真人 【マ ジン】

我妻ベルリ

第一章 入隊篇

第1話 ファーストキス

 「進路希望書配るからな〜。ちゃんと書かないと再提出だから」

 

 担任は教室の右端から左へプリントを一番前の席へと人数分置いていく。

 高校三年生から「総合」の授業は進路のことになった。目の前に配られたプリントには「進路希望書 ※真剣に書くこと。親御さんとよく話し合うこと」と書いてある。僕はただその一文をじっと眺める。


 「ひかりは進路決まってるの〜?」

 「ええ〜?私は…」

 「俺はやっぱ軍隊かな〜w」

 「マジで!?いけんの?」


 周りからは自分の進路に対する話し声が聞こえてくる。

 特に日本魔防軍にほんまぼうぐんは人気がある。

 魔物や違魔法犯いまほうはんから市民を衛る軍人。通称「魔法使い」はヒーローに近い存在だ。


 僕は空欄を埋めることなく机の中にしまう。そして大学を調べるふりをして読書を始める。

 成績は普通。部活はサッカー部だったが、レギュラーにもなれずベンチを温める係。ついこの間早めの引退を迎えたばかりだ。こんな人間に夢だの進路など決まっているはずがない。強いて言うなら、成るようになる事が目標だな。川を流れる流木のように特に何かをすることもなく普遍な日々を送る。そうしたい。


 ○ ○ ○


 またいつもと変わらない学校生活……だと朝のホームルームまでは思っていた。


 「ええ〜急遽このクラスに転校生が来ることになった。入ってきて良いぞー」


 担任の声が扉に当たり、がらがらと音を立てて扉が開く。

 その子は金髪で顔が整っていて体型もスラっとしたモデルの様な女子だった。日本の制服がまだ馴染んでおらず若干の違和感のある姿にクラス中の視線が釘付けになる。

 何も言わずに教卓の横まで歩き、チョークを手にとってカツカツと黒板に文字を刻む。


 "アメリヤ"


 っと慣れない下手くそな日本語で書かれた名前を書き終えると、くるりと振り返りこちらに挨拶を始める。


 「はじめまして。よろしくおねがいします」

 

 少し辿々しいが、逆にそこに惹かれる感じ。教室からは拍手と驚きの声や彼女に対しての感想などのどよめきが溢れかえる。


 「アメリヤさんは、日本にまだ慣れてないからみんなでサポートしてやってくれな。呼び方は……アメリヤさん?で大丈夫かな?」

 「ええ。じゃあその"アメリヤさん"で」


 先生にニコッと笑って見せるアメリヤさん。

 その笑顔。表すならなんと表せば良いのだろう。花が咲くような…いや違う。雪解けのような…それもまだ足りない。なにか…すごいものを見てしまったような、そんな破壊的な笑顔だ。

 今の僕を一言で言い表すなら一目惚れだ。


 ○ ○ ○


 アメリヤさんが来てから一週間。彼女はそのルックスもあり、クラス学年を超えて注目を集めていた。

 僕はそれを遠くから眺めるだけ。それはそうだ。クラスの端の方にいる僕がアメリヤさんに話しかけるなんて無理だ。そんな度胸はないし、クラスの中心人物が許さない。

 

 昼休み。僕は弁当箱を持って校舎の特別棟へと続く外廊下へと向かった。3階の外廊下は普段使われていなくて、昼休みも誰も来ない。

 筈だった。

 外廊下に出ると、そこにはアメリヤさんが居た。1人で体育館の方をじっと見つめている。

 僕はせっかくなのでその姿を目に焼き付けて来た道を戻ろうと踵を返す。


 「行っちゃうの?」

 「ん?…ふぇ!?ぼ、僕?」

 「他に人居ない。えっと…田中ジンくん?」

 「うん。あ、えっと…その…。あ、アメリヤさんの邪魔になるから……」

 「邪魔じゃないよ。それ。食べるの?」


 アメリヤさんのスラっとした人差し指の先が僕の手元を向けられる。


 「え?ああ。お弁当…食べるよ。普段はここで食べてたんだ」

 「なら、私が邪魔者だね。どうぞ気にせず食べて。私は君の食べるところ見てるから」

 「え!?あ、え〜…。うん……」


 ここまで言われてしまうともう引き返せない。

 僕は深く深呼吸をして外廊下の手すりに寄りかかるように座る。もちろんアメリヤさんとは距離を空けて。

 弁当の蓋を開けると、半分はふりかけのかかった白米。もう半分は卵焼き、冷凍のグラタン、唐揚げにブロッコリー。いつもと変わらない普通のお弁当。

 箸で卵焼きをつかみ食べようとすると


 「それはなに?」

 「え?」


 そこには、距離を空けていた筈のアメリヤさんの顔がすぐ横に。四つん這いになりこちらを覗き込む姿は犯罪級だ。顔が近づき、ふわりと花のような匂いが更に僕を動揺させる。

 箸を持つ手が震え、体の内側から熱が溢れ顔が熱い。


 「ねぇ。その黄色いの…なに?」

 「た、た、た、卵焼きっ!」

 「へぇ〜………頂戴?」

 「え?はい。……へぇ?」


 言葉を理解する前にアメリヤさんは僕の卵焼きをパクっと口にする。僕の箸の先にあった卵焼きは姿を消す。


 「おいしいね。ありがとう」

 

 そう言い残してアメリヤさんはどこかに行ってしまった。取り残された僕はアメリヤさんが口をつけた箸をじっと見つめるしかなかった。


 ○ ○ ○


 あれから一週間。ここ最近は初めて学校が楽しいと思えた。

 あれから妙に話すことが増えた僕とアメリヤさんは昼休みに一緒に食事をしたり、掃除の時間に一緒になったり、一昨日は放課後に一緒に帰ったりもした。

 もちろんクラスの一部の人からは陰口を叩かれている。

 しかし、今の僕にはそんなことがどうでも良いと思える程に楽しい生活を送っている。前の僕では考えもしなかった学校生活。

 これが………青春《アオハル》だ!!!


 放課後。部活をする生徒や帰る生徒。教室からは人が消え、日が傾き始めている。

 僕は胸の高鳴りと若干の足取りの重さを噛み締めながら体育館裏に向かっていた。

 靴箱の中に入っていたメモ。恐らく僕はこの一切れのメモを生涯家宝として扱うだろう。放課後の体育館裏への呼び出し。


 「ジンくんへ。放課後、話したいことがあります。体育館裏に来てください。 アメリヤ」


 僕が呼び出されることなんてヤンキーのカツアゲくらいだと思っていたが、まさかこの時が来るなんて。

 この状況で告げられるのは一つ。告白!!

 僕は遂に青春を謳歌することになるんだ!


 体育館の角を曲がると、薄暗いジメジメした体育館裏に人形のような彼女の姿があった。こちらに気がつくと、一瞬表情が明るくなったかと思うと、顔を赤らめて目線を外してしまう。


 ………好きじゃん。


 「来てくれてありがとう。嬉しい」

 「う、うん。は、話って?」

 「う、うん。あのね………。その〜……。ちょっと待ってね?」


 アメリヤさんは右手で「待って」とジェスチャーし、左手をポケットに突っ込む。ポケットから出てきたのは口紅だった。キャップを開けると赤紫色の口紅が姿を表し、アメリヤさんの唇を染める。柔らかさが見ていてもわかる唇に紅が差され、僕の目はそのぷるんとした口に釘付けになる。

 元々綺麗な顔に口紅が合わさり、色っぽさが増し、僕は思わず喉を鳴らす。


 「あのね…私…ジンくんが好き。君も………同じ気持ち?」

 「ぼ!ぼ、僕も…アメリヤさんが…好きでぇす!!」

 「………嬉しい」

 「!?」


 ガバッ。

 突然の抱擁に僕の胸は爆発しそうなほど荒ぶる。髪がふわりと舞い、良い香りがする。柔らかく、少し冷たい肌。胸部に感じる柔らかい感触。全てが初めてで知らない事に頭が真っ白になる。

 アメリヤさんと至近距離で見つめ合い、何か合図をした訳でもないけど自然と目を閉じる。そのまま顔を近づけ、遂に唇と唇が触れ合う。

 初めての感覚。これが…ファーストキス。柔らかい…ほのかに暖かい感触は体の熱を限界まで引き上げ、脳は思考を放棄する。

 ぼーっとして周りの音が遠のき、唇に全神経を集中させる。キスの事しか考えられなくなり、そのうちキスすら考えられなくなる。

………

……

 そのぼーっとした感覚がキスの高揚感から来るものでは無く、本当に意識が混濁したものだと気がついたのは、口の中に鉄の味が広がってからだった。

 これは………………血…?

 息苦しくなり、汗が止まらない。5秒、10秒、15秒と唇を重ねあう時間が長くなればなるほど意識が遠のき、口の中に血が溜まり続ける。

 鼻血と吐血でむせ返り、重なり合う唇の間から血が流れ足元に血がボタボタと滴り落ちる。2人の口元は血塗られ、既に僕の手には彼女を振り解くほどの力はなかった。

 彼女の手が離されると、僕は力無くその場に倒れる。呼吸が浅く、喉からヒューヒューと音が鳴る。視界がぐらりと揺れ、心拍数が早まり続ける。

 何が起きたのか。それすら考えることが出来なかった。


 「ごめんね。痛いよね?辛いよね?君の事なんて好きじゃないんだ。ごめんね?」

 「な……ヒューヒュー……な、に…こえ………」

 「私のこの口紅お気に入りなんだ。色も可愛いし、何より即効性の毒で相手がキスしながら血を吐いて死ぬ姿を見るのがお気に入りなの。君の血って変な味がするな〜」

 「ゴボッ!ゴホッ!ゴボッ!……はー……はー…」


 喉の奥から血がドロドロと吐き出される。血痰と口内に溜まった血を飲み込んで喉がゴロゴロと音を鳴らす。


 「体育館裏に呼び出したのも、誰にも見つからずに済むから。日本じゃ告白する場所によく使われるんだよね?日本のマンガに書いてあったんだけど…本当なんだね」

 「な、なん………なんで……?あ、あめ、り……や」

 「あぁ〜。その名前嘘なんだよね。私名前を決めるの苦手でね?思いつかないから"アメリカ"ってそのまま書いたら先生がアメリヤだって勘違いしたんだよね〜」


 彼女の言っている事は聞き取れたが、理解が出来ない。毒で意識が朦朧としているのもあるが、単純に理解が出来ない。なぜこんな状況になっているのかがわからない。


 「あれ?なんでこんな事をしたのか聞いてたんだっけ?それはね〜私がアメリカから来た殺し屋で、君のことを殺しに来たからだよ。でもなんで君みたいな、なんの価値もない子殺さなきゃいけないんだろ〜ね?君が可哀想だよ」

 「た…たす…え…」

 「ごめんね?お仕事はちゃんとしなきゃ。もう少しで楽になるからね。あ!お仕事ちゃんとやった証拠撮らなきゃ!」


 カシャッと音が聞こえる。視界がだんだん暗くなっていく。

 ああ……僕は死ぬんだ。

 

 …

 ……

 ………


 あれ?僕は…何をしてたんだっけ…?

 体育館裏に呼び出されて、告白されて、ファーストキスをして……。なのに、目の前のこれは?

 日曜日の午後。父とテレビゲームをしている。確か…モンスターを銃で撃って行くシューティングゲームだ。

 当時の僕はまだまだ幼くてゲームを一緒にしたと言うより、父の姿を見ていたに近い。

 なんで…今これを思い出したんだろう………。

 あれはなんで言うゲームだったかな。モンスターを撃つ……。


 「⬛︎⬛︎」


 ………

 ……

 …

 

 「よし…これでお仕事は終わり。このまま潜伏か〜日本観光したいな〜」


 アメリヤはスマホで任務完了のメールを送り、その場を立ち去ろうと振り返る。

 次の瞬間。


 パアァンッ!!!


 銃声のような破裂音が辺り一体に響き渡る。

 振り返り、先程まで向いていた方に向き戻る。そこには、死体はなく、煙の中に立つ人影だけがあった。

 この学校の学ラン姿。しかし、生徒ではない。煙が消えると、顔は骸骨になっており目元にはサイバーゴーグルのような物をつけている。両腕をクロスさせ、その手には2丁の拳銃が握られている。


 「嘘でしょ……。まさか、!?これが高難易度に指定されてた理由か……!」

 「ア、アァァー。アメリヤさんの事好きだったのに…こうなったら…。モンスターは!撃つしか!ないよなぁあ!!??」


 二つの銃口がアメリヤに向けられ、引き金を引く。しかし、「カチッ」と言う音だけで弾は出てこない。


 「あぁ?なんだこりゃ?」

 「んふっ。んはははは!!びっくりしたけど素人だね。良いよ…同じ同士。お手本見せてあげる」

 

 彼女は猛毒の口紅を差し直し、色付けされた口で「I'm poison」と囁くように呟く。瞬時に彼女の身体は「ドロッ」と言う音と共に紫色の液体に包まれる。

 中から現れたのは、ナース服を着た魔人と呼ばれる存在。目元が包帯で覆われており、赤紫色の唇はより色気を放っているように感じた。


 「ジンくんも力を隠し持ってたなんてね。それとも…今目覚めたのかな?」

 「しらねぇーよ!こちとらファーストキスが血の味だぁ!たとえ好きな相手でも遠慮なく撃ってやらぁあ!!」

 「ジンくんが勝ったらさっきの続きしてあげても良いよ?」

 「え?ガチ?」


 アメリヤは地面を強く踏み込み、一気に距離を詰める。


 「勝ったら…ねぇっ!!」

 「ガハッ!?」


 腹部に強烈な蹴りを喰らい、ジンは校舎へと蹴り飛ばされる。壁を貫通し、クラスの中をめちゃくちゃにしながら貫き続ける。

 3クラスほど吹き出され、黒板や机、椅子、ロッカーはほぼ原型をとどめていない。校舎内に警報器の鐘が鳴り響き、悲鳴もちらほら聴こえている。


 「イッテェエ…。ん?あぁ、マガジンってのを入れなきゃ弾は出てこねぇよな」


 自分の腰部分に巻き付いたマガジンを2個取り出し、両手の拳銃へと挿し込む。

 それと同時に、自分の空けた教室の穴から彼女はゆっくり歩み寄ってくる。


 「どうやら自分の力は理解できたみたいだね?ジンくんは…銃の魔人かな?私は毒の魔人。君に猛毒のキスをして私だけ平気だったのも能力なんだ」

 「あっそ。撃つ」

 

 銃を構え、引き金を引く。先程とは違い、弾丸が彼女に向かって放たれる。しかし、華麗な身のこなしでアメリヤは銃弾を避け、廊下へと姿を消す。


 「待てぇ!」

 

 アメリヤを追いかけ廊下へと出る。すると、彼女はこちらに駆け寄り、注射器を数本投げる。


 「危ねぇ!?」

 「まだ終わらないよ!」


 アメリヤは地面に黒いスプレー缶のようなものを投げる。地面に叩きつけられたそれは、刹那の眩い光を放ったかと思えば、破裂し、辺りに紫色の煙が舞う。


 「毒ガスっ!」

 「だけじゃないんだな〜」


 毒ガスによってアメリヤを見失う。四方八方に銃弾を撃ち込むが、彼女の嘲笑う声は鳴り止まない。


 「ほら、こっちよ!」

 「そこかブッ!!」


 顔面に鋭い蹴りが入り、窓ガラスを貫いて校庭へと放り投げ出される。

 地面に激しく打ち付けられ、サッカーゴールのネットに引っかかる事で勢いが止まった。

 毒ガスの影響なのかすぐには立ち上がれず、その間に彼女は優雅に近づきながら注射器を構える。


 「そろそろお終いかな。安心して!君には利用価値が出来た。上に報告すれば言い値で買い取ってくれるかも」

 「知ら…ねぇよ……。俺はよぉ〜…初恋の相手を撃たなきゃいけねぇ〜んだよ。モンスターはよぉ〜撃たなきゃダメだろーがっ!!」


 勢いよく起き上がり、真っ直ぐ駆け出す。当然のようにアメリヤは注射器を投げる。脚に刺さり、その部分の感覚が一瞬にして無くなる。足がもつれ、盛大に転ぶ。


 「え?何してるの?真っ直ぐ走ってくるなんてバカの?」

 「うるせぇ!おら!」


 地面を這いながら右手で発砲するも簡単に躱される。

 注射器の針からはポタポタと毒が垂れ、その針はジンへと向けられる。


 「はい。おしまい」

 「そりゃ…どうかな?」

 「どうかなって。どう見たっておしまいで…しょ…。左手の銃はどこ!」


 ガチャッ!背後から重い音が鳴る。振り返ると、左手に握られていた拳銃が今地面に落ちた瞬間だった。

 

 (やられた!転んだ時に投げられてたんだ。狙いは拳銃を落とし、その衝撃による暴発!)


 彼女は身構え、その集中力は落とされた拳銃に向けられる。

 パァン!

 発砲と共ににアメリヤは崩れ落ちる。彼女を撃ち落としたのは…右手の拳銃。つまり、寝ているジンが撃ち抜いた。落ちた左手の拳銃は暴発しなかった。


 毒の効果が消え、ゆっくりと起き上がる。アメリヤは変身が解けて制服姿へと戻っていた。胸元は紅く染まり、血溜まりが出来上がっていた。


 「ゲホッゲホッ!はぁ〜負けちゃった…。どこまで…読んでたの?」

 「普通に考えりゃ投げた拳銃が暴発して相手に当たるなんて考えねーだろ。囮になりゃその一瞬で撃てるからなぁ」

 「んはは…。意外と賢いんだね」

 「どーゆー意味だゴラ」

 「んふふふ……あはは」


 アメリヤは血を吐きながら笑ってみせる。その顔は赤くなっていた。


 「君はターゲット。今までの発言も…行動も…全部演技。でも、今の戦いで…君に惚れちゃった…。私…ゲホッ……君みたいなおかしな人大好き」

 「はぁ?何言ってんだ?」

 「もう一度だけ…。あのね…私…ジンくんが好き。君も………同じ気持ち?」

 「んな訳!」


 その瞬間、彼女は突然起き上がり、ジンに抱きつく。胸を撃たれながらも身軽な動きにジンは驚きを隠せない。その隙にアメリヤはジンに口付けをする。

 その淡い桃色の唇の柔らかさを感じ取った次の瞬間、耳元で優しく囁いた。


 「君が好き。いつか私を思い出してね?」


 彼女の身体に隠されていた毒ガス入りの爆弾が炸裂し、辺り一体は紫色の毒ガスに覆われる。


 ○ ○ ○


 午後5時過ぎ。

 ノ田市立北高校の教員から「魔物が出た」と通報があり。魔防軍から特殊四番隊が出動。

 午後5時12分現着。

 高濃度の毒ガスで近づけず、作業難航。

 午後9時。

 毒ガスの中和作業完了。



 「お疲れ様です。レフ隊長」

 「現状はどうなってる?」

 「校庭にばら撒かれた毒物は一部を除き中和完了してます。校庭に確認された魔物ですが…おそらく魔人です。2名のうち1人は死亡が確認されてます。もう1人は生死不明かと…」

 「確認出来ないの?」

 「片方は確実に死んでることがわかる状態です。しかし、もう1人はなんとも言えません。2人の周りの毒の濃度が高すぎて近づけません」

 「なるほーど…わかった。少しなら私の能力でなんとかなる。私が行く」


 校舎は大きな穴が空いており、校庭は変形している。激しい戦闘は見てわかる。


 2人の場所へと近づき声を掛ける。


 「そこの…男の子ほうの子。大丈夫?」

 「………うぅ…」

 「驚いた……意識があるなんて……名前は言える?」

 「俺は…」



 「俺は…田中ジン」


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