玉の輿は前途多難 4
「本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます」
ジェラルド・ル・フォール伯爵は席に着いたきり一言も発さなかったが、代わりに執事が歩み出てきて口を開いた。
「ティーパーティーをはじめる前に、皆様にご報告がございます。主人であるジェラルド・ル・フォールがおりますあちらの席をご覧ください。あの通り、我々は、ついに青い薔薇を作り出すことに成功いたしました」
(んん?)
アリエルはきょとんとしながら青い薔薇を見た。
同じテーブルのバリエ男爵令嬢とサジュマン子爵令嬢、それから他のテーブルの令嬢たちが「きゃあっ」と歓声を上げる。
青い薔薇は人類の夢とまで言われている、とても貴重なものである。
本当に世の中に誕生したのならば、その価値は金貨数千枚……もしかしたらもっとかもしれないと言われていた。
アリエルとて、本当に青い薔薇の品種改良に成功したのならば、リアル金の生る木に拳を振り回して叫んだだろう。一輪分けてもらって挿し木にして増やして売り裁きたいと、興奮したに違いない。
しかし――
(作り出すことに成功、ね。ああ、なるほどなるほど)
面白い言い回しをするものだなと、アリエルは感心した頷いた。
会場内にいる令嬢たちの中で、アリエル一人が冷静に青い薔薇を見つめていると、執事がこほんと咳ばらいを一つする。
すると、それまで黙っていたル・フォール伯爵が口を開いた。
「君、名前は?」
ル・フォール伯爵の視線はまっすぐにアリエルに注がれていた。
アリエルは軽く左右を見た後で、自分自身を指さす。ル・フォール伯爵が頷いたので、「アリエル・ロカンクール」ですと答えると、彼は短く「そうか」と頷いき、そして――
「ここにいるアリエル・ロカンクール嬢以外は、この場から立ち去るように。見合いパーティーは終わりだ」
広間は、水を売ったように静まり返った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます