてもそうじゃないわけだし。オタクくんの性別は『オタクくん』だよね!」


 違います。

 ぼくは普通に男ですよ?


 そりゃ、この世界の男らしさはないけど。

 この世界の、冒険者は特に、男はバンカラ・オラオラが女性にもてるから。

 みんなそれを目指して、大なり小なり、威張った粗暴なところがあるもんなぁ。


「問題は、誰がオタクくんを射止めるかなんだけどさー。あーしとしては、三人みんなで一緒にいたいワケよ。リーシャともクルスとも、結構長いしさ」


「そだねー。ウチも、オタクくんを取り合ってウチらで揉めてケンカ別れ、は避けたいかなぁ。……みんなで『共有』しね?」


「それが良いと思う。せっかくボクらの仲は良いんだしさ。三人の誰がいつオタクくんに手を出しても良いから、それに誰も文句を言わない、って協定を結ぼうよ」


 異議なし! と全員一致だった。


 いや、嬉しいよ? 嬉しいですけどね?

 言い方が『共有』になってんのは気のせいですかね?

 仲間っていうか、『所有』されてません?



 当分の間、ぼくは三人の間でぐるぐると共有され続けることに決まったようだ。


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