楽しい日曜日
日曜日。
朝晩の検診を受け、食堂で摂る食事を除けばどこにも出かけなくていい。
部屋の中でゆっくりラジオを聴いて過ごす。
『──昨夜、我が国が誇る夜間行動少年隊は敵陣深部への突入を果たしました。間抜けにも揃って寝入っていた敵はなすすべなく、我が部隊は敵歩兵部隊を半壊の憂き目に合わせる事に成功。この部隊の指揮を取っていた賢者の家出身のカイル中尉は勝利報告と共に、共に戦場に立つのを楽しみにしていると後進への激励を送っています──』
『──本日未明、北部司令部に敵戦車部隊の攻撃有り。我が軍は果敢に応戦し、戦車2機を全壊、無数の銃火器類を放棄させる事に成功。当方の損害軽微にして、転身を図り、卑怯にも奇襲攻撃を行った敵部隊に対し、報復を誓っています──』
毎週お昼のニュースが終わったら、2組のリリアの弾くピアノが流れる。
ラジオは生放送だから、彼女には日曜日がなくて少し可哀想だ。
賢者の家に来たばかりの頃、リリアとは同じ部屋に入院していた事があった。彼女も目が悪くて、その代わりに耳が良かった。
『続いて、北西部に古くから伝わる民謡……』
軍歌に続いて流れて来たメロディに、思わず息が詰まる。
それは、母が口ずさんだ子守唄によく似ていた。
──良い子だ、小鼠、お休みしたら、籠いっぱいの栗の実あげよ
頬に開いた穴に水が入ると途端に精度が目が効かなくなる。
だから決して泣いてはいけない。
今日は楽しい日曜日。涙を流す必要など無いのだから。
『戦地の兵隊さん、故郷を守って下さって、ありがとうございます!手柄を挙げて帰られる日を、私達は楽しみに待っています…!』
スピーカーの金網から、3組の子の子供ぶった声が響いた。
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