第19話 調停後の雑談

 先に裁判所を出たはずのD男と帰りが被った。


 俺は調停委員に2回目呼ばれる前、待合室で足元を見ていた。

 C男らしいジーンズの男は三番の部屋から待合室に戻った。

 D男らしいスラックス男が退庁するのを見ていたからだ。


 俺はすぐに帰るように調停委員に言われたので、すぐに退庁。

 駐車場にD男の姿がある。


 少し話をして、今回の調停での話及び次回の打ち合わせをすることにした。


 近くのファミレスでお茶をしながら情報交換をする。

 聞かれたことはほぼ同じ。

 遺産分割について。

 そして兄弟の関係性。

 なぜ話し合いに応じないのか、推測されるその理由。


 D男は、C男と同じ部屋で待機させられたそうだが、C男はほとんど話をしなかったとか。

「久しぶり、元気だった?」

と話し掛けても、

「あー」

と返事、

「奥さんは元気?」

「うー」

としか返事をしなかったそうだ。


 おいおい。

 普通に話せよ。

 話したくないなら、話したくないって言ってくれよ。


 それ程人に言えないことを考えているのかよ。

 それとも被害者意識を出したい素振りなのか?

 嫌がらせするなよ。

 そういう事はいつか自分に帰ってくるぞ。



 調停前の考えでは、D男の考えでは、C男は来るけどA男は来ない。

 私は、A男は来るけどC男は来ない、という考え。


 結果、D男のいう通りになった。

 俺の見立てが間違っていたか。


 それでも調停が進みそうで、しかも調停だけで済みそうな気配漂う第一回目。

 この調子だと、一年以内で調停も終わりそうだな。

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