『私が原因?』― 証拠品庫から始まるタイムトラベル

えりりんケーキ

第1話 新米刑事、未来(みらい)

「お父さん、今日で七回忌だね」


静かな朝。

古い木造の家の奥の仏間で、君島未来は手を合わせていた。線香の煙がゆらゆらと揺れ、遺影の中で穏やかに笑う父の顔が、煙の奥に浮かび上がる。


未来は深く頭を下げた。


「私も、お父さんと同じ刑事になったよ。まだ現場に出てバリバリ活躍ってわけじゃないけど……。でも、お父さんに褒めてもらいたかったな」


仏壇の横に置かれた古いロレックスの腕時計に、目が留まる。

珍しい型で、金色の縁取りがやけにけばけばしい。子供の頃は「ちょっとダサい」と思っていたが、父はそれを誇らしげにいつもはめていた。


「……形見の時計、大事に置いてあるからね」


彼女が立ち上がろうとした瞬間、窓から差し込む朝日が時計のガラス面を照らし、まばゆい光が部屋いっぱいに広がった。


未来は思わず目を細める。

その光に導かれるように、「じゃあ、行ってくるね」と小さく呟いて、仏間を後にした。

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