四章

 〜砂漠にて〜

「やっと、着いたか」

「ワンワン(大変だったな)」

「ああ、ここに来るまでに三時間、か」

「ワン(ああ)」

「ちょっと、思い出してみるか。……そうそう、メルトが声を上げたんだったよな」



 〜回想中〜

「これは、すごいわね!!」

 メルトが歓喜の声を上げていた。

「こ,こんな、鋼鉄な、ものの、腹部に居続けるって、怖い」

 ラームがブルブル震えている。

「うむ、ここからではやはり重銃が上手く扱えない。ケビン、まだ着かないのか?」

 リリーが不満そうに呟いた。

「ワワウ(やっぱり移動にはこれが一番いいな)」

「そうだな、ポチ。自動車に乗れるなんて、ついているな」

 俺とポチは満足していた。スムーズに移動できるこおとはとてもノンストレスだ。

「もっとスピードは出せないの? というか、どうやって動かしているの? 教えて」

「こら、メルト。邪魔をしてはダメだぞ。これ以上、スピード出すって、そんな鬼畜なこと、ケビンに、させてはいけない、ぞ。絶対、だぞ」

「ラームはただ、怖がっているだけじゃない」

「な、何を!!}

「私は、とりあえず、目的地に到着さえすればいいけど。ああ、早く撃ちたいわ」

「ワウワウ(まぁ、今は安全運転しておこうぜ)」

「まだ、ラームが慣れていなおいようだからな」

 ラームをこれ以上不安にさせないようにも安全運転を心掛ける。そして、四人と一匹は砂漠地帯へと進んでいった。

「ワワウ(それにしても、町長、すごいやつだな)」

 「ああ、そうだな。これを作り上げるなんてすごい。しかも一人で組み立てたって言っていたからな。脱帽する」

「ワンワンワワウ(町長って何者なんだろうか?)」

「この任務が終わったら、訊いてみよう、うん」

「ワンワン(そうしよう)」



 町長が作り上げたもの、それは自動車(自立型四輪駆動型車輪機械、通称自動車)。町長が若い頃に設計図を手に入れ、旅人から道具屋や部品を融通してもらい、地道に時間を費やして、完成させた一品である。

「これを扱うには腕がそうとう必要じゃろう。しかし、この町には乗り手がおらんのだ」

 ギルド長のオッタブもこの自動車の存在を知っていた。しかし、オッタブも運転する技術を持っていなかった。だからそのときが来るまで、自動車は封印されていた。

 その封印を破る日が今日だったってことだ。

「ケビン、お前段ならばこの自動車の性能を十二分に発揮できると信じておるからの。だから、無事に生きて帰れ。そしたら、酒場で酒を飲みあかそうぞ」

 町長はそう言って、豪快な笑いをした。

 町長は俺の要望を聞いてくれた。必ず生きて帰ると約束した。約束を果たすためにも、俺達はこの作戦を推敲する。そして必ずやり遂げて、町に帰るのだ。



「ケビン、どうやってこの鋼鉄の馬車を扱っているの? というか、どこで学んだの?」

 メルトの質問に、

「砂漠の向こうでは、このような自動車を習う研修場があるんだ」

 と、返答しておいた。

「は、は、は、早く、目的地まで行こうよ。じゃないと、酔って吐きそう……うえぇ」

 ラームは青い顔をしている。

「そこ、開けておくあら、そこで酔いをさましな」

 俺は後部座席の窓を全開にする。

「ケビン、この空いたスペースからでは狙撃が難しいぞ」

 リリーは運転席を乱暴に揺らした。

「リリー、今、運転中。俺の身体を揺らすな。横転するぞ。この自動車が」

「うむ、それはすまない」

「ワウワウアウ(まだ、砂漠に到達していないのに、苦労するな)」

「ああ、全くだ」

 ポチの意見に賛同した。だが思い返してみれば、初めて自動車に乗ったときの気持ちが甦っていく。あのときはこの三人のように、はしゃいでいたな。

「振り回されないよう、しっかりなにか掴まっておけよ。それでは、行くぞ!!」

「ワンワン!! (行くぜ!!)」

「キャー、加速したよ〜」

「安全、運転で、お願い、します」

「早く、目的地に着こうぞ。ぶっ放したいんだ」

「わかったから、皆、あんまり動くなよ。集中したいんだ」

「ワンワン(前だけを見ておけよ)」

 結局はガヤガヤと話しながら、進んでいった。


 そうやって、ガヤガヤしながら、砂漠までの道ほどを踏破していく。

 自動車が通ると、大抵の動物は逃げていった。その騒音と巨体に驚くのであろう。たまにクラクションを鳴らして、威圧した。クラクションの音で、さらに動物は逃げていく。クラクションを鳴らすと、三人はびっくりした。特にラームは涙目だった。

 砂漠につくまでに三人には仮眠を取ってもらうことにした。砂漠では何が怒るか分からない。とにかく、身体を休めてもらう。

「興奮して、寝れない」

「酔って、眠れない」

「ちょっと、狭くて、眠れない」

「瞼を閉じるだけでもいいから、寝ていてくれ」

 そう俺は助言した。

「ワンワンワン? (ケビン、俺も寝たほうがいいか?)」

「ああ、ポチも寝ていてくれ。そのときがきたら起こすから」

「ワン(了解)」

 そして、自動車で運転を始めて、三時間が経過し、砂漠地帯へ到着した。

 自動車を停車し、俺は運転席から出て、背伸びをして、身体をほぐす

「ワーウー? (ついたか?)」

 ポチが眠たそうに訊いた。

「ああ、ついたよ」

 運転するだけで、ごっそりと体力を奪わた気がする。



 〜回想終了〜

「前半、大変だったな。後半は皆が寝てくれたから、助かったよ」

「ワンワンワン(お前さんも疲れを取るために寝たらどうだ?)」

「いや、もう目が覚めちゃって、寝るに寝れない」

「そ、そうか」

「それにしても、砂漠地帯に戻ってくるとはな」

「ワンワンワンワン、ワンワン(ついこの間、砂蟹を倒していたのに、な。また帰ってくるとは……)」

「俺もだ。想像つかなかったよ」

「エンジン音がまだ鳴り響いていたのを、ポチが耳にして、

「ワウワウ? (エンジン、切らないのか?)」

 と、質問した。俺は、

「今、切ると、またエンジンをふかすのに時間がかかりそうだから、まずは周囲の安全がわかってからにするよ」

 と、答えた。

「ワウ(なるほど)」 

 とポチは応えた。

「とにかく、周囲の探索を始めるか」

「ワンワン、ワン(少しは休んだ方がいいだろう。安め)」

「そうか。ならば、お言葉に甘えようかな。ポチ、後は頼んだ」

「ワン(任せろ)」

 目を瞑り、運転の疲れを少しでも取ることにした。目をつぶるだけでも精神的な披露が消えていく気がした。

「ケビン、着いたのかい?」

 メルトはあくびをしながら起きてきた。

「ああ、砂漠地帯についたぞ」

「お疲れ様。……回復魔法(ケアル)はいるかい?」

「……一応、かけてくれ」

「ハイよ。回復魔法(ケアル)」

「ふう、だいぶ楽になった。ありがとう」

 メルトはラームを見た。ラームは青い表情、というか、泡を吹いている。

「ラームにもかけておこう。さて、ケビン。ここに、例の魔法石持ちの黒鳥がいるわけだね」

 メルトは、ラームに回復魔法(ケアル_と状態異常回復魔王(エスナ)をかけながら言った。

「ああ、これを見てくれ」

 SMFOで例の黒鳥の写真を見せた。

「こいつが、今回のターゲットだ」

「……小さいね。小鳥サイズじゃん。これなら楽勝、楽勝」

「巨大化、してなければいいんだけど」

「巨大化したとしてもたかがしれているよ。だから、安心しんさい、ケビン」

 メルトに治してもらったラームが、

「やっと、地面に触れられる。地面、最高」

 身体を大の字にして、全身で地面を堪能していた。

「地面、万歳。もう、乗りたくない」

「ラーム、帰りも乗るのよ」

「……ああ、そうだった」

 メルトの発言に青くなるラームであった。

「さぁ、ここなら、この重銃でぶっ飛ばせるわ。獲物はどこだ?」

 リリーは血走った目で獲物を探している。

「ワウワウ? (このパーティで大丈夫か?)」

「うーむ、わかんない」

 俺とポチは同じことを思ったようだ。

「とにかく、ここで、黒鳥を見つけ次第、討伐するってことで」

 SMFOで砂漠にいた黒鳥の写真を二人にも見せた。

「これはSMFOだよね? たしか、ギルドには一つしか所持していないって言っていたような……」

「ラームはまじまじと観察した。

「これが今回の獲物か!! 了解した!!」

 リリーは、獲物を探し始めた。

「これは俺の私物だ。旅をするには必須なんだからな。リラクトの町に来るまでに買っていたんだよ」

 と、伝えておく。

「さて、それでは、黒鳥探しをしましょうか!!」

 メルトがそう言ったので、

「ギャンブラーの私はどうすればいいのだろうか? 運試しをするくらいしか役に立てないんだが」

 ラームは自分の存在意義を問い、

「見つけ次第、ぶっ放すぜ」

 リリーは重銃をぶっ放す準備をした。

「ワウワウワ(なんとか、なるよな)」

「多分な」

 俺とポチは迎撃態勢へと移行した。それから、四人と一匹は周囲を警戒した。そして、その黒鳥は、見つかった。

「デカすぎるのではないか?」

「本当にあれを討伐するのかい?」

「やはり、ギャンブラーの私には、無理だよ」

「今すぐにぶっ放してもいい?」

 例の黒鳥は、空を飛翔する。ただ、以前のサイズとは段違いに大きすぎて戦意がわかない。

「たしか、魔法石を持つモンスターは他のモンスターの肉を食すことで魔法石を

大きくして、そm魔法石の大きさに比例して、身体を大きくするって、リンダルが説明してましたね」

 メルトがリンダルの言葉を伝えてくれた。

「そして、食したモンスターの血肉に応じて、身体を巨大化するかもって、言ってました」

 その言葉を聞いて、俺はとある仮説を思いつく。

「と言うことは、俺があのとき砂蟹の肉を与えたから、砂蟹と同じくらいの大きさになっっということ、か……? 砂蟹の平均はサイズは一五〜一六Mだぞ!! あの小鳥サイズだったのが、巨細化した原因って……俺……なの……か?」

 俺は砂上で項垂れた。orz(残念)というポーズになっていたかもしれない。

「ワウワウワ(落ち込むのは後にしろ今は戦うぞ)」

 ポチの叱咤激励に気合を入れるべく、頬を叩いた。

「よし、みんな、行くぞ。とその前に、作戦会議だ!!」

 自動車に乗り、逃げながら作戦会議を始めた。



 作戦会議をした結果、巨大すぎて、戦うというよりかは、逃げる一択しか選べない、という結論に至った。黒鳥は砂蟹の肉を食ったことにより、二〇Mくらいの巨大怪鳥になっていた。額には赤色の魔法石が埋め込まれていた。

「「「「逃〜げろ〜」」」」

 黒鳥はその巨体に加えて、当然のように魔法を使ってくる。とくに、全身を炎属性で包み、炎の鳥化身として体当たりしてくる攻撃に困っていた。

 魔法が強化された攻撃、移動速度により、『立ち向かう』前に、『撤退』を余儀なくさせられる。攻撃しようと構えれば、すぐに空中にフェードアウト。隙を見せれば、炎属性魔法で迎撃し、最後は超高速で滑空してくる。

 初見では、どうしても、勝てない。だからって、何度も立ち向かっていけない。それは自動車が一回でも攻撃を当たったら、無事に帰ることが困難になる。

「撤退だ。撤退だよ」

 俺は、素早く指示を出した。攻撃しようとした、リリーガメルトとラームがむりやり引きずって、自動車に乗り込む。

 そして全員が乗ったところで、運転する。

「カーカーカーカー」

 黒鳥は鳴きながら飛翔してくる。

「カーカー、うるさいよ」

 メルトは苛ついた。メルトが一番狙われた回数が多くて、逃げるしかできなかったからだろう。とてもうざったそうにしていた。

「ギャンブラーって運を上げるくらいしかできないよ」

 ラームは自分の存在意義についてしょぼんと考えていた。

「とりあえず、安定した場所がないと、打てないわね」

 リリーは分析していた。

「ワーウー? (こんなんでいけるのか?)」

「わっかんねえ」

 雲行きが悪くなってきたようだ。

 それでも、っこであの黒鳥を討伐しなければ、狂騒化(スタンピード)は終わらない。

 …………どうする?



 今まで自動車で逃げること、一時間。どうやら、上手く撒いたようだ。

「さて、どうするかだよな……」

 砂漠地帯から逃げに逃げ、どうにか黒鳥から逃げおおせた、俺たち四人と一匹。

「みなさん。回復魔法(ケアル)かけますね? はい、かけました」

 みんなの体力は回復したが、気力が戻ってこない。

「うーん、砂漠地帯はもはや、あいつの縄張りだから、近寄れば、襲われるぞ」

 ラームは、願がけにサイコロで一人丁半しながら言った。

「狙撃ができればいいけど、私の重銃はそこまで射程がないのよね」

 リリーは重銃の手入れをしていた。

 俺は、みんなの職種を改めて振り返った。

「白魔道士、ギャンブラー、重銃士か……。ラーム、ギャンブラーの攻撃って、何をするんだ?」

 ラームは非常に小さな声でボソボソと言った。

「えっと、天からの運試しっていうスキルがあるんだけど、これはサイコロ一個振り、出た目に対応して、天からアイテムが振ってきたり、罰が与えられたりするんだ。つまり、博打スキルだっていうこと。これくらいしか攻撃がないね」

 攻撃さえも運頼みの博打だということに恐れ入る。

「うん、それは、難しいね」

 とりあえず、今回は使えなさそうだと、告げた。

「だと思っていたよ」

 ラームはしょぼくれて、一人丁半をし続けた。

 次にメルトに訊く。

「メルト、白魔道士って攻撃魔法はないのかい?」

「うーん、白魔道士って、サポート特化と攻撃特化の二種類あるんだけど、私はサポート特化だから、攻撃魔法はあまり取っていないかな」

「そうか、残念だ」

「力になれなくてごめん……」

 最後にリリーに訊く。

「リリー、今持っている重銃ならば、どれくらいの距離ならば攻撃できるんだ? 可能な範囲でいいから、教えてくれ」

「えっと、だいち五〇〜六〇Mかな? それくらいならば可能だと思う。ただ、そのためには重銃を完全に固定しなければならなし、固定したら逃げることはできない。こっちが決められなかったら、完全にアウトだね」

 えっへん、と胸を張るリリー。

「ワウワウ(何か見出したか)」

 ポチは俺に呼びかける。

「うーん、何かできそうな気がするんだけど、いまいち閃気が来ない」

「ケビン、うちらは囮なんだろう? あの黒鳥は倒す必要があるのかい?」

 メルトの質問に、

「ああ、あれは人工的に作られたモンスターだから、倒した方がいいって、メンダルトリンダルに助言を求めた際に言っていた」

 と返答した。

「どうして、人工的ってわかったんだ?」   

 ラームの問いに、

「これを見てくれ」

 とSMFOで先ほどの黒鳥の画像を見せた。

「「「???」」」

 三人は首を傾げる。

「ちょっと拡大して、ここ。この赤色の魔法石。トリリアントカットしてあるだろう?」

「うーん、確かに原石ではなくて、磨かれているみたいわね」

「というか、ケビン、よくこの形がトリリアンカットという知識があるね。すごいね」

 ラームの感嘆に、

「メンダルとリンダルから教わったんだよ。あの二人、魔法石の収集も趣味らしいからね」

「ワンワンワオーン(魔法石のコレクションをドヤ顔で自慢されたよ)」

「ポチが呆れた表情を浮かべていた。あのときの二人のウザったさを思い出したのだろう。

「この魔法石は人為的にカットされた魔法石。つまり、人工物だと思われるこのモンスターは人工的なモンスターだから討伐せよ、とギルド長は言っていたよ」

「そういえば、そう言っていたな」

 メルトはパチパチと目を見開き、

「忘れていた」

 ラームはしょぼんとして、

「囮役には違いなんだから、別にいいでしょ。役割は果たしている」

 リリーは重銃の銃口を黒鳥に向けていた。

「ワウーウー(大丈夫かな、本当に)」

「まぁ、いけるよ」

 ポジティブに考えることにした。



 とりあえず、作戦を考える。

「(メルトは白魔道士、ラームはギャンブラー、リリーは重銃士。これらを活かすための作戦は…………・)」

 ブツブツと小声で地面に考えを小枝で書いていく。

「(ケビン、おかしくなったのかな?)」

「(いや、ケビンは作戦を考えているようだぞ)」

「(私たちを活かす作戦ってなんだろうか?)」

 三人はこそこそと話している。しかし、聞こえているんだが……。

「ワウー(集中、集中)」

「ああ、悪い。集中だな」

 そうやって、考えている内に、

「よし、これでいこう!!」

 立案できた。

 早速三人に一匹に内容を話す。

 まず、メルトが可能中あ義理、ラームとリリーに運以外の要素を、魔法でギリギリまで上げる。次に、ラームのサイコロを加工して、重銃の団が何に仕立て上げる。そして、リリーその弾丸で黒鳥の赤色の魔法石にぶつけ、博打効果で天罰を引き起こすという作戦だ。

「いろいろと穴がある気がするけど、サイコロを弾丸にって、できるの?」

 当然のリリーの問い。

 俺は、そこら辺にある、何も変哲のない石に、

「ありがとうございます(石よ、変われ)」

 変形魔法をかけた。

「まぁ。ざっとこんなもんだね」

「「「おおー、(パチパチ)」」」

 拍手が鳴る。

「サイコロ程度なら弾丸への変形は可能だ」

「もう一つ、射程距離はどうすんの? 今のままでは、届かないと思うけど」

「それも考えている。俺が囮になって、あの黒鳥を引き付ける。射程圏内になったら、あの赤色の魔法石にぶち込んで欲しい」

「そうとう、危険な目に遭うけど、いいの?」

「ああ、大丈夫だ」

 俺は親指を立てた。

「それでは、ラームとリリー。魔法かけるねそれ!!」

「あー、今なら博打で連戦連勝できそうな気がする〜」

「ラーム、サイコロをケビンに渡して」

「了解」

 俺はラームのサイコロに

「ありがとうございます(サイコロよ、銃弾になれ)」

 一発の弾丸に変化させた。

「リリー、これはたった一発だ。一発でしとめてくれ」

「了解、ケビン」

 そして、作戦実行する。



 俺は自動車に乗り、黒鳥を引き付けている。

「ガーガー、ガーガー」

 黒鳥は自動車をついばむように、その鋭く尖った口でつつこうとする。俺は持てる技術を使って回避する。

 避ける。避ける。避ける。避ける。避ける。

 狙撃ポイントまで、後一〇M、九M、八M

五M、三M、二M、今。

 急停止、からの後進。

 黒鳥は一瞬、姿を見失うはずだ。

 その一瞬の間に、

『ズカン!』

 その銃声は鳴り響いた。

 しかし、その弾丸は、外れた。

 黒鳥はその場をホバリングしている。獲物がどこにいるのか探っているのだ。

「リリー、外れた、ぞ! 失敗だ、退却するぞ!!」

「安心しろ、一発目はこの重銃の予備弾丸だ。本命は、これだ!!」

『ズギャン!!!』

 本命のサイコロ弾丸は黒鳥の赤色の魔法石に当たり、ランダムで事象が引き起こされた。今回引いたのは、天罰であった。

 急に、黒鳥の頭上に黒雲が立ち込めて、雷撃が黒鳥の赤色の魔法石に引きつけられるように、落ちた。

「ギャーギャー、ギャーギャー」

 エネルギー赤色の魔法石の吸収量を超過して、魔法石をを粉々に破裂した。

 魔法石の破裂とともに、黒鳥の身体は小さくなっていった。

 撃破である。

「よっしゃー」

 俺は、声をあげた。

 手を突き上げた。三人も手を突き上げていた。

「ワンワンワンワン!! (やったな、ケビン)」

 ポチはダッシュで迎えに来てくれた。

「ありがとう、ポチ」

 ポチの頭を撫でておいた。

 その後、あの黒鳥ほどではないが、人工的に作られた魔法石が埋め込まれたモンスターたちを駆除していった。ここで、ギャンブラーのラームによる、確率操作(一日に一度だけ確率を百%にさせる)というスキルでモンスターが襲いかかる場所を誘導して、全滅にしてやった。

 そして、七日後。

 狂騒化(スタンピード)は収まった。SMFOで辺りをスキャンして確かめたが、モンスターはいない。

「やっと終わった」

「くたくただよ」

「もう終わりか? 撃ちまくったからよしとしよう」

「ああ、帰ろう」

 そして、自動車に乗って、町に帰った。

 町では町民が冒険者たちを称賛していた。

「おー、ケビンたちじゃん。お疲れ!!」「無事で良かった」「こっちは死者はいないぞ」「無事だったぜ」「酒場に来いってオッタブさんが言っていたぞ」「宴会だ」「飲み放題だってゴッホも言っていたぜ」「やったぜ!!」

 みんなは酒場に急行する。メルトもラームもリリーも酒場に急行した。

「ワンワンワン(酒場に行くしかないね)」

「ああ、行こうか」

 酒場の中では、酒が振る舞われていた。俺も酒が入ったコップを持った。

 そしsて、そのときを待った。ギルド長が現れて、

「我々は狂騒化(スタンピード)を脱した。我々の勝利だ!! 存分に飲んでくれ。支払いはギルドが受け持つ。皆、ご苦労だった」

 酒が入ったコップを掲げて、

「乾杯!!」

 と音頭を取った。

『乾杯!!!』

 続けて皆が言った。

『くう`、美味んめぇい〜』

 皆の一声がそれだった。そしてそのまま酒を飲めや歌えやになった。今回の負傷者は多々いるがあ、死亡者は零だ。

「いやぁ、まったく、今回、冒険者諸君はよく働いてくれた。とくにケビン、お前さんだ。お前さんが町長のあれを使って、砂漠エリアまで囮に行かなければ、我々は7日間

、防衛することができなかった。ありがとう!!」

 ギルド長のオッタブが礼を言う。

「いえいえ、今回の成果はみんなのおかげですよ。みんなが各々のやるべきことをした。それが成果につながった。それでいいのです」

「ケビン…………お前は謙遜するな。飲め飲め、もっと飲め」

 オッタブは俺のコップになみなみと酒を注ぐ。

「おう、やろうども。報酬を期待してくれよ。ギルドから特別報酬出すからな。だから、今は飲め。飲みまくれ!!」

『おう!!』

 喧騒と笑い声と酔いつぶれた姿。俺はじっくりと、ゆっくりと酒を楽しみながら、その光景を目に焼き付けていく。

「ケービ〜ン、あんた〜私たちの仲間にならな〜い?」

「メルト。相当酔ってるね。自分に状態異常回復魔法(エスナ)をかけないのかい?」

「それじゃ〜、酔う意味がなくなるでしょ〜。あえてかけてないの〜」」

「そうなんだ」

 メルトはラームとリリーを呼ぶ。

「おう、ケビン、やっぱり仲間になろうぜ」

「重銃の良さを教えます〜よ」

 二人ともメルトほどは酔ってはいない。だから、

「言っておくけど、俺は旅人だ。だからいつかはこの町を出発するつもりなんだ。いつまでも在中するつもりはない」

 今後の予定を伝えた。

「ええー、ケビン、行っちゃうの?」

「この町にはもう来ないのかい?」

 ラームとリリーは急に真顔になる。

「うーん、また来てもいいけど、本来は俺の師匠を探しに来ていたんだ。そろそろ、情報屋に行って、情報を聞くつもりなんだよ」

「ケビンんの〜師匠〜て、男? 女?」

 悪酔いしているメルトがのしかかってきそうになった。ラームとリリーがそれを阻止する。

「女性だよ」

「なんで? 探しているの? 何かあるの?」

 ラームの問に俺は、

「…………まあ、いろいろとあるんだ」

 言葉を濁した。

「ワウワウワウ(ケビン、そろそろ、お開きだそうだ)」

「ありがとう、ポチ」

 ぽちの頭を撫でだ。

「あ、ポチちゃんだ。私も撫でてい、う、うぉおおおおおおおおおお」

「ワウー(うわ、いきなりゲボ吐いたぞ)」

「メルト、やはり、酔いすぎですよ。リリー、ゲボ処理頼む」

「えー、また?」

「立ち位置変わりますか?」

「いや、いい。まだ掃除する方がいい」

 メルト、あんた、何をしてきたんだ? ゲボ処理の方がいいということは、相当やばいことになるのか?

「それでは、ケビン、またな、ほら、メルト、行きますよ?」

「ケビーン、またーね」

「ああ、メルトもまたね」

 そして、リリーと一緒にゲボ処理をした。といっても俺の清掃魔法ですぐに綺麗にした。

「助かったよ、ケビン」

「メルト、大丈夫かな? あれ以上の醜態をさらすことってあるのか?」

「…………まぁね」

 しばしの間、沈黙。とても気になった。

「私も行くね。ありがとう。じゃあね」

「ああ、またな」



 あれほどどんちゃん騒ぎしていたのに、解散はあっという間だった。

「ケビンさん、無事で良かったです」

「ケビン、よくぞ、やってくれたよ」

 双子姉妹のルインとマインが労いの言葉をくれた。

「ありがとう。二人とも無事のようで良かった」

「ケビンさんが戦っている間、私とマインは避難していました。何もできないってこんなにも無力なんですね」

「ケビンが戦っている。それだけで励ましになった。それで、自分が守られている側二なんだなって、わかったから……」

 二人は同時に言った。

「「私たちを弟子にしてください」」

「…………」

「「…………」」

 その視線に本気が込められていた。少なくともそう感じた。

「両親とは話し合ったのかい?」

 ゴッホとレインさんが許すとは思えないが、一応、訊いた。

「ええ、話しました。何度も何度もダメだった父に言われました」

「だけど、ここで今までの生活に戻れば、私たちは何も変われない」

「ケビンさん、あなたが教えてくれた、感謝を極めること、がどれくらい大変か、一端だけど理解したつもりです」

「少しだけど、わかってきました。だからこそ、私とルインはあなたについていきたいんです」

「「あなたが、私たちに可能性を示してくれたから。あなたについていきたいんです。あなたの元で教えを請いたいのです」」

「…………俺は、焚き付けてしまったのか……」

 しばし考えた。弟子を取るということは、その人の人生、運命をも巻き込む行為だ。俺の指導方針次第で、良い方向にも悪い方向にもつながる。弟子を取る覚悟と責任が必要だ。

 ただ、おレアh二人の願いを無碍にはできなかった。俺が師匠に弟子入したのは彼女たちよりももっと年齢が下だった。かつての自分が必死に頼み込んで、くらいついて、弟子にしてもらった。

 その気持ちを思い出した。

「両親を説得できたなら、改めて来なさい」

 二人の表情が明るくなった。

「「「はい、必ず説得します!!」」



「ワウワウ? (いいのか?)」

 ポチは耳を動かした。

「ワウワウワワワ(あの二人を連れていくそんな暇も時間もないぞ)」

「わか会っている。だから、明日、あの人に会いに行く」

「ワウー? (あの人?)」

「そう、あの人だ」

 冷たい水で酔いを覚ましていく。

「あれがあればば、解決する」

「ワウワウー(まさか、手に入れるということか? 本気で?)」

「手に入れたのならば、今後の旅が助かるのだから、何としてでも手に入れる」

「ワーウー(むちゃだけはするなよ)」

 落ちは眠った。

「ありがとな」

 ポチの頭をゆっくりと撫でた。

「もう少しでまた度に出る、か……。結局師匠はどこにいるのだろうか?」

 ここに来るまでに師匠の遍歴を辿り、師匠がして来たことを知った。

 あるときは、村を救った。あるときは町で商売をした。またあるときは都会で用心棒として雇われ、またあるときには国家とガチンコでやり合った。

 どれが本当なのか、そして嘘なのか、見分けがつかなかった。

 だから、師匠と再会して、こういってやりたい。

「師匠は、何がしたいにのですか?」

 と。

「師匠と別れた三年間で何か心境の変化が起きたのだろう。そうとしかいえない」

 そう、判断した。

 明日、情報屋から情報を聞く。

 そう思ったら、眠たくなったから、

「ありがとう(光よ、お疲れ様)」

 消灯魔法で高原を消して、眠った。



 翌朝。

 ポチに起こされ、鍛錬をしに外へ向かった。

 鍛錬をしない一日は調子がでない。

「ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます……」

「ワウワウワー(ありがとう)。ワウワウワー(ありがとう)……」

 感謝しながらの素振りは回を重ねるほど、上手くなっていた。威力、太刀筋、そして、姿勢。感謝を言うことでそれらが少しずつ、うまくなっていく。

 もう何万回も言い続けて、行ってきた動作だ。

 ポチはイメージトレーニング×感謝で効果を上げている。

「ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます……これで千回はやったか」

「ワーウ(俺もイメトレ終わったぜ)」

「そろそろ、朝飯にするか」

 鍛錬をやめようとした、そのとき、

「ケビン」

「ケビン」

 双子姉妹のルインとマインが現れた。



「え……俺がゴッホさんと腕相撲対決をするって?」

 話を聞いても、理解が追いつかず、鸚鵡返しに返答してしまった。

「父さんに勝てば、娘たちを連れて行ってもいいって」

「父さんに負けたら、娘たちはこの町にいさせるって」

「どうしたら、そんな話になるんだよ」

 ルインとマインは、

「ごめんなさい、ケビン。話がこじれちゃった」

「ケビン、ごめん。説得しきれなかった」

 と謝罪した。

「……まぁ、本気で弟子になりたいんだってこと、熱意は伝わった。後は、俺がゴッホさんに勝てばいいんだな?」

「ワウワウ? (勝算はあるのか?)」

「うーん、あの筋肉に対してやれることは時間を長引かせることくらいかな?」

「ワー(そうか)」


 全ては、俺の腕にかかっている。

「「本当に弟子になりたいんだな?」

「「はい」」

「良い、返事だ」

 俺は、頬を両手で叩き、喝を入れる。

「それじゃあ、やってみるか。勝っても負けても、文句は言うなよな」

「「はいっ」」

 ルインとマインは嬉しそうな表情を見せた。

「よし、それじゃあ、まずは朝飯を食べに行くぜ。今、酒番に行ったら気まずいから、料理屋に行くぞ!!」

「ワウワウー(飯だー)」



「よ、ケビン。あんたゴッホと腕相撲対決するんだってな?」

 料理屋の店主アンシュラが朝食セットを配膳してくれた。

「ありがとう、アンシュラ」

「おおよ。で、いつ腕相撲対決するんだ?」

「今夜だ」

「そりゃあ、双方、気合入りそうだな!!」

 アンシュラはカッカッカッ、と笑った。

「この町に住む者ならば、まずゴッホにかけるね。俺だってそうするよ。見ているだろう? ゴッホの腕は自信の太ももよりも大きいらしいぞ? あり得ないよな?」

「…………勝てる気がしなくなってきた」

 朝食セットにあった目玉焼き、味がしない。

「あのゴッホは親バカだからな。娘に関連することならば、マジになるよ。ケビンがたらしこんだ、と怒っていないのは、お前さんの本質が良い人だからだ。もしも、お前が悪い

ひとだったなら、一発は殴られているよ」

 ほれ、おかわりだ、と目玉焼きをもう一皿くれた。

「勝ち目はあるのか?」

 その質問には、

「あればいいがな」

 と、弱気な受け答えをしておいた。

「なんだ、ケビン、自信ないのか?」

「まぁ、三割しかない」

「三割あれば十分だな、カッカッカッ!!!」

 うと、目線を下に向けると、ポチが、

「ガツガツガツガツ(やっぱりうめーなー)」

 と朝飯を猛然と食らっていた。

 ポチはいいよな〜、と感じた。



 料理屋を出た後、情報屋に向かった。

「これはこれは、ケビンさん。情報を仕入れましたよ」

 情報屋のクラリストがニッコリと笑っていた。

「それで、求めるものが入ったのかい?」

「はい、その人物は二年前のことです。この町に旅人がやってきました。名前はカナリア……」

 そして、情報屋のクラリストから、全ての情報を頂いた後、俺は報酬を渡した。

「おお、こんなに、ありがとうございます」

「なに、報酬はしかるべきところに、行き渡らせないといかんのでね」

 俺は情報屋を去った。



 情報屋から出るとガスマスクの男がいた。そういえば、この男。この町に初めて来たときにもいたし、何かと遭遇していたような気がする。

「お前さんは、誰だい?」

「シュコー…………」

「何か用かい?」

「シュコー…………」

 何も答えない。

「どうして、ガスマスクなんてしているんだい? 俺になんか用かい?」

「…………」

 何も言わないから、その場を立ち去ろうとした。

 そのときだった。

「狂騒化(スタンピード)の元凶はまだ終わっていない」

「えっ?」

 非常に小さな声でボソッと言われたから、思わず聞き返した。

 しかし、そのガスマスクの男は、それっきり何も言わず去っていった。

 狂騒化(スタンピード)の元凶はまだ終わっていない。

 どういう意味か、そのままの意味なのか、困惑あうる俺。

「ワンワン(とにかく行こうぜ)」

 ポチは相変わらずマイペースだった。今回はそのマイペースに救われたのだと思う。

 そして、俺とポチはとある人に会いに行った。

 そこで、交渉を成立させた。

 その際にその人物と握手をした。

 その握手を絶対に忘れないと、後の俺は誓った。


 酒場に行くまでに俺は現在地を確認することにした。

「えっと、リラクト野町にて師匠はいない、か。二年前にはこの町にいたようだったけど、既に出て行っている、のか」

「ワンワンワン? (師匠は何がしたいんだろうか?」

「さあ、わからない。だけど、それも含めて、あの人は行動していそうだよ。こっちがわからないというとをわかったうえで行動する。修行をつけてもらっていたときも、そうだった。何もかもわかっていたようで、わかっていないんだよ、あの人は」

「ワンワンワンワワワワン(肝心なところで抜けているんだよな、あの人)」

 ため息が出た。

「さて、リラクトの町にはいなかったのだとしたら、師匠はどこにいるのだろうか?」

「ワンワンワン(いるとしたら、きっとこの町よりも都会か、それとも村では?)}

「うーん、師匠ってふらっと出ていって、フラっと帰る事があったからな」

「ワンワンワン? (どうして師匠って放浪癖があったのかな?)」

「うーん、ストレス発散? それとも無意識?」

「ワンワー(わからないな)」

「ああ、全くだ」

 師匠の考えを慮ることができないので、俺とポチは頭を抱えた。

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