第5話闇からの光

黒炎をまとったアキトは、空を暴れ回っていた。

拳を振るうたび、雲が裂け、雷鳴が轟く。


「アキト……戻って!俺だ、ライだ!」

必死に呼びかける僕の声も、黒炎の轟音にかき消されそうになる。


だが、ユウが紫の光を空中に放つと、黒炎が揺らぎ、衝撃が少し和らいだ。

「ライ、冷静に。焦るな」

ユウの声は低く、闇の中にいるアキトにも届くように響く。


その瞬間、柔らかな光が僕たちを包み込む。

白銀の髪を揺らした少女 、ミカだった。

「大丈夫、まだ間に合うよ」

彼女の透き通る白色の瞳は、アキトの心の奥に小さな光を灯すようだった。


「アキト……あなたは仲間よ」

ミカの声は温かく、闇に沈みかけた心に届く。


アキトの拳から放たれた黒炎が再び迫る。

僕は飛び込み、叫んだ。

「アキト!俺たちはお前を見捨てない!」


その瞬間、ユウとミカの力が交わり、光と紫の力が黒炎を押さえ込む。

アキトの身体が揺れ、黒炎が小さく震えた。


「俺……俺は……!」

アキトの声が震える。涙混じりの赤い瞳が揺れ、黒炎が赤に戻りかける。


「ライ……怖かった……」

崩れるように空中で浮かぶアキトを、僕はそっと抱き止める。


「もう大丈夫だ、アキト。俺たちがいる」

ミカの光が、傷ついた心と身体を優しく包み込む。

ユウの紫の光が、残る闇の力を抑え、揺れる炎を落ち着かせる。


雷と炎、闇と光――

僕たちの絆が、仲間を闇の縁から引き戻したのだ。


空はまだ暗いが、光が確かに差し込んだ。

僕たちは再び、幻の扉を目指す 。

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