第12話 ヌマルネコ

ヌマルネコ。


 ヌマルネコは、温暖な沼地に生息する猫である。

 その名前からマヌルネコと間違えられることも多いが、沼に入ることが好きなヌマルネコはマヌルネコより体毛が短い(ヌマルネコが好む沼の中が温かく、体毛の保温機能はさほど重要ではないためと考えられている)ので、見分けはつきやすい。


 ヌマルネコは、定住型と移転型、そして別荘型に分けられる。

 まず定住型。このタイプのヌマルネコは、生涯ひとつの沼に住み続ける。性格は温厚で同じ沼に住むヌマルネコとも仲が良い。しかし稀に同じ沼に入ったヌマルネコを威嚇し追い出してしまう個体もいる。

 次に移転型。こちらは沼から沼を渡り歩き、理想の沼を探すのに余念がない。ちなみにこのタイプは未開の沼を発見することがしばしばあり、ヌマルネコの生息範囲を広める役割があるのではと考えられている。

 最後に別荘型。これは本宅の沼を持ちつつ、期間限定で別の沼に住むタイプのヌマルネコである。安定と冒険を楽しむ能力が高いこのタイプが、ヌマルネコにはいちばん多い。


 どのタイプのヌマルネコも、とっぷりと沼に浸かっている時が、いちばん幸せを感じているようである。

 沼に浸かっているヌマルネコの表情は本当に愛おしいので、ぜひ何度でも見ていただきたい。

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