第13話
ゼブラクラッカーが跳ねて、紙吹雪は逆立ちのまま踊り出す。
赤と青のチューインガムが喧嘩をして、勝った方は緑になる。負けた方も緑になる。結局、全部緑。
ピエロの靴は四つあって、左足が三つ、右足は笑っている。靴の舌はキャンディでできていて、噛めば噛むほどバイオリンの弦が増えていく。
その音で目玉ゼリーが膨らみ、膨らみすぎて風船と入れ替わる。風船は知らん顔をして「パン」と鳴る。パンなのに音だけ。味はない。
ビスケット時計がぐるぐる裏返り、秒針はピーナッツバターでぬるぬる進む。針が溶けて床に落ちると、床そのものがケーキになり、歩くたびに指先が生クリームを拾っていく。
指先を舐めると舌が三枚に増える。三枚の舌で同時に違う歌を歌い、三つとも忘れる。
ホイップの空からパチンコ玉の雨。落ちた瞬間に虹色の影が跳ね返り、影だけが手を振る。手を振られた風景が笑い転げて、地平線ごとひっくり返る。
そこから出てくるのはスイカ割りの棒。割る前にスイカが自分で割れて、種がタップダンスを始める。ステップの音はバターの匂い。
クラウンフェイスは鏡の裏で溶けて、チョークの粉を吐きながら二度と戻らない。
帽子の中から飛び出すのは、笑い声だけでできた風船。浮かびすぎて割れもせず、ただ大きくなって街を飲み込む。
飲み込まれた街はアイスクリームの海で溶け、泳ぐのはパンダ型の靴下。靴下は笑っていない。ただ裏返っている。
ゼロの数字に口紅を塗ると、無限が逆立ちする。逆立ちのまま口笛を吹き、口笛の音が爆発しても煙は出ない。
煙の代わりに飴色の紙切れが降る。その紙切れを拾ったピエロが、全部破って全部飲み込む。
飲み込んだ腹は太鼓になり、叩かずに笑い声で鳴る。ドンでもトンでもなく、ヒャラヒャラヒャ。
最後に残るのは、裏返った風船と、靴下の影と、もう誰も履いていないピエロの靴。
全部をまとめてクラッカーが鳴らし、何も始まらず、何も終わらない
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