第五章 変わりゆく日常

美咲の変化は、職場でも話題になった。


「うわあ!美咲ちゃん、どうしたの?すごく綺麗!」


「彼氏ができたでしょ?絶対そうでしょ?」


同僚たちの反応に、美咲は戸惑いながらも、まんざらでもなかった。


翔太も、美咲の変化を誇らしげにSNSに投稿した。もちろん、美咲には内緒で。


『最近、すごく素敵な人と出会いました☆ #恋愛 #カップル #幸せ』


フォロワーからの反応も上々だった。


『翔太くん、ついに彼女ゲット?』

『どんな人?写真見せて〜』

『リア充爆発しろ〜(笑)』


しかし、美咲との関係は順調とは言えなかった。


「今度、友達に紹介したいんです」ある日、翔太が提案した。


「え?友達に?」


「はい。美咲さんのこと、みんなに自慢したくて」


自慢...その言葉に、美咲は小さな違和感を覚えた。


「でも、もう少しお洒落してもらえませんか?」


「まだ足りないんですか?」


「いえ、そうじゃなくて...せっかくなら、もっと完璧に」


翔太の要求はエスカレートしていた。髪型、服装、メイク、話し方まで。彼は善意でやっているつもりだったが、美咲には重荷だった。


「最近疲れるなあ...」


美咲は一人呟いた。確かに周りからは褒められるようになった。でも、心の底から嬉しいかと言われると、微妙だった。

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