第2話 王との出会い

1週間後、傷が治った。また、草原を進む。一週間の間に様々な魔物を見た。3つの頭を持つモグラで、地中のアリを食べることに適したアリクイモグラ。食べてやろうかと思ったが、こいつの腕は硬い土も掘り進めれるほど筋肉質で万が一を考えると恐ろしいのでやめた。そのアリクイモグラの餌となるのはアカリムシリ。長いひげを持ったアリで、木の周りの砂を刷毛のように払って、陣取るアリだ。浅く、広い巣は半径10mほどが一般的。サイズは手のひらほどだがその巨体で木登りをするための鋭い爪は簡単に皮膚を引き裂く凶器で、覆われると、、、考えるだけでゾットする。

4日目の昼寝の最中に見たのはなんと、ライオンの群れだ。獲物として追っていたのはカマシマウマ。魔物で、本来草食だが肉ではなく魔物のエネルギーを吸収するためだけに獲物を狩る時があるが、小型魔物だ。その中に一匹、いや一人異様な魔物がいた。全身の毛は薄く、腕はライオンのように太いが、首は細く簡単に折れてしまいそうで、尻尾はない。足腰もよく発達していた。なんともおかしなところはその肌の色だ、なんと肌色だった。ライオンのように肩に力を秘めながら歩き、首を下げ油断なき感じだった。人にしては体格が良すぎる。おかしな生き物だった。

 草原は続く。枯れたような木がまばらに生えていて、草も更に枯れ、しかしより強靭で長く成長している気がする。普通逆だと思うのだが。山を眺めると、その下に青の光を反射するものが写った。湖のようだ。ここらは魔物が多く潜んでいるかもしれない。水を飲みに来る魔物たちを肉食魔物が狙っていると考えられるからだ。茂みを凝視し、安全なところに隠れてから更に安全な茂みへと移る。もう二度とあんな魔物とは出会いたくないから、慎重すぎなくらい用心して進んでいく。湖から結構遠くにまで来たので、もう一回湖をよく眺めておこうと見ていると、あのライオンがいたのだ。

「う〜ん」と周りのことを考えずに、唸ってしまった。彼が人間のバランスを持ったライオンなら、勝てるだろうか。いや、難しいだろう。首は弱々しいが、体は立派だ。腕を盾に、素早く突進されれば防げる自身はない。

「フフっ」

宿敵を見つけたような気がして、早く王国に行き、挑みたくなった。ルースは王国へ足を早めた。

 近づくに連れ、魔物は弱くなっていき堂々と目を気にせず歩けるほどになった。もう遠目に王国の気配が始めている。もう、何も気にすることはないので、門まで走っていった。途中、分かれ道の合流点を過ぎて、大きな壁についている門の前についた。壁の中にある小窓から兵士に声をかけると、旅びとなので身分証明ができるわけなく、検問を受け、数時間後に入国した。もう薄暗かったので野党も怖かったが、警のいるところの近くで寝そべった。旅の人なので、気配には敏感だ。途中何度か起こされたが、すぐ眠った。

 翌朝、ランガルの素材を売ろうと思って、素材屋を探していた。素材屋とは素材の売買を仲介するお店のことだ。依頼を承っている冒険者ギルドの横に、その看板を見つけた。開け放されたお店の内側の奥に、まだ若い髪を後ろでくくった男が何かの牙を眺めながら、座っていた。素材を売らしてくれと声をかけ、ランガルの牙と毛皮がいくらになるか聞いた。牙は良質で銀貨7枚、毛皮は傷ついているため銀貨2出せるらしい。これではまともな剣も変えない。買うのをやめるといって店を出た。

「う〜ん、武器を作ってもらうかな、でもお金がないな、」

武器屋を探して、剣を売ろうと思った。ちょうど近くに武器屋もあった。ギルドに武芸者が集まるので、それを狙っているのだろう。とても便利だが、もっといい店は違うところにあるような気がした。売るのに忙しいようでは武器を作る練習もできないだろう。でも、時間が惜しい、みんなが利用しているのながらそんなに悪い店ではないんじゃないかな、と自分を説得する。

敷居をまたぎ、武器を見渡す。銀に光る、片刃の海賊の使うような剣があったので手にとって見る。いい形で、硬さと鋭さがちょうどいい。良いお店のようで良かった。店主に声を掛ける。ランガルの牙で、自分の牙を代金に矛を作ってもらおうと思っていることを伝え、剣を差し出す。

「これは、いい剣だ。使い古されているが魔法のちからが籠もっていて、鋭さを保っている。ランガルの牙の着いた矛よりも良い品じゃないか?」

確かにそれは素晴らしい品だが、年が年だ。相手の力を受け止めきれなくなっている。

「そうだが、わたしでは使い切れないんだ。」

「うん、確かにあんたは太い。というかもともとは矛のような長物を使っていたんだろう?それでは受け身も一苦労だ」

「ああ、じゃあ取引成立ということでよろしく」

「任せときな、あんたでも使えるくらい、頑丈につくってやる。」

いい職人に出会ったな。と思いながら店をあとにした。しばらく歩き、門を出て荒野に近い原っぱで昼食を取ろうとした。息を潜めながら、草を漁る。いい感じのきのこが生えていた。背のうに入れて、周囲の木とかも確認する。城壁の周りをぐるりと探して戻ってくる頃には、たっぷりのきのこや、虫、野草が取れていた。外は危険が多いし、もしかしたらこの食べ物もあんまり美味しくないのかもしれないな、と思いながら火を起こして、小鍋に素材を小さくして入れる。水を注ぎ、木製の三脚に紐で繋いで煮えるのを待った。とても美味しくいただいた。きのこは少しシャキッとしていて、虫は味付けが欲しいなと思わせる無味さだったが、野草は甘みのあるものがあったらしく、きのこの風味と仄かなデンプンの甘みのあるおいしいスープにたまたまなっていたのだった。

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