中二病の直し方〜それは魔王を倒すことだった。
ありふれた地球人ちゃん
第一章 勇者の誕生
第1話 中二病との出会い
桜舞い散る町中を歩く制服姿の青年がいた。
彼は小さな声でつぶやいた。
「俺はこの日を待ちわびていた。」
なぜなら俺は中学校でやらかしてしまったのだ…。
恐ろしい病に体を蝕まれイタイ言動を繰り返し、友人は俺の元から消え去った…。
その恐ろしい病とは中二病と言い、現在の思春期の男女を苦しめているのだ。
俺が思うに中二病の一番厄介な点は、中二病の全盛期の時には自分の行動がかっこよく見える、というかとてつもない高揚感を感じて気持ちいいと感じる。
しかし、病が治ると自分の今までしてきた行動がイタイということに気づき、恥ずかしさで胸がいっぱいになってしまうところだ。
俺が中学2年生の頃、とある作品によって中二病に目覚め、腕には包帯を巻き、目には赤いカラコンを入れ、眼帯をして力を宿してる系の人を演じた。
その時の俺は本当に特別な力を持っていると思い込んでいた。
今、思い出しても憂鬱になる…。
中学3年生になると中二病は自然に治り、今までの自分の行動を思い出して、俺は絶対に中学の奴らと同じ高校には行きたくないと思い、猛勉強をしてこの名門校に入ることに成功した。
今度こそ俺は輝かしい学校生活を手にして青春を満喫してやる!
そう思っていた…。
俺が新しい教室に入って目にしたもの、それは左手に包帯を巻いた男子生徒だった。
高校生になってまだ中二病がいるのかよ…。
いや待て、怪我かもしれない偏見はやめよう。
俺はそう思いながら自分の席に着いた。
この学校には髪色や目の色、メイクなどの外見の校則はないので教室に入ってくるクラスメイトは色とりどりな髪色をしている。
だからといって別にみんな髪を染めたりしているわけではない。
生まれつき赤色や青色の人もいる。
ちなみに俺は生まれつきの茶髪だ。
「みなさん。初めてましてこのクラスの担任になりました。
彼女のふわりとしたショートヘアは、まるで綿菓子みたいに甘く、小柄な体と相まって、誰もが守ってあげたくなるような雰囲気をまとっていた。
「ええっと。私の自己紹介は終わったので皆さんの自己紹介をお願いします。」
彼女の声を合図に出席番号順に自己紹介が始まった。
だが、俺の興味は中二病の彼にしかなかった。そのため、他の人の自己紹介は聞き流した。
彼の番が来た。
彼はゆっくりと立ち上がり、微笑んで言った。
「僕の名前は
彼のことをよく見てみるとすらりと伸びた首は細く、制服のサイズが合っていないのか、肩のあたりが少し余っている。
そして、風になびくサラサラとした白髪は繊細な表情を彩っていた。
何か左手の包帯について説明があるかと思ったが、特になかった。
やはり、怪我などではなく特に理由もなく包帯をつけているのかもしれない。
そんな事を考えていると俺の番がやってきた。
「俺は
チラッと来栖の方を見ると、彼の黄色い目と合った。
彼は優しく微笑んできた。
俺は動揺して何もせずそっぽを向いて席に座ってしまった。
全員の自己紹介が終わり、自由時間になった。
俺は近くの席の人と出身中学校についてや、何部に入るのかなどの他愛のない話をした。
話してる最中になんとなく来栖の方を見てみると、誰とも話さずに暗い顔をして包帯を巻いた左手をさすっていた。
体調でも悪いのだろうか?
心配なので話しかけることにした。
「来栖くんだっけ?顔色が悪いけど大丈夫?」
「東雲くん。心配してくれるんだね。ありがとう。でも大丈夫。ちょつと左手が
そう言って俺に微笑んだ。
思った通りに中二病のようだ。
正直関わりたくないが、俺は中二病だった頃からずっと『疼く』とはどういう感じが考えていて、他の人の意見も知りたかったので聞いてみた。
「疼くってどういう感じ?」
「うーん。筋肉痛の強化版みたいな感じかな?」
なるほど、そういう見解もあるか。
「東雲くんと話してたら調子が良くなってきたよ。良かったら連絡先を交換しない?」
中二病だから関わりたくないと考えていたが、話していて悪い気はしないし、彼はまだ誰とも連絡先を交換していないようなのでそうすることにした。
「うん。交換しよう。」
連絡先を交換して彼と少し雑談していると放課時間になった。
来栖と帰ろうか考えたが、彼は車で帰るようなので一人で帰ることにした。
帰り道で俺は来栖について考えていた。
来栖は中二病だと最初は思っていたが、言動が中二病っぽくない。
中二病の僕はもっと派手なことをして目立とうとしていたのに…。
でも、左手が疼くとか言ってたし中二病なのか?
考えながら歩いていると家に着いた。
「ただいま。」
この声は誰にも届くことなく、空っぽの家に響いた。
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