ファミレス

大学生の翔太は、駅前のファミレスでアルバイトをしていた。


将来は飲食店を持つという夢があり、此処は2年ほど経つベテランの域だ

特に清潔感を大事にしており、制服は毎日洗濯して、きちんとアイロンまでかけて翌日分をロッカーにかけて出勤する。店長や仲間からも「いつもきれいな制服だね」と褒められていた。


ある日、常連の中年男性が翔太を呼び止めた。

「君、今日もピシッとしてるな。いいねぇ」

軽く褒められた程度に思っていたが、それからというもの、その客は翔太にだけしつこく話しかけてくるようになった。


「髪も整えてるね」

「制服、また新しくした? 昨日よりも似合ってる」

「そのネクタイの結び方、昨日とは違うよね?」


──翔太は背筋が冷えた。昨日の自分のネクタイの結び目を、この客が知っているはずがない。


思い切って先輩に相談した。すると先輩は、気まずそうに小声で言った。

「……お前の制服さ、バックヤードにかけてある時、たまにズレてんだよ」

「ズレる?」

「いや……誰かが触ったみたいにハンガーの向きが変わってたり、ボタンが一個だけ留められてたり……」


気味が悪くなった翔太は、それ以来、制服をロッカーに置くことを辞めた。

だが数日後、その常連がまたやって来て、ニヤリと笑った。


「君、最近は制服を家に持って帰ってるんだね」


翔太は血の気が引いた。

誰にも言っていないはずなのに──。

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