第24話 歴史は繰り返すか
俺は後輩の女の子と二人っきりで、久しぶりに一年生の教室にいた。
机を挟んで向かいに座っている後輩は、俺から目線を逸らさず、真っ直ぐに見つめている。
「さて、センパイ。まずは自己紹介をしますね?」
どうやら、会話の主導権は俺ではなく、彼女にあるらしい。
知らぬ間に、話が進んでいく。
「私は一年の園池 彩芽と言います」
「そうか、園池さんは――――」
「彩芽と呼んでください」
「彩芽でも構いませんよ」ではなく、「彩芽と呼んでください」という言い方に多少の違和感を覚える。
まぁ、些細なことではあるかもしれないが。
「……彩芽は俺のことを知っているんだよな?」
これは確認のようなもの。
先ほどはあそこまで深入りしてきたくせして、俺のことを知らないなんてことは無いだろう。
「もちろんです。陽向センパイのことはよく知っていますよ」
「なぜ俺なんだ?」
ある程度頭の中では想像がついている。
こういう系の輩は、「面白そうだから」という理由で関わってこようとする。
非常に無責任かつ自己中なやつらだ。
でも、彩芽の答えは予想の斜め上のものだった。
「私も陽向センパイのことが好きだからですよ」
「そうだよな。お前みたいな…………今なんて言った?」
「だーかーらー。私も三室戸センパイと同じで、陽向センパイのことが好きなんです」
心做しか、彩芽の耳が若干赤くなっているような気がする。
けれど、俺の聞き間違いでないことはわかった。
…………いやマジか。
「私はセンパイのことが好きなので、困っていたら助けてあげたいんです」
「助けてあげる……か」
またもや瀬川さんとの出来事が脳裏をよぎる。
あの時和奏は俺にこう言った。
「陽向、私を、私だけを信用しなさい」
と。
莉子がおかしくなり、和奏が拗らせ、こうして後輩が擦り寄ってきてる状況で、俺は誰を信用したら良いのだろう。
彩芽は瀬川さんとは違い、最初から気持ちをオープンにして近づいてきた。
だから信用ができる……という訳でもない。
彩芽が嘘をついているという可能性もある。
むしろ、唐突に告白してきた分、そちらの可能性の方が高いはずだ。
「センパイ。私はセンパイのことが本気で好きなんです。私だってセンパイを独り占めしたいです」
…………これも嘘なのだろうか。
「でも、そのせいでセンパイが不快な思いをするのは嫌です。いつだってセンパイファーストでいたいですから」
…………これは嘘では無い気がする。
「どうですか、センパイ? 相談相手くらいにはさせてもらえませんか?」
もう俺は同じ過ちを繰り返したくはない。
自分の信用が裏切られる辛さは誰よりもわかっているはずだから。
でも、もし……もし彩芽が本当に信頼を置けるような奴だったなら、俺は一生後悔するだろうな…………。
「…………わかった。もし何かがあったら相談するから」
それはもう、分かりやすく表情を明るくする彩芽。
こんな子を無下にするなんて俺にはできなかった。
もし何かがあれば縁を切れば良い。
裏切られたらその時だ。
――――この時はそう考えていた。
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