第11話# **エピローグ:The Aftermath(その後の世界で)**


一連の事件から数ヶ月後、全てを失ったディレクターの苦悩と、彼女がたどり着いた一つの答えを描く、静かで重いエピローグを作成します。


---


##


**【シーン開始】**


**テロップ:**

**あの夜から、三ヶ月後。**


**ロケーション:** 河川敷・夕暮れ


**映像:**

夕日が川面をオレンジ色に染めている。人々が犬の散歩をしたり、ジョギングをしたりしている、ありふれた日常の風景。

その中に、壬生えりかは一人、ベンチに座ってぼんやりと川の流れを見つめている。

彼女の髪は少し伸び、表情からはかつての鋭さが消え、深い疲労と哀しみが刻まれている。もう、テレビ局の職員証を首から下げてはいない。


**(SE:川のせせらぎ、遠くで響く子供たちの声)**


**壬生ナレーション(過去の自分に語りかけるような、静かな独白):**

「私たちは、真実を追い求めていた。山本あづささんの無念を晴らすこと。医療現場の闇を暴くこと。それが、私たちの信じる『正義』だった。」


**インサート映像:**

* 一心不乱に資料を読む、かつての壬生。

* 編集室で、モニターを睨みつける壬生。

* 放送直後、鳴り響く電話に囲まれ、覚悟を決めた表情の壬生。


**壬生ナレーション:**

「ペンは剣よりも強い。私たちはその言葉を信じ、振りかざした。だが、剣は使い方を誤れば、守るべきものまで傷つける。私たちは、その単純な真理を、理解していなかった。」


**インサート映像(モノクロで):**

* 暴徒と化した群衆。

* 破壊された病院の玄関。

* 怯える看護師たちの顔。

* 叩き壊され、無残に晒された『緑ヶ丘中央総合病院』の看板。


**壬生ナレーション:**

「あの夜、私たちは全てを失った。番組は社会現象となり、国を動かした。病院は厳しい行政処分を受け、経営陣は刷新された。報道としては、大成功だったのかもしれない。けれど…。」


壬生は、ポケットから一枚のくしゃくしゃになった手紙を取り出す。

それは、事件の後、匿名で彼女の元に届いたものだった。


**手紙の文面(壬生の声で読み上げられる):**

『テレビの人へ。あなたたちのせいで、私の職場はめちゃくちゃになりました。患者さんたちは転院を余儀なくされ、大切な仲間たちも、心を病んで辞めていきました。私たちも、山本さんと同じくらい、この病院で必死に働いてきたのに。どうして、私たちまで悪者にならなければいけなかったのですか』


**壬生ナレーション:**

「真実とは、解明し、追求するだけではないのかもしれない。一つの真実は、別の角度から見れば、誰かを深く傷つける刃にもなる。私たちは、レンズの向こう側にいる、名もなき人々の痛みや生活を、想像できていただろうか。」


壬生は、手紙をそっと折りたたみ、ポケットに戻す。

彼女の隣には、一枚の封筒が置かれている。宛名は、〇〇テレビ報道局長。中には、退職願が入っている。


**壬生ナレーション:**

「私は、カメラを置くことにした。真実を伝える資格など、今の私にはない。」


夕日が完全に沈み、世界が青い闇に包まれ始める。

壬生は立ち上がり、ゆっくりと歩き出す。その背中は、小さく、頼りない。


**壬生ナレーション:**

「いつか、もう一度、誰かの物語を紡ぐ日が来るとしたら…。その時は、巨大な悪を断罪するような、強い光でなくてもいい。暗闇の中で、誰かの足元をそっと照らすような、小さな灯火でいい。」


**壬生ナレーション(最後の言葉):**

「ただ、視聴者に寄り添うのではなく、取材した一人ひとりの人生に、寄り添える人間に。私は、ならなければならない。」


壬生えりかの姿が、夕闇の中に小さく消えていく。

彼女が座っていたベンチの上には、佐藤プロデューサーが最後にくれた缶コーヒーが、一本、静かに置かれていた。


**(SE:静かなピアノの音色が、ゆっくりとフェードインしてくる)**


**テロップ:**

**真実は、時に人の数だけ存在する。**

**一つの正義が、全てを救うとは限らない。**


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る