逆説的幸福

munikisu

第1話

 幸福だった。

 有り余る才能も喧嘩した友人も仲の良い家族も、すべて私にとって人生の幸福の糧でしかなかった。毎日を幸福で満たした将来は絶対的なものであると、過信していた。


あの日までは。


医者から告げられた余命宣告。

泣き崩れる母と瞳を反らす父。


 人生への絶望とか死への恐怖とか友人への伝え方とかなんかどうでもよくって。


確かに安堵している自分がいた。

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