第7話 細犬
細犬。
『ほそいぬ』ではない。『こまいぬ』である。
細犬は小豆のような形状をした小豆サイズの小豆色の犬で、座敷わらしの住む古民家にひっそりと置かれた、誰も開けたことのない箱に住み着いていることが多い。
細犬という名前は、小さいという意味の『細かい』と、性格の細かさに由来する。
細犬の性格がよく分かる例として、筆者の家の箱に住む細犬を取り上げる。
筆者が初めて確認した細犬は、何年も使われていない漆塗りの重箱に住んでいた。
初めて重箱の蓋を開けたとき、細犬は筆者を見上げてから、とことこと重箱の隅に向かった。そしてその場でわんわん! と吠えたのだ。
筆者は当初、細犬の訴えがわからなかった。しかしよくよく見ると重箱の隅に埃が溜まっており、細犬は「埃を払って綺麗にして!」と訴えていたことが分かった。
筆者はすぐ綿棒で埃を取ったが、細犬は依然としてわんわん! と吠えている。
虫眼鏡で更に隅を確認したところ、本当に細かい細犬の毛が溜まっていることに気付き、爪楊枝で取り除いた。
文字通り重箱の隅をつついたことで、細犬はようやく満足したらしい。それからは丸い体を更に丸くして、昼寝を満喫し始めた。
以降、筆者は定期的に重箱の清掃に励んでいる。
ちなみに、細犬の生態は未だに解明されていない。しかし座敷わらしと生活圏が被っているため、細犬は座敷わらしのペットと考えられている。
本当にそうならば、食事の世話や散歩などは、座敷わらしが行っているのだろう。
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