わたしがわたしを嫌いにならないために

まるごん

苦手①:洗濯

おへそほどの高さの白くて四角い洗濯機。水色の半透明の窓から覗くと、しわくちゃの洋服たちが洗濯槽に貼り付いている。遠心力によってできあがった代物で、あまりにも軽い蓋を勢いよく開けると、少しだけもわっとした空気が上がってくる。

またやってしまった。

洗濯をするぞと意気込み、洗剤や柔軟剤を綺麗にキャップのメモリどおりにはかって、投入口にいれる。そこまでは洗濯スイッチが入っているのだが、洗濯が終わるまで別の作業に集中するとスイッチがいつのまにか切れている。ましてや、洗浄終了を告げる軽快なリズムすら私の耳には届かず、作業が終わって尿意に気づいてトイレに向かう道中の洗濯機を見てようやく思い出すのだ。

給湯器の文字盤の横にある表示設定ボタンを押して現在時刻を見てみると、洗濯機を回してから数時間は経っている。洗濯が終わったらすぐに干してあげたほうが衣類のシワがつきにくいし、放置しているとその間に菌が繁殖すると聞いたことがある。今目の前に広がっているのは、汚れを落とすために洗われたはずのしわしわの菌まみれ布たち御一行だ。

指を思い切り広げて布を引き寄せ、槽の中を空にする。抱えた山盛りの洗濯物のせいで胸元はひんやりし、視界が遮られているのでカニ歩きで、足元の脱ぎっぱなしの衣類やゴミ箱に後で入れようと思ってから数日経過しているゴミをかき分けながら、出しっぱなしの物干しラックに向かう。道すがら靴下や下着が床に落ちてゆき、振り返ると自分の歩いた跡を模っていて、ヘンゼルとグレーテルが帰り道を辿れるように落としたパンよりは確実にたどり着けるなと思った。

物干しラックにかけっぱなしのハンガーを両手で中心にかき集め、一気にはずして隣のベッドの上に放つ。これが洗濯物を干すときの唯一の楽しみである。

最初は小物類、トップス、パンツに分けて、そこから部門ごとにまとめて片付ける。ここで注意しなければいけないのは、干すときは必ず小物から、ということ。小物から干していかないと床に落ちている靴下たちと紛れて、使用済みか否かの区別が付きにくくなるため、干す順番は自分の中でルールとして決めている。

次にトップスたちに手をかける。Tシャツの両肩をつまみ、ぱんっ、と布を弾くように一度だけひるがえす。首元から強引にハンガーを差し込み、形を整えてベッドの上に置く。トップスにハンガーを通し終えた後、ハンガーのあたまを揃えて持ち上げ、一気にラックにかける。そうすると時間短縮になっている気がしてなんだか「やってる感」が出る。最後のパンツたちは、物干しラックの下側にパンツ干し専用エリアにかけていく。トップスたちよりも、布が厚く空気の通りも良くないため、なかなか乾くのに時間がかかる。なにか対策をとれば良いのだが、パンツ専用エリア以外で干すのは気持ち悪くてできない。この場合の気持ち悪いというのは、物理的なほうではなく、言い表しにくい感覚の方の気持ち悪いである。


洗濯をするのは週に2回ほどで、その大半は洗濯機の中に忘れ去られた衣類を取り上げ、申し訳程度にシワを伸ばして干すというもの。その日の朝に洗濯機を回し、次の日の朝に干し忘れに気づいて急いで干す。初めは洗い直していたが、洗い直したことも忘れて、洗濯機の中の衣類がじめじめ3日目を迎えてしまった時に、もう気づいた時に干せたらいいやと思ってしまった。それ以降は洗い直すことはせず、その代わり少しでも菌の繁殖を防ぐために消臭ビーズ的なものを投入するようになった。何度も同じ内容物を洗濯するための水道代・電気代と少し高い消臭ビーズの値段を比較しようにも怠惰が勝つので、洗濯のたびに衣類の上にぱらぱらとビーズをばら撒くのが楽しいからという理由でやり過ごすことにする。


こうして私と洗濯の関係を書いている間も、洗濯機は回っている。私は無事に今日中に干し終えることができるのだろうか。

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