暗躍
「何なのよ、あいつは一体……」
蓮夜が魔物を倒していた頃、それを遠くから見ていた一人の少女が憎々しく爪を噛む。
「私たちの計画が動き出す、そんな時にちょうど現れて……ッ!あれとて深絶の魔物なのよ……!?」
深絶の魔物。
それは魔物の区分のひとつだ。魔物はその危険度によって区分が分けられている。
下から順にE、D、C、B、A、Sと言ったように分けられている。
その区分の中でも深絶と呼ばれる魔物は特別だった。
徘徊型の魔物にのみある区分で、その特徴としては個体それぞれに等級に見合わぬ特筆すべき事項を持っていることだ。
魔物の等級を図る技術はある。
だが、その魔物が深絶がどうかを判別する方法はない。その不意打ち性より多くの魔法少女を殺し、恐れられてきた。
「耐久性に優れるBランクの深絶の魔物よ……それを一刀で斬り捨てるなんて……どんな、化け物なのよ。それは。ありえないじゃない」
そんな深絶の魔物を軽く捻った蓮夜に一人の少女は頭を抱えていた。
「最悪の事態。それでも、私たちに止める権利なんてない。このまま進むしかない」
そんな少女へとまた、別の少女が声をかける。
「……わか、っているわよ。私たちに選択肢なんてないことくらい。やるしかないわ。作戦通りに行くわよ」
爪を噛んでいた少女は別の少女の言葉を受けて覚悟を決める。
「やるわ、計画通りに行きましょ」
「言われるまでもなく、そのつもりよ」
二人の少女が一糸乱れぬ動きで動き出す。
そんな二人の少女。その姿、その格好は魔法少女のそれであった。
■■■■■
「まさか、こうもあっさり深絶の魔物を倒してしまうなんて...」
「えっ?なんて?……何の魔物?」
「しかも、当人が深絶の魔物を知らないし。色々と信じられないわね。目の前で起こったのは現実かしら?」
「ふふん。凄いでしょう?」
「まぁ、そうね。ホントすごいわ、さすがね」
「ありがと」
魔物を一瞬で倒して見せた僕を素直に評価してくれる早見さんに僕はドヤ顔で返す。
その次の瞬間。
「ん……?」
僅かにゆれた魔力。
そよ風程度に流れた魔力を感じとった僕は首をかしげ、辺りを見渡す。
「……気の所為か?」
だが、その魔力のそよ風を起こしたであろう存在は見受けられなかった。
「れ、蓮夜くん!」
なんてことを呑気に僕が思っていた中、早見さんが声を荒らげる。
「なんです?」
「……魔物が、再生を始めているわ」
「えっ?」
早見さんの言葉に唖然とし、僕は慌てて視線を灰になり始めていた魔物へと戻す。
「ガァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
確かに、灰となり始めていた。
確実に、殺したはずだった───だが、その魔物が途中で再び体を再生させ、咆哮をこの場に響かせるのだった。
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