第13話 RE:START

「BLACKCATS行こうよ」


「匠君も呼んで3人でSixFiveTwoのメジャーデビュー祝いと【アクリルの空に恋をした】のエンディング曲に抜擢されたお祝いしよ」


「BLACKCATS懐かしいよね覚えてる?」


「覚えてるに決まってるじゃん、3人で最初に集まったバーだよ?匠君が“アイリッシュバックファイヤー2つください!”って叫んでさ(笑)」


「俺、あれ一気して酔いつぶれたもん……胸、焦げたわ(笑)あの時、優輝ちゃんがタクシー乗せてくれたの、ちゃんと覚えてるよ」


「酔ってたくせに(笑)……でも、あの頃からなんだかんだでずっと一緒だったね、大雅君も匠君も」


「それが、今じゃ俺たちの曲が映画のエンディングで流れてるんだぜ?……正直、泣きそうになった」


「なってたよ。ちゃんと涙出てた(笑)」


「バレてたか〜……でも、匠も絶対感動してるよ、あいつああ見えて情熱派だからな」


「BLACKCATS、電話して席とっておくね。今日は、記念日だね」


「……ああ、最高の記念日だよ」


夜、BLACKCATSのネオンが静かに瞬く。


「おっそーい!待ちくたびれたぞ!てかさ、【DiverCityΔ】映画で流れた瞬間鳥肌立ったんだけど。泣いたよ俺も。感無量だわ」


「匠君、相変わらず声デカいよ(笑)」


「匠、優輝、乾杯しよう!俺たちの新しいスタートに!sixfiveTwoに!」


「それな!優輝ちゃん、今日は呑めよ?」


「今日は呑むよ、たくさん呑んで、たくさん笑う!」


グラスが鳴る。再結成された“ミーティアライト改め sixfiveTwo”、新たな物語は、まだまだ続いていく。


「優輝ちゃん久しぶり結婚して以来だから結構経つね!」


「来るの遅いよ!!、ほんと久しぶりだね笑sixfiveTwo結成おめでとううちの旦那よろしくね」


「任されましたビシッ!」


「匠、不安だなぁ! ォィ」


「アイリッシュバックファイヤー2つ下さい!!大雅!!あの頃みたいに呑むぞー」


「またこれかよ苦笑ゴクンゴクンってなんかテンション上がるなぁ」


「気持ちよくなってきたかも」


「2人とも大丈夫?大雅!貴方のことつれて帰るのわたしなんだからね酔っ払い過ぎないでよ」


「ラブラブだね」


「おんぶして帰ってよ笑笑

男の子が産まれたら慈武

優しく強い子になるように

女の子が産まれたら想來

一途に好きな人を空に思えばやってくる

って意味の名前にしようかな?

って思ってる!

たくみぃ実は今、6ヶ月なんだぁ」


「馬鹿ぁ!重いに決まってるでしょ大雅、家帰るよ!!匠君も気をつけて帰ってね!あっ大雅、外見てよ!雪降ってたんだ、積もってるね」


「だってクリスマスだよ冬だもん雪くらい降るだろう」


「匠君も早くいい彼女探しなよ」


「………おめでとっ!!俺もすぐ可愛い彼女見つけるぜぇ(あれからずっと好きだったんだぜ笑笑幸せにな優輝ちゃん笑)」


また冬の季節がやってきたが、

香水混じりの人混みの中

ふわふわと舞い降る雪の匂いを

匠はこの先忘れられないだろう。


「雪なくならないでほしいな

春になんてならなくていいよ…」


BLACKCATSを出ると切なげに匠はひとりタクシーに乗り込みパーカーを深く被り運転手に行き先を告げ眠ろうとした、タクシーのラジオから【君が僕を忘れても、】が流れてきた。自分の気持ちと重なり涙が溢れそうになって下を向き顔を隠した。



BLACKCATSを出た長山匠は、タクシーの中で眠ることなく、窓に映る自分の顔をぼんやりと見つめていた。


ラジオから流れていた【BLACK GHOST】が静かに終わり、パーソナリティの柔らかな声が流れる。


BLACK GHOST

歌詞

夢の中を泳ぐ僕は

ブラックゴースト

小さな心一つ

抱えて生きている


君には見えないだろうけど

僕も君のいる世界で

生きたいよ


明け方曖昧に白む空

逆さまの僕を見つけても

僕はネームレス


どこからか嘲笑う 声

赤いスティグマ


拭い去って アンチェイン

鎖を引きちぎる

僕は水槽の中

街の巨影に溶け込む


君に出会って今感じる

確かに生きていると


こころ一つになれるのなら

他に何も望まない

僕の体にも赤い血が

巡っているのに


君が見ている夕焼け空と

青に沈みゆく小さな太陽が

同じ景色に見えてるのか

僕は困って笑うしかないのさ



「今日のゲストは、ジオラマフィルターズのボーカル天野光莉さんでした。リスナーの皆さん【夕暮れジェリーフィッシュ】ぜひ聴いてくださいね…」




匠の目がふと、開き直ったように細くなる。


「春…か。」



優輝の幸せを、心から祝福できている。

それはきっと本当だ。でも、心のどこかでは

まだ、あの夜の雪の匂いを忘れられずにいた。

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