フェニックス・ブレイカー 破れた魚～再生後絶対に失敗しない～

第1話生まれ変わる

これは、フェニックス勇者腐魚が魔王Eveに敗北してから十八年後の物語。かつて輝かしく威厳を誇っていた軽之国はすっかり魔王軍の支配下に落ち、名誉ある貴族たちはすでに魔族の玩具となり、民衆は豚や犬のように扱われ、追い立てられ、殺されていた。

その時、王都の王宮で、魔王Eveはのんびりと服を着ていた。身長八尺、たくましい筋肉がまるで鎧のように全身を覆い、一対の赤い瞳はわずかに細められていた。まるで先ほどの幻羽を味わっているかのようだった。

「片付けておけ」魔王が言ったが、その声は男性ではなく、まるで二十歳前後の少女のような澄んだ女性の声だった。

部屋の隅にひれ伏していた人影が震え、立ち上がり、床に散らばったものを拾い始めた。

Eveは再び振り返り、ベッドに横たわる勇者の姿を一瞥した。目は白く濁り、唇はわずかに開いて、白磁のように精緻な肌には魅惑的なピンク色がにじみ、乱れた布団は春光を隠して勇者の誇らしい体型を際立たせ、長い足に絡みついた黒いストッキングは無惨に引き裂かれていた。魔王は満足そうに口元を緩め、部屋を出て行った。

部屋は静まり返り、腐魚は無感情に天井を見つめていた。どれくらいの時間が経ったのか分からないが、しばらくして彼女は言った。「私を殺してくれ、鼠帝」

部屋の中で無音で作業していた男が立ち止まり、頭を低くしたまま作業を続けながら、鼠帝の声が低くかすれたように響いた。「耐えろ」

「はは」腐魚は悲しく笑った。「耐えろ、耐えろ、耐えろ、あなたはそれしか言わない。私は三年、三年また三年、耐えてきた。そしてその結果、私の耐えたものは一体何だっていうの？」腐魚の体が震え、泣きたいのに涙はとっくに枯れ果てていた。

鼠帝はそっと彼女の言葉を遮り、「勝者と敗者、腐魚。さらに言えば、すべてを壊したのはあなた自身だろう？」と言った。そして清潔なタオルを取って腐魚の傍に寄り、彼女の汚れた体を優しく拭い始めた。彼の仕草は非常に優しいが、その言葉は冷徹で無情だった。「生きろ、腐魚。生きていれば、自分が犯した過ちを償うことができる」

「それは私のせいじゃない！フェニックスの剣が壊されたんだ、私は…！」腐魚は怒りを込めて鼠帝を睨んだが、鼠帝はそれ以上何も言わず、部屋の中を整えて無言で退出した。

腐魚は顔を覆い、ベッドに横たわった。再び、どの痛みの記憶に囚われたのか分からなかった。

三ヶ月後、魔族内で反乱が起き、魔王は王都ライトヌヴィを離れて自ら反乱を鎮圧しに向かった。

深夜、腐魚は窓辺に座り、何もすることもなく退屈していた。宮殿内の占星術師が言っていたのは、今夜は500年に一度の九星連珠の日だということ。しかし、すべては意味を持たなかった。今、彼女はEveの欲望を満たすための道具に過ぎなかった。一つの器、ただそれだけ。

そのとき、鼠帝が扉を開けて入ってきた。いつものボロボロの下僕の服ではなく、どこから持ってきたのか、王冠と豪華な服を身に纏っていた。今、彼は活力に満ち、まるで若き日の国王そのもののようだった。

「鼠帝、あなたは…」腐魚は不安げに彼を見つめた。

鼠帝は手に持っていた箱をテーブルに置き、腐魚の向かいに座った。

「お前は聞いたことがあるか？私たちフェニックス王族には聖剣の他に、時空を超えて過去に戻れる秘宝がある。」鼠帝は箱の上を撫でながら尋ねた。

「月光宝盒？それは伝説じゃないの？もしそんなものがあったら、私たちがこんな目に遭うわけがない。」

「月光宝盒の伝説は本当だ。ただ、発動条件が非常に厳しく、誰にも知られていないだけだ。」鼠帝の表情は淡々としていた。彼は何年も前からその準備をしていたのだろう。彼は真剣な表情で腐魚を見つめながら言った。「時には、死ぬよりも生きることに勇気が必要だ。腐魚、お前は聖剣に選ばれた勇者だ。私は信じている。今回は、私はお前に賭ける。」

「いや、そんなことしないで、他の方法を考えて…」腐魚は慌てて立ち上がった。18年もの奴隷生活は、かつての誇り高き勇者を消し去り、今や美しい体だけが残っている。

「腐魚、これは私の償いだ。次はお前の番だ。私たちには逃げ場はない。」鼠帝は素早く袖から短剣を引き抜き、自分の心臓に突き立てた。

血液が噴き出し、飛び散ることなく、すべて月光宝盒に落ちた。

漆黒の箱は眩い光を放ち始め、腐魚は何か言おうとしたが、その光に包まれ、消えていった。

目の前の光景が再び鮮明になり、耳元で聞き覚えのある声が響いた。「腐魚、何をぼんやりしてるんだ、国王が私たちを呼んでいるぞ。」

腐魚は声の方に目を向けると、愛らしい小さな少女が不機嫌そうに彼女を見つめていた。

「天一遊龍」一之瀬月美、15歳、今の時代で最も才能を持つ気功師。

その傍らには「缄默術士」田中も心配そうに彼女を見守っていた。

「大丈夫か…？」腐魚はぼんやりと答えた。まさか、自分が魔王討伐のために出発したあの日に戻るなんて。

「フェニックス聖剣がこんなバカを選んだのか。」一之瀬月美は白目をむいて言った。「さっさと行こう。」彼女は腐魚の手を引いて王宮の中へと急かした。

宮殿内には大勢の人々が立っていた。

「帝国剣聖」、自分の師である白河豚先生。

「真理の杖」、首席宮廷魔法師であるドミノ。

そしてもちろん、若き王者、未来の「鼠帝」が王座に座っていた。

「フェニックス聖剣に選ばれた勇者たちよ、人類の未来のために、私は軽之国の国王として、魔王城への討伐を頼む。」

腐魚は若き鼠帝を見つめ、しばらく呆然とした後、真剣に答えた。「これが私たちの名誉です。」

人々が歓声を上げ、ひとりの美しい少女が聖剣を抱えて腐魚に歩み寄った。

「勇者、剣を受け取ってください。」少女は軽やかにウィンクをして、腐魚に剣を差し出した。

腐魚は目の前の顔をじっと見つめたが、体がだんだん冷たくなっていった。そうだ、この子は彼女の幼馴染、鼠帝の妹、最も親しい戦友であり、恋人でもあった、邢部姬だった。

18年前、まさにその夜、彼女がフェニックス聖剣を壊した…

「どうして…」腐魚は何度も彼女に問いただしたかったが、あの夜以来、少女の姿は二度と見なかった。

魔王城で、Eveは周囲を不思議そうに見回していた。自分は反乱を鎮圧するために進軍しているはずなのに。

王座の下には一人、ひれ伏す影があり、それは彼女の部下である四天王の一人、youxlだった。しかし彼は18年前にランギに討たれたはずだった。

過去に戻った、月光宝盒？Eveは一瞬でその謎を理解した。

彼は狂ったように笑いながら言った。「来い、腐魚。お前を倒したことがあるなら、二度でも倒してやる。ここで待っているぞ。」