第34話 解放されるリビドー


 僕の舌が、彼女の足の指を優しく撫でる。千聖お姉ちゃんの喉からは、甘く切ない吐息が漏れた。それは僕がこれまで与えてきた、どんな快感とも全く質の違う深い悦びの声だった。普段の理知的な彼女からは想像もつかない、無防備で純粋な快楽に身を任せるその姿は、僕の支配欲と征服欲を激しく煽る。僕は彼女が完全に溺れていることを確信し、夢中でその足に奉仕し続けた。


 その時だった。


 僕が夢中で彼女の足の指を舐めていると、彼女の体が突然大きくのけぞった。そして、信じられない言葉が、彼女の唇から荒い呼吸と共に飛び出してきた。


「コンドームなんて、いらないから! 早く、生で入れてぇ!」


 そのあまりにも生々しい、そして僕の理性を完全に破壊する言葉。僕の頭の中は一瞬で真っ白になった。コンドーム。それは僕たちの間に、理性と、責任という名の最後の壁として存在していたはずだ。しかし彼女は今、自らの欲望のままに、その壁を僕に壊せと命令している。


 僕は彼女の命令に抗うことはできなかった。僕の中に渦巻く、生の快感への渇望と、彼女を僕の種で満たすという究極の征服欲が、僕の理性を完全に飲み込んでいた。


 僕はその熱く硬いペニスからコンドームを荒々しく引き剥がした。それは僕の少年時代の最後の名残を、自らの手で引き裂く行為のようだった。そして僕は、彼女の開かれた足の間に、ゆっくりと、そして熱く僕自身を挿入した。


 コンドームという薄いゴムの膜を隔てていた時とは、全く違う、生の感触。温かく、柔らかい粘膜が、僕のペニスを直接締め付ける、そのあまりにも強烈な快感に、僕は声を失った。


 熱い。熱すぎる。僕の全身の血が、その膣内の温かさで沸騰しそうだ。僕のペニスが、彼女の体内で、ドクンドクンと力強く脈打つのを感じた。それは僕自身の脈動であり、僕の命そのものが、彼女の体の中に注ぎ込まれようとしている生命の鼓動だった。


 そしてその脈動は、やがて、抑えきれない快感の奔流へと変わった。


「あぁっ!」


 僕の喉から、断末魔のような叫び声が漏れる。そして、僕の熱い精液が、彼女の温かい子宮の入り口めがけて、勢いよく連続して注ぎ込まれた。


 絶頂と共に、僕の頭の中で、一つの考えが鮮明に浮かび上がった。


 これで、彼女は、俺のものになる。


 そのあまりにも身勝手で、そしてあまりにも強烈な思いが、僕の体を震えさせた。僕の心臓が、彼女を独り占めにしたいという熱い鼓動を刻む。僕の指が、彼女の滑らかな肌の上を滑り、その反応を確かめるように、ゆっくりと、そして熱心に撫でた。一度は静まった僕の欲望は、再び激しい衝動となって蘇る。僕は再び腰を動かし、彼女を快感の奔流へと導きながら、僕のすべてを、彼女の存在を形作る一部となるように、深く深く流し込んでいった。


 僕たちは何度も、何度も、限界まで体を重ねた。満たされては、また新たな欲望が湧き上がる。その繰り返しが、僕たちの意識を朦朧とさせた。彼女の身体が、僕の動きに合わせて、小刻みに震え、そして、大きく、大きくのけぞった。僕は、彼女の奥に、僕のすべてを、残りのすべてを、最後の力を振り絞って注ぎ込んだ。


 同時に、僕の視界も、白く染まっていく。


 絶頂の波が、僕たちの全身を、まるで津波のように飲み込んだ。僕たちは、互いの名を叫び、そして、意識を失った。僕は、彼女を抱きしめたまま、そのまま、深い、深い眠りに落ちていった。それは、二人の熱と、愛と、欲望だけが残された、静かで、永遠に続くかのような、夜だった。

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