呪われたオカルト部!

雨天雨衣

呪われたオカルト部!


 ◆◇◆◇◆


ルール


①.最初に短編小説を制限なく執筆。

②.五十音46文字から、あるルールに基づいて4グループに分ける。

③.①の短編小説を、グループで決められた文字を使用せずに各4パターン執筆する。

④濁音・半濁音・拗音(ぁぃぅぇぉゃゅょゎ)・促音(っ)は元の音と同じ扱い。音引き(ー)はひとつ前の文字の母音とする。


 ◆◇◆◇◆


禁止文字:(無し)


 ◆◇◆◇◆


「んんっ……。やはり、のどの、調子が、悪いな」

「朝からずっとそんな感じですけど……。先輩、大丈夫ですか?」

 放課後、特にこれといった活動実績があまりないオカルト部の部室で、先輩と二人で……だらだらしていました。一応部員には来間栞奈くまかんなさんというとてもやる気のあるお友達がいて、先輩とわたしは部活設立の為の人数合わせで入部しただけなんです。

 朝の登校中に会った先輩は、驚くほど声が出ていませんでした。

「うーん、早朝と、変化が、無いな」

「保健室には行きました?」

「昼休み、行った。蜂蜜の、のど飴、貰った。未解決」

「そうですかぁ……」

 先輩は話しにくそうです。一言が短くて、助詞の抜けた喋り方です。オカルト部員ならもっと『呪われているかもしれない!』とか言ったほうがそれっぽいかもしれないですが、先輩もわたしもそれほど超常現象に興味があるわけではなく。あ、でも栞奈さんなら言いそうです。

「うーん……筆談とかが無難ですかねぇ」

「しかし」

「?」

 先輩はペンをとってホワイトボードに文字を書き――――、ペンのインクが無かったようです。

「あらら、他のペンはどうですか?」

「今日は、ずっと、文字が、書けず。超苦労」

「え、文字が書けないってどういう……」

「どーぞ。試しに、書いて」

 と、先輩はペンをこちらに向けました。インクが無かったペンなのでは? と思っていたのですが、問題なく書けました。

「あれ、書けましたよ?」

 ペンを返して、先輩はもう一度書こうとしましたが、やっぱりインクが出ませんでした。

「あれぇー……」

「今日は、運勢が、最悪だ」

「そんなオカルトな……」

 ……まあここがオカルト部の部室なんですけど! ……そういえばオカルト部でした。だったら――――

「こっくりさん用の五十音表とかどうですか?」

「ナイス」

「…………どこにあるんでしたっけ」

「……不明だ」

 うーん、部室のモノには下手に触らないようにしているので、どこにあるかがわかりません。前に使おうとしていた栞奈さんならわかるんでしょうけれど……。少なくとも部室内にはあるはずです。机の引き出しにも棚の中にも無かったのですが……。

「あった。ボード、うしろ」

 ありました。ホワイトボードの裏面に磁石で貼り付けてありました。灯台下暗しとはこの事ですね……。こっくりさんって側面に対してやってもいいのかな? って、これ……。

「なんか、不自然に文字が欠けていますね、これ。そもそも書いていないみたいな……」

「確かに。何故か」

 パッと見て、10文字くらいは欠けていますが……。うーん。意図も法則もよくわかりません。

「…………うぅ……。自信ない…………」

 っ! ……後ろで扉が開いたので少しビックリしました。やっと栞奈さんが来たようです。先輩の不調が本当に呪いのたぐいだったら解決してもらいましょう。

「来間か」

「あ、栞奈さん。やっと来ましたね。ちょっと調べてもら――」

「あぁっ……また0だぁぁ…………」

「??」

 な、なんだか様子がおかしいです。いやまあ、栞奈さんはいつも不思議な方なんですけど……。ゼロって何の事なのでしょう? よくわからないですけど落ち込んでいる感じです。

「またこの説明か……。今から私が部室に何度か来るので…………お二人は部室から……絶対に、出ずに……私が来た回数を……カウントして下さい…………。それと、先輩さんは今日……表記上で三文字ずつになるようにしか……喋ることが出来ない…………そういう変な怪異に遭っているので………………」

「怪異て」

「か、栞奈さん、落ち着いて……」

 今の栞奈さんはいつもよりもよく喋るというか、何か焦っているような感じです。というか、先輩の不調の正体がいきなり明かされちゃったんですけど……。どういう……?

「絶対に、部室から出ないでね……。それじゃカウントをお願い……」

「あぁっ、ちょっとぉー!」

 …………。行ってしまいました。ど、どうしよう……。

「来間は『絶対に、部室を、出るな』言った」

「えっ、あ、そっか……。よくわからないですけど、待ちましょうか」

「まずは、三文字、怪異の、解明を」

「そうですね。えぇっと……」

 栞奈さんは『表記上で三文字ずつになるようにしか喋ることが出来ない怪異』と言っていました。一旦、何故先輩がその被害に遭っているのか、というかその怪異の需要(?)がわからないのは置いておきます。

 『表記上』というのがピンと来ませんが、先輩の喋っている言葉が三文字の言葉に限られているわけではない……のは確かです。読みの文字数は関係なくって、先輩の発言を実際に書けば三文字ずつになる……んでしょうか?

「恐らく、正しい。まさに、現在の、喋りが、物語る」

「…………! わ、本当だ。というか栞奈さんは何故知っていたんでしょうか、いろいろ」

「……ループ、してる、可能性」

「そんなオカルトな……」

 ……まあここがオカルト部の部室なんですけど。いや、タイムリープとかってオカルトでもないと思うんですけど……。

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