第七章 本音のぶつかり合い

翌日、美咲は翔太に連絡した。


『話があります。会えませんか?』


二人は近所の公園で落ち合った。美咲はいつものジーンズとパーカー姿に戻っていた。


「あの...昨日の件ですけど」美咲が口を開いた。


「ああ、僕が余計なこと言っちゃって...」


「そうじゃないです」美咲が遮った。


「私、疑問に思うんです。翔太さんは、本当の私を好きになってくれたんでしょうか?」


翔太は困惑した。


「もちろんですよ。美咲さんのことが好きです」


「でも、私を変えようとしますよね?」


「それは...美咲さんがもっと輝けるようにと思って」


「私が決めることじゃないんですか?」


美咲の言葉に、翔太は言い返せなかった。


「私、最初から言ってましたよね。面倒くさがりで、お洒落に興味がないって」


「でも、女性なら...」


「また女性なら、ですか?」美咲の声が厳しくなった。


「翔太さんは、私のどこを好きになってくれたんですか?外見ですか?それとも内面ですか?」


翔太は答えに窮した。正直、最初は美咲の内面に惹かれた。でも、付き合ううちに、彼女をもっと「完璧」にしたいという欲求が生まれていた。


「両方です」翔太がやっと答えた。


「だったら、なぜ変える必要があるんですか?」


「...」


沈黙が流れた。美咲が再び口を開く。


「私、思うんです。翔太さんは私を愛してるんじゃなくて、理想の女性に近づけて愛そうとしてるんじゃないかって」


「そんなことない!」翔太が反論した。


「美咲さんのことを思って...」


「本当に私のことを思ってくれてるなら、ありのままの私を受け入れてくれませんか?」


翔太は困った。確かに美咲の言う通りだった。でも、彼には譲れないものがあった。


「美咲さん、僕にも友達がいるし、SNSもやってるし...」


「だから何ですか?」


「僕の彼女として、もう少し...」


「翔太さんの彼女として?」美咲が首を傾げた。


「私は翔太さんの所有物じゃありません」


その言葉に、翔太はカチンときた。


「所有物なんて思ってません!でも、カップルならお互いに歩み寄るのが当然じゃないですか?」


「歩み寄る?私だけが変わって、翔太さんは何も変わってないじゃないですか」


「僕だって美咲さんのために...」


「何をしてくれました?」


翔太は言葉に詰まった。確かに、彼は自分を変えようとしたことがなかった。


「私、疲れました」美咲が静かに言った。


「いつも演技してるみたいで。本当の私じゃない誰かになってる気がして」


「美咲さん...」


「少し時間をください。考えたいことがあります」


美咲は立ち上がった。翔太は慌てて引き止めようとしたが、彼女の決意は固かった。

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