天涯わ〜るど。〜にわか仙女西へ行く〜

猫の尻尾

第1話:一心同体。

この話はどこかの異世界の話。

その異世界の片隅・・・福根省ふっこんしょうと言うところの片田舎。

トウモロコシの栽培と風光明媚な景色のため観光にやって来る客が落とす金銭収入

で村は成り立っていたが、生活の向上の兆しもなく村人はみんな貧困に喘ぎながら細々と暮らしていた。


この物語の主人公「呂衣呂衣ろいろい」は15歳の少女。

呂衣呂衣は一張羅いっちょうらの民族衣装を着て毎日、羊の「てい」を連れて甘駄安羅かんだ〜らの丘で観光客相手に写真を撮らせて家族ために日銭を

稼いでいた。


一通り観光客にアピールし終えると呂衣呂衣は甘駄安羅かんだ〜らを降りて家に帰ろうとして

いた。


そんな折、天界の西王母の大事な仙桃を盗んで追っ手から逃れてきた「羽兆天うちょうてん」なる仙人が、この福根省の片田舎に逃げてきた。


で、羽兆天うちょうてん甘駄安羅かんだ〜らを降りてきた呂衣呂衣と、偶然遭遇することになる。

呂衣呂衣を見つけた羽兆天は一時の隠れ蓑にするため、これ幸いと仙術を使って

呂衣呂衣に憑依した。


あっと言う間の出来事だったので呂衣呂衣は羽兆天の姿を見る間もなく仙人に

体を乗っ取られてしまった。


羽兆天は若い仙人、歳の頃なら二十歳そこそこ・・・若いが仙術にも長け武術も

得意。


羽兆天は西王母の仙桃を食べてしまって不老不死な体になってるから死ぬこと

はない。


だが、さすがに天界の武将どもの軍団相手に戦っていてもキリがない。

軍団を相手にするのはハエの大群と戦うようなもので、うっとしい。

そこで天界から降りて下界に逃げて来たってわけだ。


羽兆天は呂衣呂衣の体がすこぶる気に入ったのか出て行くつもりは、さらさら

なかった。

って言うか呂衣呂衣の体に入ったものの、ぜか呂衣呂衣の体から出られなく

なっていた。

いくら外にでようとしても何かがひかかって出られなくなっていた。


まあ無理に出なくても呂衣呂衣の体に中にいれば飯も食えるし周りを気にしなくて

済む・・・天界の連中の目も誤魔化せる・・・一挙両得。


ってことで呂衣呂衣は羽兆天と一心同体の関係になったことで、にわか仙女にな

った。


さて、この呂衣呂衣が住む村は、実は大きな問題を抱えていた。

男も女もセックスにまったく興味を持たくなったため、たちまち子供が生まれなくなって絶滅危惧種のレッテルを貼られる危機感を感じていた。


これは我が村の存亡に関わる一大事と村長は寺のお坊さんに相談したところ、

西国に「ホレマクリ国」なる国があってそこには秘薬の惚れ薬があるらしいから、

それを分けてもらって来てみんなに飲ませればスケベ〜な気持ちが蘇るかもしれ

ないと言われた。


それを聞いた村長は坊主の言うことを信じて、さっそく村人たちの中から誰かを

「ホレマクリ国」へ向かわせよと命令を下した。


で、誰をホレマクリ国にやるかということになったが、公平を期すために、くじ引きで決めることになった。

老若男女問わずくじ引きに参加させられた。

で、くじを見事に引き当てたのが、呂衣呂衣だった。


「なんで、私なの?・・・他にいっぱいいるじゃない、ヒマな人が」


つづく。


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